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黒
私はムシャクシャとして家に帰った。
あの精神科には相手にされなかったし、
あの爺のには馬鹿にされるもいいところである。
しかし、一つだけ疑問な点があった。
「誰が俺をあの病院(兼職場)に運んだのだ?」
それだけが疑問だった。
「ワシにきまっておるだろう。まったく、無駄な足掻きを」
後ろから聞こえた声は、正しく私を心臓麻痺にさせる程の威力だった
どこかで聞いた、妖怪の声。
後ろを向くとまた今日の様な明日になるに違いない。
「なぁ、あんた」
私は前を向いたまま後ろの化物に呼びかけた。
「なんじゃい。ワシがそんなに恐いか」
どこかで聞いたな、それ。
「あんたの目的は何だ?俺をその鋏で切り裂くのか?」
私は聞いた。
「馬鹿か、オマエ。そんなら昨日のうちにやっとるわ」
その通りだ。
「なら、なんで俺にまとわり着く?」
「黙れ、自意識過剰が」
妖怪は少し声を荒げた。
「貴様にまとわり着くじゃと?勘違いも甚だしい。」
私は何か言い返そうかと思ったが、やめた。
「ワシが見えるのは恐らくこの地域で貴様だけじゃろう、これも何かの縁じゃ」
「な、何だ」
「腹が減った。肉をくれ」