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墓掘りフレディ 2

 ――あれから、皆の様子はそわそわとした落ち着きのないものとなっている。

 口を開きたくてしょうがないのだけれど、誰もが周りの様子を窺って……あっぷあっぷと、沈黙の海に溺れながらも、手を引く何者かの救いを求めている。聞き分けの良い生徒を前にして、教壇に立つ先生の方も、沈痛な表情を隠せない。


 ……‘めいちゃん’の姿を見る。


 ――変わらない。何も変わらない。時々、物憂げな表情で……こちらを気にするような素振りを見せながらも、日常の一コマにとどまる、物静かな彼女……の、その姿勢をは崩していない。きめの細やかな右の手の動き……黙々と、白紙の上に文字を刻みつける……その様子。


 ――――。


 からすの贈る……まばらにも、ひたむきな木霊の似合う……夕空そらがふたたびと訪れて、引き裂くような……悲鳴を耳にする。


 声がしたのは……それはどうやら廊下の方。血相を変えた人々、生徒達、先生達、が駆けつけてくる。

「どうしたの、何があったの」と皆が尋ね、怯えた様子の‘彼女’……決まってそう答える。


 呼び起こされる波紋。


「――幽霊」。


 うわ言を口に、窓の外を指さす彼女が見たもの……教師陣はおのおのに頭を悩ませる、けれど生徒の方では……それが、驚きであったり、不安や焦燥、憤り、懐疑、あるいは好奇の念……首肯に俯く者、と、それぞれが異なった表情、認識を抱いているよう……そこには根底となるものの存在、輪郭が顔を覗かせる。 

 忌々しくも賢かしい眼で、彼らが胸中深くに探りを入れている。


‘幽霊’――なる世界への誘惑……非日常なる日常の憂い時……皆の前に等しくその門を叩かせているようだった。


 ――――。


「あなたは……いいの? 行かなくて」

‘……?’

「いつも……窓の方ばかり見ているのね」

 …………。

「退屈……なんでしょう」

 ………………。

「……知ってる? このクラスで流れている噂のお話……」



「評判よ」



「髪が無い、髪が無ぁいって、評判なんだから。噂のあの人……来る夜来る夜……失くしてしまった自身の何かを求めて……校舎の何処いずこを彷徨い歩いているんですって。大変ねえ、うっかり……落としてしまったのかしら? それとも……誰かが持ち去ってしまったとか……? もう、お墓に持ち帰っていたり……」


 目の前に……誰であるのか、立っている。


「あら……じゃあ、さっきの幽霊さんはだあれ? 彼……人違いかしら? あなたは……ねえ、どう思います?」


‘……’、そうだ、そこには‘彼女’の姿があった。



幽霊には、一度会ってみたいような気がしますね。

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