皆で仲良く
彼女は、笑っていた。
恐らく大学構内では見れないような笑みを、浮かべていた。
彼女が日々私に話してくれる悩みなど何一つも無い、
全ての苦悩から救われ、
全ての人間の幸せを浮かべたような、
そんな笑顔だった。
が。
恐らく。
もしもそこに彼女だけが居れば、の話。
単刀直入に言うと、もしも隣の男の顔があんな顔でなければの話。
しかしここで言った『あの顔』とは、『普通の人間』では無かった。
「・・・・・・・」
それは。
恐らく皆の心の中には色んな自分が居るに違いない。
少なくとも、私の中には4人ほど居る。
1「どうした告白すんだろ?さっさと行けよチキンやろう」
2「お前は馬鹿か?目の前には彼女の隣に男が居るだろうが」
3「まぁまぁ焦るなって。あいつらが信号待ってる時に彼女の隣の男に飛び蹴りすれば済むことだ」
4「一番のバッドエンドじゃねぇか。御主人が飛び込むのが一番のグッドエンドだろ」
3「私の思ってることを言ってくれるか。なんてご親切なやつだ」
しかし、全員の頭がどこか狂っているに違いない。
1「何を言ってるんだ。一番頭がおかしいのはお前だろ?」
2「何を言ってるんだ。一番頭がおかしいのはお前だろ?」
3「何を言ってるんだ。一番頭がおかしいのはお前だろ?」
4「何を言ってるんだ。一番頭がおかしいのはお前だろ?」
何故こいつらは私の中に済んでいるんだろう。
せめて仲良く私を慰めてくれ。
1「慰めるにも慰めれねぇナ。だって『馬』に負けたんだからな」
そして、私の足を大通りから北大へ移動させてくれ。
あの馬のマスクを被った男から、できるかぎり距離を置かせてくれ。