13章 ギルドと賞金稼ぎ
ギィィィィ…
木製のドアを開けると、中は思ったより広い。
ギルド内の様子は、俺の想像通りだった。
屈強そうな冒険者達。
そして、見慣れない新人に送る冷たい視線。
当然、その視線の先に居るのは、俺とゼルだ。
武器も防具も付けない、老人と若者の二人組。
しかも見掛けたことの無い流れ者だ。睨まれても、しょうがない。ここはセオリー通り無視をする。
壁に貼られた依頼書の数々。古いものから貼りたてのものまで様々だ。
ふぅー。
ゼルが深呼吸する。
「懐かしい空気ですな。張り詰めた緊張感。心地よいものです。ギルドとは、こうでないと」
そうか?
なんかギスギスしていて、俺は気分悪いが。
好奇心と、余所者排除の視線をかいくぐり、俺は受付に向かう。
…
「あのー。すみません」
にこやかに対応する受付嬢。
おっ。受付嬢は美人だな。
「ギルドへの依頼希望ですか?」
そうだよな。この格好なら、依頼者に見えるよな。
ゼルがすかさず、即答する。
「ギルド加入と冒険者登録。あと、仕事の斡旋をお願いしたい」
!!!
一斉に周りの視線が集中する。
そりゃあ、素人同然に見える老人と男が、ギルド加入と仕事の斡旋を希望したら、注目されるよな。
受付嬢は慣れてるのか、驚きはない。
「本業希望ですか?そらとも、副業ですか?」
なにそれ。
『浄様。この星のギルドは、本業の冒険者と、簡単な仕事だけ受けるアルバイトのような副業と分けております』
イリスの説明は分かりやすいな。
『ちなみに本業は、契約金を支払い、さらに定期的にギルドに手数料を収める必要があります。代わりに、危険度の高い依頼を優先して受ける権利があります』
ええー。最初から金が掛かるのか。モンスター退治とかしたかったのに。
ジリ貧の現状では難しいな。
「初めてのギルド加入と冒険者登録でしたら、副業から始める事をオススメしますが…ちなみに副業は契約金は要りません。斡旋手数料も成功した場合のみ、報酬から少額頂くだけです」
受付嬢は、俺達の懐具合を察したのか、副業を勧めてきた。
実際、食い詰めて副業で稼ぐ人も多いのだろう。
「副業は街中の仕事か、近郊の依頼が殆どです。予算も少なくて済みますし、万が一の問題発生でも、ギルドで救助可能な案件になります。例えば、こんな仕事は如何でしょう?」
受付嬢が、簡単な仕事の依頼書を見せてくれた。
…
街の警備補助や、街周辺のパトロール、地下水道の清掃、貴族の館の警備なんてものもある。
「本業に比べたら、金額は低いですが成功率は、ほぼ100%です」
金額が低いと言っても、それは本業に比べればの話で、旅の資金確保なら、副業でも良さそうだ。
ん?コレは?
数ある依頼書の下の方に、賞金稼ぎの依頼があった。
俺の視線に、受付嬢が気付く。
「これですか?この街に潜伏してると思われる、犯罪者の手配書です」
かなりの枚数だ。
大きな街だから、犯罪者が隠れるのに向いているのだろう。これじゃあ、治安が良いとは言えないな。
受付嬢は話を続けた。
「もし捕まえて頂ければ、手配書に明記された『懸賞金』が貰えます」
なるほど。分かりやすい。
「バウンティハンターは、副業の中では高額ですが、とても難しい案件です。まず犯罪者の発見が難しく、運良く見つける事が出来ても、拘束どころか返り討ちに遭うことも多いのです」
だろうな。凶悪な犯罪者を相手にしたら、副業のギルド員なんて瞬殺だろう。
「犯罪者は巧妙に隠れて生活しておりますので、発見出来る確率は低いです。正直、稼ぐ事自体が難しく、人気の無い仕事ですね。発見通報のみでも少額の報酬が出ますが、後から逆恨みされて、犯罪者の仲間に殺される事件も起こっています」
バウンティハンター…か。
美味しい仕事に見えたんだが…まず、見つけ出す事が難しそうだ。他の依頼にするか?
『浄様。犯人の居所は、私が街を検索すれば、すぐに見つけられますが…』
…!!!
