タイムスリップ
気がつくとそこは、松前神社だった。扉は、小さな社に戻っている。とにかく、本当に過去へとこれたのか確かめなくてはならない。コンビニへと足を運び、普段は見ない新聞へと目を向ける。
-9月28日火曜日
結衣が死んだのは9月30日、僕がいた世界は10月28日。やった。やったぞ。過去へ来れた。これで結衣を助ける事が出来る。
ふと、僕は疑問に思った。未来から僕がやってきた事で、この世界の僕はどこへと行ってしまったのだろうか。僕がきた事で一時的にいなくなったのか、僕とこの世界の僕、2人いるのか。クソ、こんな事ならもっと詳しく颯太に聞いておくべきだった。まあ家に行っていればいいか。
答えは後者だった。僕が未来から来た事によって、この世界の僕は2人になってしまっている。
家へと向かう途中に、聞き覚えのある声が2つ聞こえた。僕と、結衣の声だ。とっさに隠れた僕が見たのは、いつもの顔した木古内蓮と、いつものように可愛い知内結衣の姿。
-9月29日水曜日
もう一人の僕の姿にどうしたらいいのか分からない僕は思わず逃げ出してしまった。結衣は明日死んでしまうのに。とにかく、僕が蓮だとばれない様にしなければならない。混乱は無用な犠牲を生むだけだ。
両親が仕事へと行き、僕が学校へと行っている時間。僕は鍵を使い家へと入った。自分の家なのに他人の家へ入るみたいな感じがする。動きやすい服に着替える。上は勿論パーカー。フードを被って顔を見づらくする。マスクやめがねもつけた方が良いだろうか。いや、不審者にされてしまうな。
僕1人で結衣を助ける事ができるだろうか。不安だ。人、1人の命をそんな簡単に・・・いや、やってみせる。必ず結衣の事を助けてみせる。その為に僕はここまで来たんじゃないか。弱音を吐いている場合じゃない。それに、誰かに助けを求めて、未来から来た事を言った所で信じる者がいるだろうか。いや、いない。待てよ、颯太ならもしかしたら・・・。未来から来た僕の携帯になら、颯太の番号は入ってる。少しばかりの希望をかけて、颯太に電話をかける。