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訪問

またもや学校をサボり、俺は蓮の病院へと来ていた。蓮は、個室で毎日を過ごしているのだが、その個室の前に、今日は森陽菜の姿があった。森は、ふうっと1つだけ深呼吸をすると、蓮の病室の中へと姿を消した。

そうだった。森は、蓮の事が好きだったんだっけか。もう、よく憶えていなかったぜ。学校をサボってまで、蓮のお見舞いに来るなんて…。いや、お見舞いを口実に、自分への言い訳にして、学校をサボってるのか。アイツ、イジメられてるもんな。


森がイジメを受けているのは、結衣が死んでからの事だ。結衣のおかげでイジメから救われて、結衣の隣にいて、結衣の人気に嫉妬して。結衣が死んで、結衣の後釜を狙って、みんなの心に上手くつけいろうとした森は、結衣の事を心の底から尊敬している『八雲ひなた』の手によって、イジメを受けはじめた。結衣の変わりになろうとした森の事を、みんなも心の何処かで嫌っていたのか、救いの手を差し伸べる者はいなかった。

森は、結衣にイジメから助けてもらってから、結衣の隣にいる事が多かった。だからか、いつも側にいる蓮も、少しだけ、ほんの少しだけ、会話をする仲だった。それくらいしか接点がないというのに、森は、蓮の事が好きである。結衣が死んで、心おきなく蓮の事を好きになる事ができて、森はわりかし、蓮にアタックをしている。当の本人は、気がついていないようだが。


しばらくすると、森が蓮の部屋から、少しだけ涙をみせながら出てきた。女の子を泣かすなんてモテないぞ。いや、蓮は結構人気だったか。

なんて思いつつ蓮の病室へ入ると、蓮は、窓の向こうに広がる景色をただジッと見つめていた。

「よ!元気にしてたか?蓮ちゃん。」

俺が声をかけると、ようやく人が入ってきた事に気がついたのか、蓮はハッとしてから、俺の方を見て、あからさまにイヤな顔をした。

「さっき、女の子が泣いて出てくるのを見たぜ?女の子泣かしちゃいけねぇよ。モテないぜ。」

そう言いながら、ベッドの近くにあった椅子に腰掛けると、蓮はさらにイヤな顔をする。

「お前、この間の馴れ馴れしい奴…。なんで、お前がこんな所にいるんだよ。出ていけよ。」

ふうっとため息混じりに、少し、イヤかなり、俺を睨みながら、蓮はそう言う。蓮は、結構顔に出やすいタイプなんだよな。だから、良くも悪くも分かり易い。とてもな。

「俺の名前は、お前じゃなくって、福島颯太な。颯太でイイぜ。蓮ちゃん。」

そう言い終わるかどうかの所で、「ちゃん付けで呼ぶな!」と、拳が飛んできたので、今回は躱しておく。蓮のパンチは結構効くんだよな。躱せるモノは躱していかないと。

「というか、何でお前がここにいるんだ。僕はお前に何も教えて何かいないぞ。」

躱された拳に舌打ちをし、蓮は俺を睨み続ける。そんなに睨んでたら、眉間にシワが出来ちゃうぜ全く。見た目だけはいいんだから、大事にして欲しいもんだ。

「いやぁさ、蓮ちゃんと友達になりたくってさあ。なんとか蓮のいる場所に来ちまった感じ?」

笑顔でそう言うも、「僕は別に、友達募集何てしていない。他を当たってくれ。」と、一刀両断。もう少しぐらい、オブラートか何かに包み込んでくれたっていいのになあ。

「まぁまぁ、蓮は募集していなくても、俺は蓮ちゃんとすっげえ友達になりたいんだよ。って所で、また明日な。」

そう言いつつ病室から出ようとすると、「もう来るな!ウザい!」と、最後まで蓮のツンツン波動をくらってしまった。本当に、蓮のツンデレには困ったもんだぜ。デレに到達するまでに、激しいツンを、正座しながらくらわなきゃいけないから、大体の奴が蓮の事を勘違いしちまうんだよな。優しくて、寂しがり屋で、一緒にいて楽しい奴なんだけどな。

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