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どこにでも落ちている恐怖

作者: 桜毛利 瑠璃

今の世の中、幽霊やお化けよりも怖い存在が有ることを認識しておりますか?


それは普通に生きている人間。


あなたの身の回りにも、沢山の人々が普通に生活していると思います。


だがしかし、筆者も含め自分は普通に生活していると思っている人々が知らず知らずの内に、怖い存在になっている事に気が付いていますか?


これから記述する内容は、実際に筆者が体験した事がある『ヒヤリ』とした事『ハッ』とした事に妄想を加えた内容である。


あなたもきっと同じ様な体験をしたことがあるに違いない。


そんなあなたは被害者ですか?加害者ですか?


小さな『ゾクッ』を並べた軽い内容としています。

本当に誰かが亡くなったと言う事実は、筆者の体験中では ありません。


日常に潜む恐怖を見つめ直して頂けると幸いです。



〜上巻:輝く少女〜


筆者は家から駅まで自転車で移動している。

愛車はオレンジ色の折り畳み式である。

タイヤの径も小さく、変速機も無い為、いくら漕いでもさほどスピードも出せず、元気な学生に抜かれる毎日である。


帰宅時間は夜8時頃、駅周辺は明るい。しかし2キロ程離れた場所に小さな山があり、その周辺は街灯が極端に少ないため暗い。


その小さな山は、戦時中に掘られた防空壕があり、昔から「幽霊を見た」とか「人が消えた」とか、よく言われている場所でもある。


そんな場所だから、街灯が設置され一時期は明るくなっていたのだが、省電力が叫ばれる現在、昔の様に暗い場所に戻っていた。


これは明るい場所を嫌う亡霊達が、自分達の好みの暗さに戻すために働きかけた結果なのだろうか。


そんな暗い場所を筆者も通っているが、やはり怖い。


100円ショップで買った自転車用のLEDライトを点灯させながら、最大速度で駆け抜ける。



そんな毎日であるが、何度か恐怖に襲われたことがある。



それは冬の寒い日、雨は降っていないが月は厚い雲に覆われてしまい。本当に暗い夜の出来事である。



筆者は普段通り自転車に乗り、雨が降りださないことを祈りつつ、小さな山の周辺にさしかかった。


山裾を縫うように作られている道の中で、本当に暗い場所は50メートルも無い。


歩いていた人も含め誰もが足早に駆け抜ける場所である。



そんな場所に、何かが淡く光っている。


筆者は自転車に乗っているので、光が近付いているような錯覚に囚われたが、相対速度を考えると光はその場に留まっているようだ。


良く見ると淡い光は人間の形を型どっている。


筆者は幽霊と思わしき物を一度だけ見たことがあるが、それは淡い光の塊でしかなく、それ以後は見たことが無いので、気のせいだったと考えていた。


それが淡い光と言っても、周りが暗いせいもあり、くっきりと人型に浮かび上がっていた。


筆者は驚き、慌てて急ブレーキをかけて停車するがバランスを崩しかけて倒れそうになった。


体勢を立て直そうと足元も暗い場所で慌てていると……。


その光の人型が形を変えたのである。


その姿は、恐怖映画やビデオに出てくる幽霊と同じようにこうべを垂れていて、

長い髪が顔を隠しており上半身だけが淡く青く浮き上がっていた。

下半身は黒で塗り潰した様に見えない

上目遣いで睨むような表情は、怨めしそうに見える。



思わず凝視してしまった筆者であるが、暗い場所で形を変える光を見てしまったのだから仕方がないと思って欲しい。



これから筆者はどうなってしまうのかと恐怖で震えそうになっていた時。



自転車通行可の歩道に居る筆者の横を車が1台追い抜いて行った。


その時に気が付いたのだが、光の人型は手も足もある普通の髪の毛の長い女子高生であった。



黒の制服に、濃紺のジャージを履いていて、スマートフォンを片手にメールか流行りのラインで返事を打っていたらしい。


スマートフォンの画面は明るいため、こちらに背を向けていても光が漏れて輪郭として浮き上がり。


振り向いた時も、画面に目を向けているので、うつむき加減のままであった様だ。


スマートフォンの明るい画面からの光が上半身を照らし、さも浮いている様に見えただけであった。


筆者は慌てて作り笑いを浮かべ自転車を漕いで、その場を後にした。


きっと女子高生は「怪しい奴発見!」とか「変態出た!」とか送信しているに違いあるまい。


ある日『変質者注意』と言う看板が立っていたらどうしたらよいのだろうか。



筆者の体験より、その後の女子高生がしているであろうメールかラインの方が、想像すると恐ろしい事になっていると言う恐怖体験。


あなたは被害者ですか?加害者ですか?





