墓掘りフレディ 3
『途中瑞穂――』
‘めいちゃん’は今、彼女と二人……涼しげに会話を楽しんでいる。
めいちゃんとはいたって古くからのつきあいなのであるけれど、彼女達二人が話をするところは……あまり見かけたことのない僕である、というので、つい‘横目’、と成り行きを……ひそめて確認してしまっていた。
‘途中さん’……終始笑みを浮かべている女の子。ふわふわとした振る舞いに、ひとえに掴みどころのない様子。お芝居ごとめいて見える……ような時もあるけれど、それを口に出してしまうことは、大変お後がよろしくないことであり……こうして傍から見守っているのが正しいことのようにも思える、けれどそんな彼女の姿容は……この上なく人目を引き付けるのだ。
……そうして二人の演じる『涼しげな会話』は、意せずところとして……‘僕’だけではない、他のクラスメイトの薄氷な心理の上、その注意を少なからず引いてしまっている……かろうじて、足跡それだけにとどまらせるようにしながらも……僕は耳にしていた。
ある‘噂話’について……クラス内で流れるお伽噺のこと。
それは聞く話による。『浅草のフレディ』こと鎌谷先生にまつわる先日の出来事に端を発している。
フレディの死……それは事故という訳ではないのだということ。故に亡霊フレディは校舎内に留まって夜な夜な徘徊しているのだという話。
亡霊はあるものを失っていて、それは大切な何かであるということ……それが、そう……ある特定の何かであるとは一切が触れられていない、不文律のようなものとして扱われている……それは、声に出してはいけない、言霊に、亡霊がさすらい姿を現わす……取りつかれてしまう、と、あな恐ろしやなことである。
このお伽噺のキーワード……一つ、それは『鏡』の存在だ。
魔性の存在を打ち払う『鏡』、ただ身に着けていればいい、と……亡霊は、鏡に映る己の内に真実を見て、頭をかかえて去っていくという。
人の口に戸は立てられない……噂はかくもこう語るのである。
つまりの締めくくり……亡霊のその大切な何か、で不毛なそれの行方というと……いたって誰もが知るところであり、また誰もが知らないところでもある、と言えるようなのだ。
不憫な設定ですね。