出会い
死んだ。結衣が死んだ。あんなに元気だったのに。ストーカーに殺されたなんて。結衣がストーカーに悩まされていたなんてこれぽっちも知らなかった。結衣がいないこんな世界なんて、いらない。イラない。イラナイ。
そうして僕は、自殺をした。
目が覚めると、そこは病院だった。ベッドには「木古内蓮」と自分の名前のプレートが貼ってある。病院は、真っ白で真っ白で、まるで結衣みたいだ。ここの病院に結衣は運ばれたんだ。同じ病院なのに、僕は助かるんだね。そうだ、結衣と同じ場所で僕も死のう。そうすれば、僕はより結衣の所へ行きやすいかもしれない。
そうして僕は、自殺をした。
僕は何回も何回も自殺をした。それなのに、何度やっても僕は助かってしまう。僕はこんなにも死にたいのに。学校へ行けば、自殺願望者と呼ばれ、哀れみと同情の目を向けられる。病院へ行けば、厄介な患者と呼ばれる。ああ、こんな時に結衣がいたら。僕は、結衣がいればそれだけでいいんだ。他は何もいらない。僕の命だっていらないんだ。そのぐらいに、僕は結衣の事が大好きなんだ。
結衣と僕は幼馴染で、僕は昔から結衣の事が大好きだった。
「結衣が僕のお嫁さんになったら、知内結衣じゃなくて木古内結衣になるね。」
「きこないゆいって何か言いづらくないかな・・・。」
「そんな事ないよ!ずっとそれになったら違和感なんてなくなるよ!」
「そうだね!結衣は将来、木古内結衣になる!」
「ホントに!?じゃあ、約束だよ!僕ずっと待ってるからね!」
結衣は昔から可愛くて、運動も勉強もできて皆から人気だった。僕はそんな結衣と同じ高校に行きたくて頑張って勉強したんだ。それなのに、もう学校に結衣はいない。結衣の家へ行っても、何処へ行っても結衣の姿は何処にもない。あの時、結衣を1人で帰らせたのが悪かったんだ。珍しく喧嘩して、結衣は怒ってさきに帰った。それが最期になるとは知らないで僕は結衣をただ見ていた。どう謝ろうかを考えてた。戻りたい。あの日、あの場所へ。結衣にもう1度、会いたい。
「結衣・・・結衣ッ・・・!」
いつの間にか流れ出てる涙もそのままに、僕は泣き続けた。ただただ泣き続けた。学校の結衣の机に座り、僕は涙を流し続けた。
「なんでお前、泣いてるんだ?」
人の声がして、ハッと我に返った僕は涙を拭いて何事もなかったかのように「別に」と答えた。
「そう、強がるなよ。お前、自殺願望者で今有名な木古内蓮だろ?お前、知内結衣の事そんなに好きだったのかよ。って、見てれば誰でも分かったか。」
いきなり話しかけてきたその男に、僕は不快感を覚え教室を出ようとした。が、男に手を取られこう言われた。
「世界を変えてみないか?」