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僕に悪魔が舞い降りた  作者: CROWN
小学校へ行こう!
1/7

MON:OPENING

 はやみねかおる先生の「都会のトム&ソーヤ」を参考にして作りました。

 似てる部分がほとんどですが^^;

 この後内容が多少変わってきますのでご了承ください。

  


 僕は今極度に眠い。今年の4月に晴れて高校生になれてから2ヶ月たった6月、どうして僕は真夜中まで塾に通わなければならないのか。

……理由は一つ。成績が悪いからだ。仕方ないじゃん……一つランクが上の高校に入学したんだから。受験生の時はそりゃあ必死で勉強したけど……いざ入学したらやる気なんてどこかに吹っ飛んだ。

 というわけで、僕は瞼の上にセロハンテープを貼って無理矢理目を開けているのだ。この状態で自転車漕ぐの結構きついんだぜ。


 僕の名前は成瀬岬(なるせみさき)。どこにでもいる普通の高校1年生。ただみんなと違うのは、塾に行っても勉強がまったく理解出来ないところ。おかけで全教科平均的ぴったし。

 僕が通う学校は、ここらへんではそこそこ頭がいい学校。まぁ、ピンキリだけどね。つまり、頭がいい人もいるけど、悪い人もわんさかいるってこと。もちろん僕は……勉強が理解できないくらいだからね……。


 自転車で住宅街を駆け抜ける。この先に僕が通ってた小学校があって、その先の住宅街に僕の家がある。

 男の僕でも、さすがに夜の小学校は少し怖い。窓から見える小学生の習字が異様な雰囲気がして、目を背けたくなる。


「早くかーえろっ……」


 別に誰かが返事してくれるってわけじゃないけど、とりあえず声に出してみて、早く帰ることを僕は決意した。

 しかし、今の時点で僕は大変な事件に巻き込まれてしまうことに気付くはずもなかった。




 



  

 僕の理想の朝というのは、まず母さんが「朝ですよ」と起こしてくれて、階段を降りる途中で焼きたてのトーストの匂いがする。そんでもって、リビングに行くとテーブルの上にはコーヒー(もちろんガムシロ入り)と焼きたてのトーストが置いてある……はずなのに。


「もうこんな時間っ!? 何やってんだよ、目覚まし!!」


 時計の針は8時15分を指している。授業は8時40分開始だ。そして、テーブルの上には母さんからのメッセージ。


──今日は早く仕事に行きます──


 メッセージ残さんでもわかっとるわ!、と叫びたくなるがタイムロスは避けたいので、素早く僕は綺麗にたたんであった赤いパーカーとジーンズを履く。

 そして、トーストを焼いている間に洗面所に行って、グシャグシャになっている髪の毛を適当に整えた。


「さぁ、勝負だ……!」


 僕は思い付いた。モチベーションをあげるために……トーストが焼けた音がしたら、ゲームスタートとする。時間との戦いだ。約20分で学校に着けるのか、ってところがちょっと疑問。家から学校までは歩いて30分かかるけど、全力疾走すれば間に合わなくもないかもしれない。

 僕はリュックを背負って、トースターの前に立った。


──全力疾走したら間に合うかもって思ったけど、さすがにきついしなぁ。どうすればいいんだ、僕!──


 頭の中の自分に問い掛ける。そして回送シーンが頭の中に浮かび上がった。

 真っ白な背景の中。突如、腰に手をあてたもう一人の僕が目の前にいて、見下すような目で僕を見ている。

 なんだよ! 哀れんだ目で人を見るな!


「高校生なんだから、チャリ使えるだろ」


「あ、その手があったか!」


 もう一人の僕はクールに肩をすくめて、ため息をする。そして、嘲笑気味に微笑みながら手を振った。

 白い背景は消え、目の前にはトースターが。

 ありがとう! 僕!

 僕の頭の中は困った時に何故かもう一人の僕が出て来るのだ。しかも、冷静沈着で頭の回転がすこぶる早い。くそ、あいつみたいにもっとクールに生まれたかったぜ。


 すると、トースターからトーストがガシャンと出てきて、ゲームスタートの合図をした。僕はトーストを口に挟み、玄関へダッシュした。

 しかし、僕は自転車には鍵が付き物ということを完全に忘れていた。


「ああああああっ!!」


 僕はその場に崩れ落ちる。鍵の居場所なんて、普段使ってないんだから知るわけがない。

 恐る恐る腕時計をちらりと見る。現在、25分。10分のロスだ!


「まずいまずい!!」


 とりあえず走りやすいスニーカーを選び、家を飛び出した僕であった。






「はぁ、空が今日も眩しい…」


 もう完全に僕は諦めムード。だってあと15分しかないし? 無理だし? ウサイン・ボルトなら行けるかもしれないけど……。僕は部活でテニスをやってるだけの凡人だからなぁ……。人よりは体力あるだろうけど。


 そんなことを思いながら、とぼとぼと高校に向かって歩いて、少したったころだった。

 鼻歌で歌っている「エースを狙え」のサビの部分に差し掛かったとき、僕の目の前に黒く、でかく、長い(世間ではリムジンと呼ばれる)車が止まった。


「さーぶ、すまっしゅ、ぼれー……」


 僕の目の前に止まるってことは、僕に何らかの用事があるってことだよね。

 もしかして……、実は僕はなんとか財閥の御曹司でしたパターン? それとも、社長令嬢が僕に一目惚れをして声をかけてきたパターンですか!?


