表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編コメディ

日本ちゃんとアメリカくん

作者: NOMAR


「はぁ、」

 ついため息が漏れます。

 最近、学校にいるのが憂鬱になるの。

 仲のいい同級生もいるけど、同じクラスの人達からちょっと距離をおかれているのです。


 私は普通の女の子で、普通の女子高校生だと思うんだけど。

 婚約者というか、許嫁がいるとこは変わってるかもしれないけど、それ以外はわりと普通……だと思うんだけど。

 固いとか、マジメ過ぎとか言われてるみたい。

 他にも裏で変なことをしてるって、噂にされてるとか。

 そんなにおかしなことをした憶えも無いのだけど、なんでそんな風に言われるようになっちゃったのかな。

 たぶん最近、私に絡んでくるあの人のせいだと思う。


 お昼休みに教室を出て階段を下りて自販機に。お茶でも買おうかな。

 ぼんやりしてたら廊下で後ろから肩を掴まれて。

 え? あれ? 

 ビックリしてるうちに引っ張られて廊下の壁に背中をぶつけて。いたた。

 見上げるとそこには私のクラスの問題児。

 いつも問題を起こしてる乱暴者の同級生がいて、私に覆い被さるように廊下の壁に手をついて。


 えっと、これって……壁ドン? とかいうの?

 睨むような三白眼、でも、ちょっとかっこいいかも……、

 彼が私に顔を近づけてきて、ちょっと、近い、近いです。


「おい、日本」

「な、なに? 北朝鮮くん」

 最近、なぜか私にちょっかいをかけてくる、不良の北朝鮮くん。

 なんでそんなに私にかまうの?


「日本、お前、アメリカの奴とつきあってるって、ほんとか?」

「つきあってるっていうか、昔からの許嫁なんだけど」

「はん、許嫁? そんなもん昔に強引に決められたもんだろうが。あんな奴とは別れろよ」

「そ、そういうわけには、いかないわ。私ひとりじゃ、決められないもの」

「は、じゃあ誰が決めてんだよ? あんな奴とは別れろよ。で、日本、俺のものになれよ」

「やめて、北朝鮮くん」

 ぐぐっと顔を近づけてくる北朝鮮くん、やだ、近い、近い。

 北朝鮮くんはキスするみたいに顔を近づけて、

「でないと、俺、お前に……」

 声を潜めて、耳許でくすぐるように囁いてきて、

「お前に、核、落としちゃうぜ?」

 ダメ、そんな……、

 核なんて、落とされたら、

 私、メチャクチャになっちゃう!


「そこで何をしている!」

「ちっ」

 廊下の向こうからこっちに走ってくる人は……アメリカくん?


「北朝鮮。お前はまた日本にちょっかいをかけてるのか?」

「アメリカ、てめぇには関係無ぇだろ」

「関係ある。お前はいつもいつも問題を起こしてばかりで」

「は、生徒会長様はご立派だねぇ」


 この学校の生徒会長。

 そして私の許嫁のアメリカくん。

 ふたりはしばらく睨みあって、

「けっ」

 北朝鮮くんが目をそらして離れて行きます。去り際に私とすれ違うときに、

「日本、俺は諦めねぇからな」

 と、呟いていきました。


「まったく、なんであんな奴がこの学校にいるのか」

「あ、あの、ありがとう、アメリカくん」

 背の高いアメリカくんを見上げながら言うと、アメリカくんは辺りをキョロキョロと見て、他の生徒がいないことを確認して、

「日本、お前はまた北朝鮮に絡まれてたのか?」

 冷たい目で私を見下ろします。

「いちいち手間をかけさせるな」

「ご、ごめんなさい」

「まったくトロい女」

 うぅ、ひどい。好きで絡まれてるんじゃ無いのに。

 アメリカくんは私以外の生徒の前や先生の前では、立派な生徒会長です。

 だけど、二面性というか、私相手には本性出して言いたい放題です。


「まぁいい。それで日本、金はあるか?」

「え? またお金?」

「今週、あのゲームの続編が出るのを忘れてた。だから、金」

「そんなにいつもいつもすぐに用意できないよ。国民(おとう)さんに怒られちゃう」

「何を言ってる? 日本」

 アメリカくんが冷たい目で私を見下ろして、ずいっと近づいて来ます。


「お前は俺専用のATMだろ。俺が金を出せと言ったら黙って出せばいいんだ。でなきゃ日本、お前みたいなグズをおれが守ってやるワケが無いだろう?」

「ひどいよ、アメリカくん……」

「許嫁なんて言っても、金以外の取り柄が無い女を相手にするのは俺ぐらいだ。それを解ってるのか?」

「うぅ……」


「まぁ、ただで金を出すというのも限界はあるか。俺の武器を売ってやる」

「そんな、私、武器なんて持ったこと無いのに」

「そんなだから北朝鮮になめられるんだろう。こっちも余った武器を売っぱらって経済復興したいからな。俺から武器を買ってそれで自衛しろ」

「そんなこと、急に言われても、無理だよー」

「ち、めんどくさい女。とにかくさっさと金を持ってこい。あと武器を買えるように早いとこ憲法を変えろ」

「簡単には変えられないよ。それに私の憲法を作ったのは、アメリカくんじゃ無い」

「グチグチグチグチと言い訳ばっかりか。そんなだからお前は時代に乗り遅れるんだ。とにかく、ゲームの発売日が明後日だから、それまでに金を持ってこい。いいな」

「うぅ……、はい」

 言うだけ言ってアメリカくんは行ってしまいました。

 私以外には外面いいのに、私には優しくしてくれない。


 また、国民(おとう)さんに怒られる。でもアメリカくんには逆らえないし。

 いきなり武器を買えって言われても、そんなの家に持って帰ったら、国民(おとう)さんにまた怒られるのに。


 憲法、憲法かぁー。

 イギリスさんもドイツちゃんもちょくちょく変えてるし。

 1度も変えたこと無いって言ったら、遅れてるーって言われちゃった。

 憲法九条を世界遺産にって国民(おとう)さんはがんばってるけど、私の憲法を作ったのってアメリカくんだから、世界遺産登録ってアメリカくんになるんじゃない?


 んー、校則違犯だけど、みんなスカートの丈を短くしたりしてるし。

 今までやったこと無いけど、私が憲法をちょっとくらい、変えても、いいよね?

 みんなやってることだし。


 あと、アメリカくんにお金かー。

 でも、アメリカくんが本性を見せてくれるのは私だけ。

 これってアメリカくんが私に甘えてるって、ことなのかな?

 そう考えると胸がキュンと鳴る。

 金をよこせって言うアメリカくんの冷たい目。

 お金を渡したときだけ、優しく頭を撫でてくれる大きな手。

 そういうのが、ちょっと、好き。

 あと、お金しか取り柄が無い、とか。

 私って貢ぐだけの存在なんだ、とか

 私って搾取されるだけの雌豚なんだって思うと。

 身体が熱くなって、

 背筋がゾクゾクしちゃう。

 ハァハァしちゃう。

 たまらない。


 ごめんなさい、国民(おとう)さん。

 日本(わたし)はちょっと変態な女の子です。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして、 ロータスと申します。 学園ヘタリア(笑)改訂版でしょうか。 アメリカが金をせびるくだりは秀逸です。 武器売る割に欲しいのはゲームとか、 ダメさ加減もいい感じです。 [気にな…
2018/03/22 23:12 退会済み
管理
[一言] 2ch発で『ニホンちゃん』というのが…… 今、どうなってるのかなあ。
[一言] おっす オレオレ(・ω・)ノ 韓国は?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