そんな事出来るの?
『はい。勿論です』
イリス。凄いなお前。
『お褒め頂き、感謝です。私は、軌道上の母船にある、『万物の眼』と呼ばれる、カメラ、センサー類が自由に使えます』
バシリスクの接近を感知したり、盗賊達を見つけた時の事を思い出す。
それに、指定区域内の特定人物の発見か…まさに『万物を見通す眼』だな。
この能力が使えるなら、賞金稼ぎはチョロいだろう。
よし。やってみるか。
「あの、この仕事をやらせて下さい」
「ふぁっ?本当に宜しいのですか?」
初めて驚く受付嬢。
説明を理解してないと思われたようだ。
「危険で難しいと理解してるよ。大丈夫だから頼むよ」
「…畏まりました」
受付嬢は、渋々と書類に書き込んだ。
「これで完了です。ゼル様、ジョー様。共に副業でのギルド加入を致しました。副業は一番下のFランクから、Eランクまでの依頼に限られております。賞金稼ぎはランク外となります。非常に危険ですので、お気をつけ下さい」
賞金稼ぎはプロアマ関係ないらしい。建前上、冒険者は犯罪者を見つけたら捕まえる。それが冒険者としての務めだからだ。
あくまでも建前だが…
その為のランク外という措置らしい。
…
こうして、バウンティハンターとして、ギルドに登録された。
さて、と。稼ぐとするかな。
パラパラと手配書をめくると…凶悪そうな顔が目についた。
他の手配書とは違い、紙も黄色く古い。相当長い間、狡猾に潜伏してる奴だ。
賞金も…何度も書き換えられ、かなり高額。大物か?
高額な賞金首は、仲間にも裏切られたり、狙われやすい筈。
なのに、コイツは未だに捕まっていない。
つまり、信頼できる仲間に守られている。又は、犯罪組織のトップで、力で完全支配している。
どちらかだろう。
まぁ、手配書の凶悪な顔を見れば、明らかに後者っぽいな。
で、コイツはどんな奴なんだ?
なになに…名前は“陽炎”か。厨二病全開な名前だ。
そういえば、姉弟を襲ったのも陽炎盗賊団(笑)とか言ってたな。もしかしたら、関係あるのかも。
ゼルも横から手配書を覗き込む。
「人さらいに、窃盗、強盗、強姦、殺人、要人暗殺、テロ…相当な悪人ですなぁ」
ゼルは嫌悪の視線で手配書を睨む。
「うん。最悪な奴だ。気に入った。陽炎にしよう」
俺の言葉に、ゼルがニヤリと笑う。コイツに決めると分かっていたようだ。
『浄様、畏まりました。直ちにこの街をスキャン致します。尚、完全スキャンまで、およそ2時間程度掛かる予定です。暫くお待ちください』
イリスがスキャンしてる間、宿に戻り装備を整えるとしよう。
ついでに"試したい事"がある。
うまくいけば、軌道上に居るアイツは大喜びするだろう。
俺は陽炎の手配書を渡し、手続きを済ませた。
「さぁ。行こうか」
…
……
ギルドを出るようとした、その時。
「おいおい。今の見たか?」
何人かの男が絡んできた。
「新人が、陽炎を捕まえるって?笑わせるなぁ」
「命知らずが。明日には吊るされるぞ。ギャハハハ」
「明日どころか、今日中に逝くかもな」
いわゆる新人イジメってヤツだろう。あるいは、からかいか?
どちらにしても、気分のいいものじゃない。
しかし、ゼルが俺の前に立つと…
ギラリ!
歴戦の元勇者の眼光が光る。
!!!!
静まる室内…
基本、冒険者は危険を察知する能力が高い。
ゼルのただならぬ雰囲気に、スゴスゴと引き下がる。
ゼルの眼光や佇まいはそれだけ凄みがあった。
まだ俺は、ゼルの実力を知らないが、能力を失ってなお、相当の強さなのだろう。
心強いな。
…
……
やっと、ギルド加入です。とは言っても旅の資金稼ぎが主目的だったりします。
浄君は、軌道上に居るヒルデを喜ばす、面白いアイディアを思いついたようです。
賞金稼ぎってカッコイイですよねぇ。
ブックマークが少しずつ増えて、オイラ泣きそうなくらい嬉しいよ。
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