表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/827

迷走30

「西田、竹下についてどう思う?」

「どうって言われても、困りましたね……」

酔いの軽く回った頭では、すぐに言葉が出てこないこともあったが、話題そのものが想定外だったため、答えようがなかったというのが本当のところだろう。

「俺はね、あいつはいつか警察辞めるんじゃないかと思うんだ」

向坂はそんな西田に構わず話を続けた。

「え? 竹下がですか?」

西田は更なる思わぬ展開に二の句が継げなかった。

「あいつ見てたらそう思わないか? いやな、本当のことを言うと、おまえを明日貸してもらおうとした理由は、竹下についての話をおまえとしたいと思ったからってのが、実は大きいんだよ。ところがおまえが今日北見に泊まるってんで、予定より早くこういう話になったわけだけど」

突然の自分を指名した捜査協力要請には、そういう意図があったのかと、西田は驚いた。

「そうだったんですか……。てっきり篠田の話が、そのまま理由かと思ってましたが」

「いや、勿論それもなかったわけじゃないけどさ……」

向坂はそう言うと、鶏皮を串から頬張った。

「向坂さんが言うとおり、確かに竹下は融通が利かないところがありますけど、刑事としての才覚はあると思いますよ」

「それは俺も否定しない。あいつは30半ばで、西田にも失礼な言い方かも知れないが、小さい所轄とは言え、遠軽署の主任になってるわけだから。その前は札幌の所轄で刑事やってたし。おそらくその頃からあの調子だったにも関わらず、この早い出世ってことは、昇進試験をパスしてるだけでなく、それなりの実績を挙げてるからに他ならないはずだ。間違いなく刑事としの将来も悪くないはず。大学も北海道じゃ北大に次ぐレベルの高い翔洋大学で、強豪の剣道部出身だからな」

「だったら、尚更辞めますかね?」

「辞めると思うね俺は。ああいうある意味『まとも』なうるさ型は警察組織としては邪魔だろ?」

「邪魔なタイプなのはその通りだと思いますけど、優秀ならそれでも抱えるのも警察だと思いますが?」

「そう。邪魔でも必要なら抱えるだろうよ。ただ、だからこそ、奴の方から見切りを付けることもありえるわけだ。それを言ってるんだよ、俺は。邪魔だが必要悪として抱えられることに、本人が納得できないって話」

「そういうもんですかねえ……」

西田はいまいち向坂の話に頷けないでいた。

「西田、おまえもわかってると思うが、警察ってのは上に行けば行くほど、汚い部分と向き合わなけりゃいかん。そりゃ下っ端の頃もそういう部分はあるが、上の汚さはそれを踏まえた上で更に汚いからな。あいつは頭も良いし、刑事としてもなかなか出来るから、ある程度の出世は確約されてるだろうが、だからこそ耐えられなくなるのも早いような気がするんだな、俺から見ると」

向坂の熱弁に耳を傾けていた西田だったが、ここに来て多少実感が湧いてきたのか、黙って向坂の猪口に冷酒を注いだ。

「難しいところですが、俺より経験のある向坂さんがそう感じるのなら、そうなのかもしれませんね。確かに竹下みたいのが、将来今の警察組織のままでふんぞり返ってるってのは、性格的にも考えづらいかな……」

「ああ、竹下が上に行ってるなら道警は大丈夫だろう。辞めてるならそのままってことだ」

向坂は、西田の猪口に酒を注ぎ返すと、突き放すように言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