18章 エルフの忠誠
教会内を探索すると、質素で汚れた修道服を見つけた。
教会が正常に機能していた名残りだろう。
長い間放置されていたようで、状態は悪い。
「無いよりマシか…」
エルフ達に手渡し着替えさせる。
これで街で誰かに出会っても咎められる事は無いだろう。
「ジョー様。私、先に帰って、彼女達の服を用意してきます」
ハルが修道服のエルフ達を見て言った。
修道服は裸よりは目立たないが、あまりに貧相で哀れに見えたのだろう。
「分かった。頼む」
ハルは頷くと、宿へ走っていった。
「ジョー様。私は馬車を用意してきます」
ゼルは、夜の内にエルフを森に逃したいと考えてるようだ。
「ゼル、そんなに急がなくても明日、森まで連れて行ってやればいいじゃないか?」
「ジョー様。明日になれば、陽炎が捕縛された事で街中が騒ぎになります。そうなってからはエルフを森に逃がすのも難しくなるかもしれません」
確かに、有名賞金首を捕らえたのが、新人バウンティハンターと知られたら悪目立ちしそうだな。
行動するなら…今か…。
「うん。ゼルの言う通りだ。悪いが馬車を出せるよう用意してくれ」
「はっ!仰せのままに」
…
……
宿に着くと、先に帰ったハルが、手早く衣類を用意していた。
「ジョー様お帰りなさい。宿の娘さんの古着を譲って貰いました」
ベッドには何着か衣類が並べられていた。
夜になって服を買えない状況なので、宿の娘から買い取ったようだ。賢いな。
「今、湯浴み出来るように、お湯を沸かしてます」
ハルは女性らしい気配りで、短時間の内に色々準備してくれたようだ。
ここでの湯浴みは、大きな木桶に湯を張り体を洗い流す程度だ。
あまり良い香りはしないが、石鹸まで準備してあった。
しかし、薄汚れた体を清めるには十分だろう。
「神様。何から何まで有難うございます」
エルフの一人が前に進み出て礼を言った。
「さっきも言っただろ。俺は神じゃない。浄だ」
「しかし…」
「神様って言われるのは悪い気はしないが、事実じゃないんでね。ジョーって呼んでくれたら助かるよ」
「分かりました。ジョー様」
うん。それでいい。
…
……
湯浴みを済ませたエルフ達だが、体の傷が多くかなり目立つ。すぐにハルが具合を診てくれた。
「治癒魔法は済ませましたが、古傷も多いみたいですし…完全回復は難しいですね」
とりあえず、命に関わるような傷は無いようだ。
エルフはダークエルフを除き、元来色白だが…彼女達は病的なまでに白い。
健康状態も思わしくないのだろう。
一応、患部は薬草と包帯で保護しておいた。尖った耳が隠れ、色白の人間に見える。
俺も治癒魔法が使えるように、教会で契約しないとな。
きっと完全回復(欠損治癒)も出来るようになる筈だ。
『はい。浄様のポテンシャルであれば、治癒魔法契約さえすれば、完全回復も可能になります』
うん。イリスのお墨付きだ。
治癒魔法はぜひ契約しよう。
暫くして、ゼルが戻ってきた。
「ジョー様。馬車の準備が出来ました。私が森の入口までエルフを連れていきます」
「俺も行くよ」
「いえ。ギルドからいつ連絡が来るか分かりませんので、ジョー様はここに居たほうがいいでしょう」
エルフ達は湯浴みを済ませ、簡単な食事を摂らせた。
まともな食事を与えられていなかったのだろう。携帯用の固いパンを、綺麗に食べ終えていた。
後は、森の入口まで連れていき、携帯食料数日分と弓と矢を渡せば、自力で故郷まで辿り着けるだろう。
エルフ達は、コソコソと小声で話し合っていた。
一人が故郷に帰る事に異論があるようだ。仲間内で揉め事か?
「どうした?」
俺の問いかけに、一人のエルフが答えた。
「私は帰りません。この二人だけ森に帰して下さい」
どうしたんだろう。このエルフ。
一刻も早く、人間達から離れて森に帰りたい筈なのに。
それに…覚悟を決めた表情をしてる。
「帰らない?訳を聞こうか?」
「私は、とても穢れてしまいました。あらゆる仕打ちを受け、エルフの誇りも失いました。私は…もう何もありません」
エルフの目の奥に、輝きが灯る。
「だからこそ…ジョー様に仕えたいのです。ジョー様の元で働き、誇りを…エルフの誇りを取り戻したいのです。決して邪魔にはなりません。お願い致します…」
エルフは片膝を着き、頭を下げる。
これは…この世界での、忠誠を誓う姿勢…
「ジョー様。本来、エルフを人間に仕えさせるには、奴隷化するしか無いと言われています。それぐらい誇り高き種族なのです。しかし、このエルフは自らの意志で忠誠を誓っております。この気概…汲んでやるべきかと」
ゼルの言うとおりなのだろう。
その証拠に、残り2人のエルフが驚いた表情を浮かべていた。
人間に忠誠を誓うエルフは稀らしい。
エルフの忠誠か…
新たな旅の仲間に加えてもいいかもしれないな。
「分かった。ゼル、悪いが残りの二人を森に帰してやってくれ。あと、君…名前は?」
「…ユキと申します」
俺はユキに、手を差し出した。
何の仕草か理解していないユキは、恐る恐る俺の手に触れる。
ぎゅっ。
ユキの手を握る。
白い手からは、温もりが感じられた。
「よろしくな。ユキ」
「はい」
ユキは可愛らしく微笑んだ。
こうして、爆炎弓を自在に操るエルフのユキが仲間になった。
…
……
エルフのユキが仲間になりました。
爆炎弓使いなのに、名前がユキ(雪)という…ちゃんと考えあっての名前なのでしょーがないのですが…
彼女の活躍も楽しみです。
あと何気にハルさんが有能な件。
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ここから私事でヤンス。
就職前で更新に間が空きました。すみません。
本当…色々とありまして…。
これから先、一ヶ月程"研修期間"になるので、その間は土日しか休みがありません。
なので、ペースが若干落ちますが、ちゃんと更新していきますので、変わらぬ応援よろしくお願い致しますー。
研修期間が終われば、結構時間が取れるので、それまでの間は低更新でご迷惑お掛けします。




