序章12
取り敢えず全員で昼食をとり、午後から掘られた跡を調査する作業が始まった。スコップの足りない分は遠軽署に残っていた職員に持ってきて貰い、まず3箇所を3人ずつに掘らせて一気に調査した。しかしながら、3箇所ともに深くまで掘り返して、念入りに調べたが何も出てこなかった。この時点で小村の指摘したように、「掘ったのではなく、掘り返した」可能性が高くなった。もし何かを埋めるために掘ったのなら、6箇所中3箇所から何も出ないなどということが起こる可能性は極めて低いからである。わざわざダミーのためにそこまでするのかという疑問と、足跡の跡や状況から居た人間は1人である可能性が高いので、作業量を考えると、かなり無理があるわけだ。
「これは小村の言うとおりだったな」
西田は小村に声を掛けた。
「どうも何か埋めたものを探すために掘った可能性が高いですね、こうなってくると・・・・・・」
小村もスコップを地面に突き刺すと、汗をぬぐいながら言った。
「しかし、ということは残り3箇所から何か出てくる可能性は低くなったのかな?」
課長がまいったなという表情を浮かべつつ言った。
「そこら辺はわかりませんね。ただ確実に言えるのは、幽霊があの事件以降消えたのが、事件があって警察沙汰になったからなのか、目的のものを掘り返すことに成功したのかがそれでわかるって話じゃないですか? 一方で、だとすればこの掘った跡から何か出てくる可能性は、幽霊が中途半端にしかモノを回収できなかったケースに限定されますね。見逃した場合や、最後に掘り返した穴を十分に調べている暇がなく、吉見の事件のせいで、すぐに埋め戻す必要があった場合とか・・・・・・」
主任の竹下の回答に課長の沢井も西田も頷いた。
取り敢えず先に掘ったメンバーを入れ替えて、残りの3箇所を捜索することにしたが、案の定何も出てこなかった。結局のところ、幽霊は穴を掘って何かを回収してしまったと言うことなのだろうか?徒労に終わったことで、現場検証チームは地面に思わずへたり込んでしばらく黙ったままになった。
「実は大したものを探していたわけじゃなかったって話だと良いんですけど」
黒須が人ごとのように言う。
「いや、真夜中にこんなところでずっと行動してんだから、何か見つかったらマズイものに決まってる!」
思わず、課長が語気を荒げたが、すぐに冷静に続けた。
「とにかく、確実に言えることは、幽霊は回収に成功したか、それとも」
「それとも未だに掘り返してない場所に何かが埋まっているか」
課長の言葉を西田が無意識に継いだ。
「その通りだ」
課長が西田の方を一瞥すると同時に小さく且つ力強く言った。