墓掘りフレディ 5
※*※
――シロ。
突然、姿を消してしまったシロ。
どこへいってしまったのだろうか……。
それは始まり……終わりを指差す白い記憶。
‘僕’は知っている。
八年後の‘僕’は知っている。
八年前の僕は知らなかった。
考えるまでもなく……あの場所に。
ここにある。
いつも大事に抱えている。
――『白刃』の矢が立った。
シロ、それを引く手は戻ってこなかった。
途切れた引き綱と、すられて……ひかれて戻ってきた。
……どうして。
無邪気だったのはシロ。
突然、走りだす癖があった。
好奇心、あるいは本能の誘導。
――走りだす。
止まれない。
衝動、赤い花を咲かせる。
本能――。
歯車は、そうしてあの日――動き出したのだ。
※*※
「あら、淡谷さん?」
女生徒の姿だ……。
「こんな場所にお一人で、どちらに?」
途中さん……。
『こんな場所――』、新校舎の……一介の生徒である僕にとって、確かにそこは馴染み深い場所であるとはいえない。
ただ、‘気になった’のだ。
気が気でなかった、十字を高く、掲げられた『洋館』のような建物を見て……思い出していた。
曰く、『旧校舎』である。
建物自体に、風前と出で立つその様を見上げると、草の根――蔓の腕が、古き物を装う威を笠に、塗装のはがれやひび割れの隙間、根付いているのが見受けられる。健全と、当時の面影を繕うように……ではある。
「……気になるのかしら?」
――頷く。
「一昔前は……‘埋蔵金’とか‘七不思議の舞台’として色々騒がれていたようだけど、今では放っておかれて……たまに、学校外の私事で使用されることがあるようだけど……そんなあなたもこういう用件?」
‘そうなの?’と、一歩、上目がちに引き窺い。人差し指に唇をあてる。
ややあって、思い当たる彼女、得心、続ける。笑う。
「そういう私も、音楽塔の帰り道……ね、よくよく通りかかるの。旧校舎、ほら、もの凄いじゃない」
そう言うと、促す……旧校舎の木陰、『ざわ――』と夜風に総毛立つよう。依然、辺りは薄暗い、闇。
「……見ているとなんだか、怖いような、寂しいような気持ちになってくるの」
彼女の、瞳の先はどこにあるのか、あるいは瞼を閉じて。
「あなたはどう?」
向けられる。視線。
曖昧なうちに、うやむやと返し事をする。ただ、「そうなのかもしれない」、思う。
「怖いもの見たさっていうのかな、惹かれちゃうんだ。そういうのに」
……。
「幽霊さんも近寄らないぐらいだもの、きっと何かあるの……旧校舎には」
彼女は言う……けれど個人的には、そこに棺桶が数櫃並べて横たわっていても驚かない……ぐらいの外装は持ち合わせているはず、と見てとれる。……さては、どうだろう、棺に眠るは何者であるのか?
「……ちょっと、中……いろいろ、入ってみない」
笑う、彼女は言ったった。
シロ……。