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名も無き人
名も無き人
駅の改札口から
水みたいに流れこんでくるどす黒いオーラ
目が細い、
なんか人間っぽくないな
そしてその生き者は言った
「仕事なんだよ」
そしてその生き者は喜んだ
「安定してるよ」
やがてその生き者は老いた
「退職します」
それから彼は自分を探した
今までの略歴を
震える手で書き出した
ついに最期その廃れた心は思った
「私に名前はない」と
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