丑三時
はたして何回言うのであろう、
私は大学時代に壮絶なる片思いをしていた。
相手の名をここで言ってはプライバシーを侵害していると思われ、名前は伏せておく。
ただ彼女の性格と、彼女が私と同じ医学部に所属していたと言う事だけ言っておこう。
さながら女性とは、個人にもよるが色々な魅力がある。
一つは、その優しさ溢れる性格であらゆる男を一瞬で惚れさせてしまう、
二つは持ち前の美貌で男を悩殺するというものだ。
普通の女性はこの内の一つを使って男を落とすのであろう。
しかし、そんな理を破る女性はこの世に億万といることを知って欲しい。
それが、彼女であった。
持ち前の美貌であらゆる男を一瞬で悩殺し、『もう彼のHPは0だ』『もう拷問の粋だ』と周りから言われんばかりの優しい性格の持ち主という最強最大のスキルを持っていた。
彼女は本当に老若男女構わず優しかったため、今まで女に縁が無かった愚かな男はそれが『自分に惚れている』などとなんとも愚かしい思考を持ってしまうのである。
否、私である。
今まで勉強にしか脳が無く、
街へ出る事も忘れ、
勉学の海に揺ら揺ら揺れることしか出来ない私にとって、
彼女はもはや『全自動男悩殺機』にしか思えなかった。
これは私だけでは無い筈。
そう思いたい。
そう思うしかない。
そんな私は彼女を積極的に食事に誘うも、いつも『ごめんね、弟にご飯作らなきゃ』と言ってはそそくさと家に帰ってしまう彼女の弟が羨ましくてしょうがなかった。
私は家に帰ってあらゆる案を考えた。
『休日に彼女を食事に誘おう』ということも考えたが、彼女が『弟にご飯を(以下略)』などと言っている時点で彼女はその弟やらの世話に忙しいのだろう。
『いっそ私が「私はあなたと生き別れた弟なんです」と言えば良いのではないか?』
この発想が浮かんだ瞬間に私はこの計画を実行すると同時に私がここまで築き上げてきた勉学の結晶とあらゆる努力の結晶、権利を失くすであろうと思われた。
否、この発想が浮かんだ瞬間に「何故俺は北大に入れたんだ?」と一つの疑問が浮かんだ。
『いっそ彼女に告白すれば』
結果的にこれがベストな訳だが、もしも拒否された場合私は一生大学や社会に出られないだろう、つか自殺するかもという危機感を抱いてしまいそうになったが、私はこのままズルズル足を引きずってと彼女に付いていくならば、いっそここでガツンと決めることも正論だと思った。
フラれれば、今までの私を忘れ、また勉学に励んで自分を鍛えなおそう、
もしもOKが出されれば、私は正に後の大学生活を楽しんでは楽しみ、楽しんだ挙句悦楽死するだろうと思われた。
私は覚悟を決めて、彼女の元へと向かった。