失敗と救いの手
・・・・ストーカーから結衣を助ける作戦は成功した。でも、結衣を助ける事はできなかった。僕は結衣を助けた。ストーカーから。それなのに、結衣は、結衣は、結衣は、車に引かれて死んでしまった。僕の、僕の目の前で信号を無視したトラックに引かれた。僕は一体、何の為に過去に戻ってきたのか。そう、結衣を助ける為だ。その為だけに過去に来たんだ。しかし、今、結衣はどうなっているだろうか。息をしているだろうか、心臓は動いているだろうか。そんな、そんな人間にとって当たり前の事を結衣は今できていない。そう。死んでしまったから。膝から崩れ落ち、涙の止まらない僕はただただ泣いていた。声にならない叫びをあげ、人の目も何もかも関係ない。
これからどうすればいいのか分からない僕は、社の所へ来ていた。ただその場に座り、虚ろな目をしていただろう僕は、携帯が鳴っても出なかった。
それからしばらく経った頃、颯太がやってきた。
「よぉ!やっぱりここだったか。携帯にかけても出ないから探したぜ。所で、生徒会長はどうなった?」
颯太のその問いに僕は答えなかった。答える気力がなかった。すると颯太は察したのか、表情を曇らせた。重い空気が流れる。僕は、考えないようにしてもさっきの結衣の死体が頭を離れない。そしてその度に、胸が締め付けられる。助けてあげる事ができなくてゴメンよ、結衣。
「もう1度、生徒会長を助ける為に過去へ来たらどうだ?」
颯太はそう言った。
「そ、んな事できるのか?1度失敗してるんだぞ?もしかして、過去に来る度に結衣を助けられるチャンスがあるとか、言わないよな?」
絶望の淵から一気に救われた。僕は先程までの重い想いを一層重くさせ、次こそは結衣を助けると心に決めた。
「過去に来る度、チャンスはある。けどな、蓮。助ける事に何回も失敗すると、その分生徒会長を救うのは難しくなるんだぜ。前の死因と今回の死因、次過去に来て生徒会長を助ける時はこの2つの死因を乗り越えなくちゃいけない。んで、もしまた次も失敗しちまったら、今度は3つの死因を越えなくちゃいけないんだ。」
颯太はそう言ったが、僕の頭は結衣を助けられるチャンスがあるという事でいっぱいだった。今度こそ、今度こそ結衣の事を救ってみせる。それに、もし失敗してしったとしても、また過去に来ればいいんだ。颯太だって協力してくれるし、成功する。させてみせる。