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序章9

 その後課長に北見での聴取内容を説明し、その結果として再度の現場検証の必要性と説くと、課長もすんなりと同意してくれた。吉見の死とは直接関係ない、幽霊の行動そのものの事件性については確実性は弱いものの、刑事課自体がそれほど忙しくないこともあり、気になる点はチェックしておくべきという判断が上司にもあったのだろう。勿論、場合によっては吉見の死に関係する新たな発見があるかもしれない。不審死や幽霊の「消失」から日数が経っていることもあり、できるだけ早い時期の捜査が必要である。署長にも報告して許可を得た上で、天気予報が晴れということもあり、早速翌日の朝から刑事課の他の係の一部、警備・生活安全課、鑑識などからも応援を得て行うことになった。


 翌日の早朝、現場には、おそらく普段では考えられないであろう数、具体的には18人の「人間」が周辺を静かに蠢いていた。念のため熊避けの鈴を数人が持ってきてはいたが、これだけの人数に驚かない時点で効果はほとんどないように思われた。更に刑事課の数人が拳銃所持を許可されていたが、熊に拳銃がどれほど効くかは、彼ら自身半信半疑だっただろう。


 事件からほぼ一週間経ったとは言え、人がほとんど入ってこない場所だけに、事件発生からそれほど変わっていないように西田には感じた。立ち入り禁止の「規制線」は、場所が場所だけに必要性がなかったこともあって、2日ほどで丸山に回収してもらっていたが、「人魂」の本体と思われた下足痕は雨がこの間1度しか降らなかったこともあり、まだかなり残っていた。保線区員も気を遣ったのか単に死者が出た場所を忌避したのかはわからないが、余り現場に近づかなかったようで、前回から新たな長靴らしき痕跡は見当たらない。ただ、おそらく鉄道写真の撮影に来た、新しい他者の下足痕はあった。幸い、おそらくだが「彼」はそれほど現場を荒らすことなく立ち去ってくれたようだ。一応事件に関連がないと断定はできないので、鑑識に頼んで型を採って貰った。


 今回の現場検証の方針として、特に力を入れなくてはならないのは、前回検証しなかった場所において、吉見の死に関係しそうなものの発見、「発光体」の遺留品の確保、或いはそれが一体なにを目的としてここに居たのかを認識できる証拠の発見にあった。そのため、割と早めに前回見たところは切り上げて、同心円状に徐々に目視による捜査を開始した。ただ西田、大場、小村の強行・盗犯係3人の面々は、同心円状ではなく、前回出来なかった人魂の靴跡を追跡することに専念した。吉村、黒須、澤田は他の応援組と共に同心円状をしらみつぶしに、沢井課長と主任の竹下はそれぞれそれらの指揮をしていた。


 土の部分が現場から離れるとすぐに草地が多くなるので、かなり念入りに調べると、30mほど現場から遠軽方向に離れた辺りの土の部分に、再び痕跡を発見。追跡の歩みを更に進めると、運転士達が証言していた「発光体」の出現地点の手前辺りに、たき火をしたような跡を発見した。


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