福島颯太の働き
あの日の事を思い出す。僕は、結衣と喧嘩をして、この道を1人で帰った。その時の僕は、結衣が大変な目に合ってるだなんて事をちっとも知らなかった。もしかしたら、僕がこの道を歩いている時には結衣は既に殺されていたのかもしれない。
「よし、行くか。」
フードを少しだけ深く被り、僕は結衣の元へと歩き始めた。
-福島颯太
蓮はもう動き始めている頃かと、自分の机に座りながら考えていた。
「そろそろ俺も動かないとな。」
腰を上げ、蓮の教室、ではなくて生徒会室へと足を運ぶ。
生徒会室では蓮の言うとおり、生徒会長と蓮と思わしき人物の口論が繰り広げられていた。自分の運命も知らないで喧嘩をしている2人の姿は、少しだけ滑稽に感じた。
暫くすると、生徒会室の扉が勢い良く開き、生徒会長が走って出て行った。その目には涙が滲んでいたような気がする。メールで、生徒会長がそっちに向かった事を蓮に教えたあと、俺は生徒会室の中の椅子にしかめっ面で座っている蓮に話しかけた。
「蓮ちゃんさぁ~女の子は泣かしちゃダメだろ?」
さすがに馴れ馴れしくし過ぎたか。いや、これがいつもの俺だろう。この時間の蓮はまだ俺を知らないが。そして案の定、蓮は俺を睨みつけてきた。
「誰だお前。僕はお前みたいな奴知らないぞ。」
俺を睨みつけたまま席を立とうとする蓮。ここで帰らせる訳には行かない。時間はまだまだ稼ぎたいからな。とは言ったものの、何を話したもんか・・・。いや、蓮には生徒会長の話をするだけで充分だな。
「俺に知らない奴はいないのさ。生徒会長の隣にいつもいる蓮ちゃんに言いたいんだけどさ、さっきの喧嘩、ありゃあ蓮ちゃんが悪いんじゃない?生徒会長は蓮ちゃんの事を思って言ってたのにさ~。」
おちゃらけながら蓮ちゃんにそう言うと、「お前聞いていたのか!」の一言だけで黙ってしまった。少しばかり沈黙が流れた後、
「僕が悪い事は分かってる。分かってるんだよ。それでも、素直になれない事だってあるんだ。というか、お前には関係ないだろう!盗み聞きなんて趣味の悪い事して、余計なお節介はゴメンだ!」
と言うと、俺を押しのけ帰ってしまった。まあ、結構時間稼ぎできたし充分自分の役目は果たしただろう。この時間の蓮が学校を出た事を連絡し、俺も蓮に引き続き学校を出た。
「時間の流れを変える事は簡単じゃない。うまくやれよ、蓮。」
俺はそうポツリと呟くと、いつものように鼻歌をしながら歩き始めた。