タイムスリップの先輩
颯太に電話をかけた僕は、なんとも言えない胸の不安感に襲われた。もしも僕の事を知っていなかったらどうしよう。いや、知っていないのが普通なんだが。
-もしもし?颯太か?
-・・・アンタ誰だ?
-僕の名前は木古内蓮。お前ならこの一言で充分なはずだ。僕は未来から来た。話がしたい。今から話せるか?
-・・・分かった。今から社へ行く。そこで話をしようじゃないか。
そして現在松前神社の裏手にある社へ来ている僕。颯太はまだ来ない。こっちは時間がないのに。結衣が殺されてしまうのは明日だというのに全く。
「よお、木古内蓮、だったか?待たせたな。」
僕が丁度怒っていると颯太はやってきた。未来とはそんなに時間が変わっていないからな。顔も見た目も同じで少し安心する。
「未来からきたんだっけか?どれくらい前からだ?」
「今が9月29日で正しいなら、僕は1ヶ月と1日前から来た。」
颯太は僕の事を疑わないでその後も話を聞いてくれた。やっぱり、颯太に電話をして良かった。
「結衣、とやらの事は俺も知ってるよ。生徒会長だもんな。でも俺は、アンタともどこかで会った事があるような気がするんだよな。まあ、同じ学校だし会ってても可笑しくはないか。んで、なんだっけ?蓮ちゃんは生徒会長が死なない未来を目指してるんだっけ?」
全てを話終えた僕は、どうやったら結衣を救えるかという相談をしていた。1度過去へ戻り、母親を救っている颯太なら良いアドバイスをくれるに違いない。
「1つ、言っておく。生徒会長を救う時に自分が未来から来た事がバレたらお終いだぞ。俺はタイムトラベルの事を知っているし、試してもみてるから大丈夫だったが。未来人が過去の人に話しかけたら、本来その時間の流れにはなかった未来人に話しかけられるというものが追加されて、その歪みを治す為に、お前は時間の流れから末梢されちまうよ。因みに、向こうから話しかけられるのもダメだぞ。」
颯太はそう言った。僕は、結衣に未来から来た事を告げて簡単に救うつもりだった。これは危なかった。やっぱり颯太に電話をして良かった。あれ?これ2回目か?まあ、いい。
「でもな、このルールには裏技がるんだよ。未来人だとバレなきゃいいんだ。そうすれば、未来の蓮が過去の生徒会長に話しかけても、生徒会長は過去の蓮、この世界の蓮に話しかけられてると無意識に誤解する。そしたら、生徒会長が生きる未来でも未来人に話しかけられた時間は無い訳だ。これなら、蓮ちゃんは時間の流れから末梢されねえよ。」
颯太のアドバイスはどれも為になる。タイムトラベルとしての先輩だ。これからはもう少し優しくしてやっても良いかもしれない。