12 人殺しになりました
表現だけは少しグロい・・・のか?
表現がむちゃくちゃに下手です。というか、ここまでの殺戮シーンは描写が苦手な僕ではここまででも苦労しました…。
ラーファスを出発して2日が経ちました。その間は特に何もなく、たまーに馬がずっこけたり、馬車がぬかるみにはまったり、キルさんが変なもの食べてゲロったり・・・
何にもなくはないですね、はい。
さて、現在はとても切迫している状況です。それは・・・
【主様、人間と思われる集団26名がこちらに接近しています。距離は850メートルです】
うん、絶対野盗だね。ということで、キルさんに野盗の接近を教えておかないといけませんね。
「キルさぁ〜ん!!」
キルさんが馬車から顔を出して来ました。
「野盗です。850メートル先に26名!! 処理はどうします?」
「えっ!? 26!? マジ? やばいじゃん!!」
「だからどうするかと・・・」
「え!? どうにかなるの? じゃあお願い! 僕は隠れてるからさっ!」
「え・・・まあいいです。それで、野盗って捕縛すればいいんですか?」
キルさんがこっちを睨んで来ました。
「何言ってるの? 野盗は見つけたら逃げるか殺すって教わらなかった? って、ユミルちゃんにはまだ早いかな・・・いやでも、護衛依頼を受けてんだから、やってもらわないと・・・まあ、捕縛は無しで。連れてってもお金にもなんないしね。殺せるなら殺しちゃって。退けるだけでも結構。この馬車に損害が出ないなら、ね」
「え・・・どうしよう」
ち、知之主! どうすればいいと思う!?
【殺害を推奨します。この場で放置すると、後続の馬車などに被害が出る恐れがあります。もっとも、この世界にはそのような決まりはありませんが・・・】
結局・・・殺すしか無いのかな・・・
野盗とは言っても人間だし・・・
【この世界の野盗などの重犯罪者は、人権を認められておりません】
そうじゃないです!! 私がいた世界は人がそんな簡単に死ぬことはない世界なんですよ!
【いえ、そんなことはありません。主様が豊かな国にいただけです】
うぅ・・・結局どうしよう・・・
【主様、野盗との距離、500メートルです】
まずいですね・・・このまま行っても、捕まって殺されるか・・・
・・・殺したことについてはあとで割り切ればいいかな・・・
そうしましょう・・・
知之主、最適な魔法は?
【灼熱空間威力2倍で十分かと思われます。魔力量にすれば3倍です。範囲は主様も従魔で跳んでいただければ、指定することができます】
わかりました・・・それでいきましょう・・・
「キルさん、馬車を止めてください。野盗を待ち伏せします」
「え? うん、了解」
じゃあ知之主、作戦決行ね・・・
【了。野盗の距離が150になりましたら通達いたしますその瞬間に上に跳んでください。100を切るとこちらの馬車も巻き添えになりますのでお気をつけを】
わかりました。
・・・人を殺すのだけは慣れたくなかったんですけどね・・・よくラノベとかで、主人公が人を殺すことで葛藤してるシーンがありますけど、どうやって割り切っているんでしょうか。この世界に来てすぐにウサギみたいなネズミを素手で解体(解体って言えるのかはわからないけど・・・)しましたが・・・私はあれだけで限界ですよ・・・
今回は魔法でやるので触らなくていいかもしれませんが・・・
やっぱり、こういう世界では仕方ないんでしょうか・・・
【主様、距離200です】
よし・・・行きましょう・・・
「じゃあセム、この前の地竜の時みたいに、上に跳んでくれるかな・・・」
セムは眉を顰めました。
「それはいいが・・・主は大丈夫なのか?」
「え? うん、大丈夫。お願いね」
大丈夫なわけないでしょう・・・
【距離150です。上に跳んでください】
「じゃあセム、お願い」
そしてこの前みたいにセムは跳びました。だけど今回は気が重くて叫んでられません。
【主様、今です。野盗達の集団の中心部を範囲の中心に指定してください】
「・・・ひ、灼熱空間魔力3倍・・・・・・っっ!」
私が魔法名を唱えると・・・そこに居た野盗達全員が燃え始めました。 そしてセムに乗って着地。
魔力量にすれば・・・大したことはないのですが・・・精神がかなり削られました・・・
そのまま前を向くと・・・
「・・・これを・・・僕が・・・?」
そこには・・・真っ黒焦げの死体や、魔法の熱で溶けた人間らしきものが大量に転がっていました。こんな一方的な殺戮を僕が・・・?
