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ダンジョンに魅せられて ~ 計測不能男の予測不能な人生 ~  作者: 咲良喜玖
調査特務課課長 失踪事件

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第7話 失踪事件の幕切れと、新たな事件の幕開け

 「カリン。今、何層だ?」

 「27層」

 「デバイス持ってるか」

 「持ってる。仙台で潜ってたから」

 「よし。経過時間は?」

 「2時間」

 「2時間で27層か。俺たち、ぶっ飛ばしたな」


 異常な進軍速度で二人はダンジョン内を激走していた。

 縦並びの布陣で、アルトが前。後ろが香凛である。


 「カリン。前から来る」

 「了解」


 モンスターランクA【ルトン】

 アリクイのような姿をしているモンスター。 

 舌を使ってアリを食べるのがアリクイだが、ルトンはその長い舌を使って、捕食対象の人間を拘束する。

 しかし、その舌は拘束するだけで終わり、武器ではない。

 ルトンの武器は長い爪。

 レイピアのように細いのに、丈夫で鋭い切れ味を持つ。

 こちら側が並の武具で対抗してしまうとあっさりと破壊されてしまう。  

 


 香凛は力を行使した。

 襲いかかってくるルトンの群れの動きを同時に止める。


 「ぐっ。さすがにA十体の完全停止は・・・無理かも。舌までは止められない! イメージを同時に投射できない」


 S級ハンターの実力を持つ香凛でも、A十体の動きを封鎖するのは至難の業だった。

 

 「うわっ。キモイ!!!」


 ルトンの体の動きは止めたが、舌は動く。

 襲い掛かる十本の舌が二人に伸びてくる。


 「アルト。お願い」

 「わかってる! 足止めサンキュ。赤電(せきでん)


 アルトの力はエレクトロキネシス。

 雷の力を有するギフターズだ。


 扱える色でランクが分かるエレクトロキネシスは、基準が明確。

 黄電(こうでん)がC。

 青電(せいでん)がB。

 赤電(せきでん)がA。

 紫電(しでん)がS。

 アルトは紫まで扱えるのでS級ハンターである。


 「焼き尽くせ!」

 

 向かってくる舌先を焼いただけでは止まらない。

 赤い雷は止まる事を知らず、先から根元まで、焼き切って、最後にはルトンの体の中をも焼いた。

 肉体の内部を完全に焼いたのだろう。

 プシューと音を立てて、ルトンが絶命した。


 「アルト。なんか変」

 「ん? 変? いや倒したぞ」


 後ろからの掛け声に反応してアルトが振り向く。


 「違う。前! 前!」 

 

 モンスターじゃなくて、前を見てと、香凛が指を差していた。

 アルトがもう一度前を見ると・・・。


 「なんだ? 歪んでる!?」


 ダンジョン内部が歪み始めた。

 時空が捻じれているように感じる二人は、目の前がグニャグニャに映り始めた。


 「くっ。これは・・・先に進むどころじゃ」

 「アルト! 地面も!? あ・・・」

 「カリン。大丈夫か? おい。カリン。返事しろ」


 二人は白い光に包まれた。



 ◇



 「だはっ。何が起こったんだ」


 眩い光から、通常の世界の色を取り戻したアルト。

 目の前の光景に驚く。


 「ここは洞窟じゃねえ。どこだ・・・いや。どこだじゃない。ここは」


 同じタイミングで香凛も気付く。


 「ダンジョンの近くだよね。ここって・・・」


 強制退場に追い込まれた経験なんてない。

 二人は顔を見合わせた。


 「カリン。何が起こってる?」

 「わ、わかんないよ。いきなり元に戻るって、経験したことないもん」

 「俺もだ。ダンジョンで初の・・・いや待てよ。ダンジョンが消える際の・・・あれ。なんだっけ。昔ハルが教えてくれた奴だ」


 アルトの話で香凛が思い出した。


 「あれじゃない。バリトンさんの手記の話じゃ」

 「それだ。ダンジョン攻略をした人の話で、その当時にダンジョン内にいた人が、俺たちと同じ経験をしてたんだ」


 アルトと香凛は、春斗の話を思い出した。


 