〜下巻:道を歩く人々〜


筆者は良く歩いている。

別に健康の為ではなく、仕事場に行く為である。


大きな街となると、通勤時間帯とは関係無く、どんな時間帯でも歩道は人で溢れかえっている。


筆者はそこで何度か恐怖に襲われた事がある。


本当に小さい恐怖だが、恐怖と戦うために常に身構えていないと行けないというのは、非常に疲れる事である。


人だらけの歩道。

筆者の地方では、ほとんどの場合、基本的に左側歩行である。


とは言え、我が道を行く人が居るので、よく歩行位置が崩れるのであるが、そんな事は気にした所で意味が無いし、誰も何も言わずに避けるだけだ。


そんなマイナールールの中、よく遭遇する恐怖は、目の前の人が突然立ち止まるかもしれない恐怖である。


道が分かっていないとか、何かを探しながらとかなら、挙動が怪しくなっている分、

突然立ち止まられても「やっぱり。だろうと思ってた」と、余裕を持って避けることが出来るのであるが、

最近の人は、何か電波をキャッチしたのか分からないが、突然棒立ちになることがある。


はじめの頃は、何か得体もしれないものに取り憑かれる瞬間に立ち会ってしまったのではなかろうかと、真剣に筆者は考えてしまった。


その時は一歩ずれることで、そのまま歩いて追い越して行ったのだが、考えれば考える程、怖い出来事である。




次の恐怖は、棒立ちどころではない。

前を歩く人が突然後ろ歩きするかもしれない恐怖である。


後ろ歩きする人は、前兆として携帯電話やスマートフォンを手に持っている又は話し中の人に多いので警戒することは可能だ。


何故か分からないが、携帯やスマートフォンで通話している人は、

前を向いたままそのまま歩く又は歩く速度を落として通話しやすい場所に向かう人と、

前を向いたまま後ろ歩きして壁際や隙間に行く人の

大きく分けて2タイプ存在する。


目の前を歩く人の着信音を聞いたら、警戒を怠るな。


さすれば、後ろ歩きをする人とぶつかりそうになる恐怖から逃れられるであろう。


だがしかし、ハンズフリーが相手の場合は警戒のしようがない。


後ろ歩きするハンズフリーの恐怖からは逃れられないのである。


遭遇したら、ほぼ諦めるしかないのである。



最後に最大の恐怖の話しをしよう。

筆者が遭遇したその恐怖体験は3度だけだ。

だが、その3度とも僅かに避けきることが出来ずに、カバンや腕に衝撃を受けてしまった。


空港や乗り換えの多い駅等の場所でよく見かける光景でもある。



その恐怖は


突然振り向き、ダッシュをしてくるかもしれない恐怖である。



乗り換えるホームを間違えた、うっかり屋さんから多く与えられる恐怖である。


携帯電話やスマートフォンで多分、待ち合わせの人と通話中であろう


「こっちじゃないの!?」


と言う声が目の前の人から発せられたら、迷わず壁際に避難することを勧める。


それでも、カバンがぶつかってしまうのだから。


その振り向きダッシュから与えられる恐怖は戦慄さえおぼえる。



あなたは被害者ですか?加害者ですか?



おまけ


道を歩いていると、信号につかまる。


よくあることだが、稀にしか車が来ない交差点の赤信号は、無視して渡る人が少なくない人数居ると感じる。


そんな人でも、車が近付いて来ているのが見えていれば渡らない。


当たり前である。


誰も好き好んで、自分から怪我をしに行くことはしないのだから。


だが当の本人が意図しないで渡っていくことがあるということを知っているであろうか。


この時、歩道の信号は赤であった。

普段なら渡ってしまう人も立ち止まっている。


何故なら車が近付いて来ているからだ。


そこに足早にやって来た人が、みんなが立ち止まっているのにも関わらず殆ど車道を見ずに渡りかけた。


道の半ばまで来て、車道を見て車の接近に気が付いたのだが、大丈夫と判断したのか、そのまま駆け抜けて行った。


それだけなら「傍迷惑な人がいるものだ。その内、大怪我するぞ」と思うだけですむ話である。


しかし、恐怖はここからである。


人とは、思い込みで勘違いしやすい生き物である。

その時、人が渡ったから信号が青に変わったと思い込み、スマートフォンに視線を向けていた人も信号を見ずに車道に入ってしまったのである。


猛々しく鳴り響くクラクションの音。


その音で顔をあげ、まだ信号が赤だったと気が付いたようだが、立ち竦んでしまい道の半ばで微動だに出来ない。


車が急ブレーキをかける悲鳴の様な音だけが鳴り響く。


誰しもが「あっ」と思っていたが、ギリギリ車は止まることが出来た。



立ち竦んでしまっていた人は、車に向かって頭を下げて逃げる様に走り去った。



車は止まることが出来たので事故は起きなかった。しかし止まったせいで車道側の信号が赤に変わり渡りきることが出来ずに、長い赤信号を待つことになった。


当然、車の人も人を轢いてしまうかもしれない恐怖に襲われたであろう。


釣られて車道に出てしまった人も、轢かれるかもしれない恐怖に襲われたであろう。


傍迷惑な人も「ヤバい、車来てる」と恐怖に襲われたであろう。


信号待ちをしていた人々も、事故の目撃者となってしまうかもしれない恐怖に襲われたであろう。


被害者と加害者とが、入り交じるこの恐怖。



あなたは被害者ですか?加害者ですか?







夏のホラー2014


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