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森と学校と

「暫くサボった後の学校は面倒だなあ。」

欠伸をしつつそういうと、ポコン!と心春に頭を叩かれる。

「学校は普通毎日通うものなのよ!それなのに、暫くサボったあげくに面倒だなんて…。福島君は運動も出来るし、勉強も出来ないわけじゃないんだから頑張ってよね。」

心春の小言を聴きつつも、俺の頭の中は蓮の事でいっぱいだった。

今何処にいるのか。病院?それとも自宅?もしかして、学校に来ていたり…はないか。

この流れは前にもあった気がするんだよな。確か前は、そのままケロっとした感じで病院にいたんだけど、結衣の事を早々に話して次の日蓮がいなかったというのはあんまりない流れのせいで、よく覚えてないんだよな。

「ちょっと、福島君。私の話聞いてる?」

俺の顔を覗きこむようにして、心春はムッとした表情で見つめてくる。そういえば、心春から別れ話を切り出される事はあっても、俺から切り出す事はあんまりないなあ。なんて考えつつも、俺は「だいじょーぶだいじょーぶ。ちゃんと聞いてるよ。」と、返事をかえした。


放課後になり、俺は、蓮の教室を見たり、屋上や裏庭といった所までも探したが、やはり蓮は学校にはいなかった。

やっぱり学校にはそうそう来ないよなあ。そう思い、蓮の病院へ行こうとすると、木の生い茂る、あまり人通りの良くない感じの所に、数人生徒が集まっているのが見えた。

あれは…森なんだっけ、えっとそうだ、陽奈だ。森陽奈だ。

「学校サボってどこ行ってたのかな?ひ・な・ちゃん?」

髪の長い女生徒が、ドンッ!と森を壁に押し付ける。

「学校をサボるような悪い子には、お仕置しなくちゃ!ねーえ、どう思う?ひーなちゃん。」

髪を2つに結んだ女生徒が、森のスカートを剥ぎ取った。森は嫌な顔をするだけで、何も言わない。

「壁に押し付けられて、スカート取られて、どうして何も言わないの?日本語分からないの?口動く?大丈夫?」

カチューシャを付けた女生徒はそう言うと、森に蹴りを入れた。ズルズルとその場に倒れこみ、森はうずくまってしまう。

俺が助けてもいいんだけど、アイツに関わるとその後の学校生活がなー。すこーし面倒になるというかなんというか。でも、助けないのは後味が悪いんだよなあ。はあ、めんどくせえ。

「そこの、あー、お嬢さん方?そういった事はあまりやらない方が「別に、私達は学校をサボる悪い子にお仕置をしているだけですよ?」

俺がセリフを言い終える前に、カチューシャはそう返して来た。3人の女生徒はニヤニヤと笑いながら、森へのお仕置を続けようとする。

「あ、因みにもう先生呼んであるからな。お前らがお仕置ってのを今すぐ辞めるなら、俺の勘違いだったって事を先生に話すけど。どうします?」

そういうと、青ざめはじめる女生徒達。はっはっはっ。そうだろうそうだろう。内申に背は変えられないだろう。親を呼ばれるのは嫌だろう。

「あの、えっと、ありがとうございます。」

女生徒達がいなくなり、森がお礼を言ってきた。が、下はパンツである。どうやら、助けてもらった事が嬉しくて初めての事で、スカートの事を忘れているようだ。

「あのさ、スカート忘れてる。痴女になっちゃってる。」

スカートの旨を伝えると、ようやく気がついたのか森は顔を真っ赤にさせ、勢い良くスカートを着用すると、「ほ、本当に、あり、ありがとうございました!」と言って何処かへと去ってしまった。昨日蓮を見てないか訊きたかったのに。まあ、病院に行ってみればいいか。


病院に行くと、丁度蓮の病室から出てきた森の姿があった。

「よ!さっきぶりだな。」

後ろから声をかけられて、ビクッと肩を震わせ、後ろを振り向いた森は、俺の姿を見てさらに驚いていた。

「え、あ、さっきの!えと、どうして此処へ?」

わちゃわちゃといろんな事を話そうとして、あまり伝わらない森に深呼吸を勧めると、スーハーと1深呼吸をして、少しは落ち着いたようだった。

「俺さ、福島颯太って言うんだ。よろしくな。森陽奈ちゃん。」

「あ、あれ?どうして私の名前…?」

どうやら、俺が名前を知っている事に疑問を覚えているよう。

「まあ、陽奈ちゃん有名だからね。知ってる人と知らない人で比べたら、知ってる人のがそこそこ多いと思うよ。」

俺がそう言うと、「し、知らなかったです…。」と森は事実を噛み締めていた。


「あの、所で福島さんはどうして此処へ?誰かの御見舞いですか?」

「うん。そうだよ。陽奈ちゃんと同じく蓮ちゃんの御見舞いに来た。昨日も来たんだけどさ、蓮ちゃんいなかったから。」

蓮の事を話すと、「福島さんも蓮君の知り合いだったんですね。」と、少しだけ親近感を覚えられたよう。あんまり親近感を湧かれてしまうと、学校でも近づいて来て面倒なんだよなあ。俺の行動のせいで心春に迷惑なーんてあんまりしたくないし。

「その蓮君の事なんですけど、なんだか今日はその、少しだけボーッとしているような気が、あの、その、ホントに少しだけなんですけど。」

蓮がまだ生きていた事に感謝感激。これも、螺旋階段を登り続けて来たご褒美だな。蓮と連絡がつかなくなる。会えなくなる。となった時の蓮の死亡率は、全世界で比較してもこれ以上はないってくらいにトップを突っ走ってるからな。

「情報、ありがと。俺もちょっち蓮ちゃんに会いに行ってくるわ。」

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