小汚い縁結び
私が訳の分からん用語の羅列をマジマジと眺めていると、
「ちなみにそこに書かれてはいないが、わしには人と人との縁を結ぶ力がある。ま、最近はあまり使わんがの」
馬のマスクの下でモグモグと口を動かしているであろう妖怪がそんなことを言った。
「妖怪ではない、『網きり』と呼べ」
「判りました」
「よろしい。牛肉、美味かった。本当に感謝するぞ」
「どうもどうも」
「礼をしたい所だが、何かあるかの?」
「特には無いです。とりあえず満足して頂ければ」
「縁を結んでやっても良い」
私は顔をパソコンから馬へと変えた。
「縁・・・・結び・・・・?」
「ん?」
「男女の恋仲を深めるって言う・・・・・?」
「そうじゃ。さっき説明したろうが」
「すみません、聞いてませんでした。もう一度お願いします」
「面倒くさい。この話が完成してから読め」
「恐縮ですが、貴方がそれを言わなければこの物語は進みません」
「そうじゃった。ならばもう一度」
「お願いします」
網きりは深呼吸した。
「ちなみにそこに書かれてはいないが、わしには人と人との縁を結ぶ力がある。ま、最近はあまり使わんがの」
滅茶苦茶早口で、しかも棒読みでそんな事を言った。
「なんと!是非お願いします!」
折角2回言ってくれたんだから反応くらいせねば。
「む?」
首を傾げる馬。
「私は今好きな女性がいるのです!その方と縁を結んでもらいたい」
「むむむ?」
首を傾げる海老。
逆U字に曲がっているため写真とってブログに載せたい。
「あんたと会った最初の夜に俺が言ったことを思い出せ!」
「・・・・・恐らく」
「恐らく?」
「もしもわしとお前が逆の立場だったら、そんなこと死んでも言わない」
「・・・・」
おい、言語が『現代言葉使い』になってんぞ。
『死んでも言わない』って。
「ということは、覚えてるんだな?」
「うむ、一部始終。貴様が女に溺れ狂人のような行動を取った事は妖怪のわしから見てもハッキリクッキリと分かる」
・・・・・・なんと。
「見苦しい姿を」
「ああ、あれは目に毒じゃった」
「お願いだから少しは気を使ってくれ!」
私は<神>に願った。