「・・・うぁ・・・え・・・これが・・・さっきの?・・・・・・っ・・・」
体が震えだして・・・うまく立てません。
「せ、セム・・・馬車まで運んでもらえる?」
「う、うむ・・・主、少し寝ておれ・・・」
返事はできません・・・馬車の方まで行くと、キルさんが顔を出しました。
「ユミルちゃん、終わったみたいだね・・・って大丈夫!?」
「・・・うむ、主はちょっと精神状態が不安定なだけだ。少し馬車の中で寝かせてもらえるか」
セムが説明してくれました。
「・・・いいよ。ここの現場を過ぎたら野宿にするし・・・夕飯は遅くなってもいいよね?」
「うぬ。じゃあ頼む」
そのまま私はキルさんに抱き上げられて・・・セムに悪いけど、人に抱っこされて少し安心しました。そのまま眠くなったので、眠ることにしました。
–––キル視点–––
俺の名前はキル。王都に小さな店を持つ商人だ。ラーファスに赤地竜の群れが出たっていう噂があったから、その素材を仕入れにここまで来た。
因みに俺は極度の面倒臭がり屋だ。だから適当に王都までの護衛依頼に出発時間を夕方にしてもらったんだが・・・気味悪がられて誰も受注してくれなかったんだ。
そこで、依頼を取り消してもう一回依頼し直そうかと考えていた時に、受注されたと知らせが来た。
それで俺が予定通り北門で待っていると、やって来たのは幼女1人と従魔らしき狼1匹だけだった。
ギルド職員には小さい子と聞いていたし、この子が赤地竜の群れの殆どを単独撃破したって言っていた。
だから、表面上は愛想よくふるまえたんだが、やっぱり内心では鼻で笑ってしまった。
特に、さっき野盗の集団に接近された時に、捕縛するのかと聞かれた時はな・・・
この国では、野党などの重犯罪者は見つけ次第逃げて報告か、殺すのが基本だ。特にこんな場所では、始末するのが力あるものの義務でもある。だからそのことを教えてやったら、何か葛藤しているようだった。
俺だって、あまり人殺しの瞬間は見たくないので、馬車の中で待機する許可をもらったんだが・・・やっぱり気になっていた。あんな小さな子(聞いたところ7歳だという)が赤地竜を撃破した噂が嘘だとも思ってたので、野盗を蹴散らせるとも思ってなかったし、何よりあの年齢で人を殺す感覚を覚えてしまうのは恐ろしい。だが、冒険者をやっているということはそういうことも必要と考えて放置しておいた。
そして実際の戦闘を見ていて・・・驚愕した。
あの子が従魔の狼に乗って上に跳んだかと思えば、野盗の集団にいた人間全員が急に燃え始めたのだ。しかも、そいつらの周りはまるで熱の塊がそこにあるように、歪んでいた。
あの子は着地した後、野盗達の死骸を見た後、急に震え出した。確かにそうだろう。あんな惨状を自分が作り出したのだから・・・そしてあの子・・・ユミルと言ったな。ユミルが狼に乗ってこっちに来て、寝かせてほしい言って来たので、もちろん許可した。流石にあれはただの小さな子には耐えられないだろう。ユミルは俺が抱き上げると、すぐに眠ってしまった。
なんだか心配になった。ユミルが目覚めた後、変わってしまわないかと。何もないことを祈ることしかできなかった。
予定通りの投稿ですね。
誤字などがありましたら、感想でお願いします。
次回投稿は土曜日です。
でも、番外編があります。