 ―――――


 景色がグルグル回っていく。

 4階層にいた自分は驚いた。

 気持ち悪いと目を閉じて、開いた時には。

 そこにあったはずのダンジョンの入口の場所に立っていたんだ。

 そして周りには、人がちらほらといた。

 皆、自分と同時期にダンジョンにいた人らしいのだが。

 皆はダンジョンにいた事を忘れているらしい。

 自分だけは、その時の記憶がある。

 それはなぜだ。

 自分と彼らの違いは何だろうか。


 byシュトレーツ


 ―――――


 「・・・・だっけ?」

 「そんな感じだ。ハルが言っていたのはな」


 バリトンの手記の中にあったシュトレーツの言っていた言葉が正しいすれば。

 自分たちもいきなりダンジョンの入り口に戻ったという事。

 ならば。


 「待てよ、ということはだ。まさか」

 

 頭が回り始めたアルトは、香凛の顔を見る。

 すると、彼女もハッとした表情になっていて、気付いた。


 「春君がクリアしたってことだよね。じゃあ、春君がここにいる!」


 新ダンジョンだったので、ここに入れるのは政府の者のみとなっていたはず。

 他のハンターたちがいない状況ならば、今、中にいたのは春斗のみ。

 だから二人は、春斗がクリアしたと確信した。


 「カリン。探すぞ。いるはずだ」

 「うん」


 辺りにいるはずだと、二人が探すこと五分。

 ダンジョンがあった場所からやや北西の位置に、人が倒れていた。


 「あれは、ハル!」

 「春君!!!」

 

 大事な人を、二人が見間違えるわけがなかった。

 


 ◇


 

 「ハル!」「春君」


 アルトが地面に倒れていた春斗を抱き抱えて、香凛は春斗の顔に手を置いた。

 ぬくもりはあるから生きている。

 自分の手と温度を同じだから、通常の体温だ。


 「どこか悪い所はないかな。熱はないね。アルト。心臓の方はどう? 悪くなってない?」

 

 アルトが春斗の胸の鼓動を聞く。


 「ああ。大丈夫。普通だ」

 「よ。よかったぁ。春君生きてたぁ」


 春斗が無事だと分かると、香凛は涙を流した。

 両眼からぼたぼたと零れ落ちていく。


 「でも、カリン。変だぞ。起きねえ」

 「え?」

 「ほら、頬を軽く叩いても反応がない」

 「ど。どうして」

 「おい。ハル。起きろよ。いつもみたいにさ。軽い微笑みをしてくれよ。無表情からのさ。おい! おい!!」


 春斗に負担をかけないために、頭に揺さぶらずに起こそうとして、アルトは呼びかけに必死になった。


 「・・・・」


 しかし春斗に反応がない。

 心臓は動いても、体が動かなかった。


 「おい。これってまさかダンジョン喪失病か。ハルの反応の無さからいってさ」

 「違うと思うよ。それって目とかの五感が働いている雰囲気があっても、何も反応しない病気の事でしょ。昔見た事ある。でも今の春君って眠っているみたいに目を瞑っているだけに見えるよ」

 「ん。たしかに。寝ているだけにも・・・見えなくもないか・・・それにこれは」


 春斗の浅かった呼吸が安定していく。

 アルトは春斗が覚醒する雰囲気を感じた。


 「起きるか。おいカリン。ハルが起きるかもしれん」

 「え。ほんと!」


 春斗を抱えていたアルトが、そっと地面に置いた。

 丁寧に慎重に。

 大切なものを運ぶかのように。


 「くっ・・・ん!?」

 「ハル」「春君」


 頭を押さえながら春斗が起きた。 


 「いっ・・・なにが・・・ここはいったい」


 春斗の前に二人の顔が並ぶ。

 笑顔と涙が混じった二人の顔は、今は夜なのに太陽に照らされたように明るい。

 春斗という二人にとっての太陽がここにいるからだ。

 

 「春君、体大丈夫」「ハル。俺たちに心配かけんなよ。ちくしょー」


 しかし、次の春斗の言葉で、二人の顔が暗くなる。

 暗黒の時代に突入した。


 「あなたたちは誰ですか?」

 「「へ?」」

 「そして、自分は誰でしょう・・・それにここはどこですかね? あれ? 思い出せない」

 「「ええええ!?!!??」」

 

 調査特務課課長失踪事件は、春斗の無事を確認して終わり、春斗の記憶が無くなったことで始まりを告げた。

 失った大切なものを取り戻し、そしてそれを守り抜く。

 春斗の奇妙な物語が今始まる。

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