「君は実にわかりやすいね。……残念ながら、君は御曹司でも社長令嬢に好かれてもいない。変な妄想はやめたまえ」


 リムジンの少し開いた窓の中から冷酷で陰湿っぽそうな感じの声がする。まるで、もう一人の僕みたいな……。

するとリムジンの扉が開いた。降りてきたのは、黒縁眼鏡をかけていて、見覚えがある奴。


「あ、おまえは……和麻(かずま)!? なんでお前がこんなところにいるんだよ!?」


「that's rightだよ。君に覚えてもらえてるとは思わなかったけどね」


 今から長い説明をしよう。こいつがリムジンで降りてきた理由も、どうして僕が驚いているのかも、ボキャブラリーが少ない僕は短くまとめられないからね。

 

 ──神原和麻(かんばらかずま)。祖父が神原グループの会長で、父を警視総監に神原グループの御曹司、おまけに母は僕たちが通う高校の理事長。成績優秀で、いつも静かな屋上で難しそうな本を読んでいる(たまーに僕が読めそうな本も読んでいるけど)。

 決して性格が悪いわけではないと思うのだが、人を寄せ付けない異様な雰囲気を持ち、クラスでも孤高の存在。僕の前の席で、2ヶ月たった今でもクラスメイトと関わろうとしない変わり者だ。

 よし、ちゃんと説明できたぞっ!


 すると、神原和麻が人差し指を偉そうに立てて僕に言った。


「君どっかで見たことあるんだけど、誰だっけ?」


 おいっ! 同じクラスなのに忘れられてる僕って……。そんなに存在感がないのかな……。

 無償に泣きたくなる。


「成瀬岬。同じクラスで和麻の後ろの席に座ってる!」


「なるほど、君が成瀬岬か。見えなかったから覚えていないわけだ。見えていても覚えていたとは言い切れないけどね」


 納得したように神原和麻は腕を組んだ。

こいつは自分が悪いとは思わないのか。和麻の説明にある「決して性格が悪いわけではない」は残念ながら取り消してもらおう。


「ときに、成瀬くん。君は今日寝坊して、焦っている。そうだろ? 僕のリムジンで一緒に学校に行ってやってもいいんだけどね」


 マジで? リムジンに!?

 寝坊していた僕にとって和麻は天からの授けものだ、と言いたいところだが。

 なんかムカつく! もっと普通に喋れないのか。

 でも、和麻の話はそれだけでは終わらなかった。


「しかし、連れていくには条件がある。僕の頼みを一つ聞いて欲しいんだ」


 金持ちの頼み? 御曹司だからどっかのスパイに命を狙われている。だから、代わりに人質になってほしいとか? 僕が人質になっても、庶民丸出しで即ばれると思うんだけど。

 僕の脳内に天秤が浮かび上がる。左には、遅刻してみんなの前で怒られる僕の映像。右にはスパイから逃げている僕の映像がある。


──どっちもいやだ……!──


「僕と一緒に夜の小学校に行ってほしいんだ」


 神原和麻は、僕の耳元でボソッとつぶやくように言う。

 ゾクっとしたのは、耳元で囁かれたからか、その内容に驚いたからなのか。


「えーっと……」


「なに? ま、理由はともかくよろしくね」


「うん。よろしくね……ってちがーう!! 違くないけど、なんで僕が夜の小学校なんかに行かなきゃならないんだよ! お前はロリコンか? かわいい小学生の紙粘土でも盗むのか!?」


 こいつは……まさかのロリータコンプレックス略してロリコンか!?

 マジで本気で小学校に侵入するっていうのか?

 僕が推測するに、和麻はロリコンで小学生の美樹ちゃん(仮名)がお気に入り。でも、高校生が美樹ちゃんに話しかけることなんて出来ないから、せめて紙粘土を盗もうって魂胆だな!


「言っておくが、僕はロリコンじゃない。それに僕は子供は苦手なんだ。本当は

小学校なんか行きたくないんだから…」


 黒縁の眼鏡をあげる仕草をしながらぶつぶつ言う和麻は明らか嫌そうな顔をした。

 じゃあ、どうして? そもそもなんで僕を選んだ?

 僕の中には疑問だらけだ。


「ま、立ち話もなんだし学校で詳しい話をしようじゃないか」


「ところで和麻君、今何時?」


「……fourty-oneだね」


 ふぉーてぃわん。ふぉーてぃーって40だったよな……?


「おいおい!! 過ぎてるじゃん!! リムジンで送るって言ったのは誰だよ!!」


 慌ててリムジンに乗り込む僕と和麻。


「落ち着きたまえ。先生は人間。落ちついて話せばきっとわかってくれるはずだ。岬くんがスパイに追われているところに、僕が助けに入ったから、遅れたって設定でいいね?」


「庶民はスパイに追われないっ!!」


 まったくとんでもない奴だ。この神原和麻という男は。

 でもまんざらでもない僕がどこかにいる。理由はともかく、面白そうじゃないか。夜の小学校なんてに不法侵入なんて。





 閲覧ありがとうございます。

 感想などありましたら、ぜひよろしくお願いします^^

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