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飛行機を見ると、親父を思い出すのは俺の嫌な習性だ。
良一は、飛行機に関連する職業だ。それ以上の詳しいことは、怜生は知らない。
体育館裏の、階段になったこの場所。隠れ家の椅子としては最高だった。
が、欠点は空が見えることだ。
隠れ家だが、吹きっ曝しだ。
こんな、ところによく綾香が来るなぁ。と、怜生は半信半疑だ。
空を見る分には良いし、景色も悪くはない。ここ仙台は風が強いが。
飛行機を見ると良一を思いだす。だが…思い出すきっかけなのかもしれない。と、半ば諦めている。
が、今は見たくなかった。
改めて、綾香を見る。思ったことを口にする怜生。
「綾香先輩、どうして俺に構うんですか? 俺の母が好きですか?」
そして、綾香の眼を見つめた。
風に揺れ髪をなびかせながら、綾香は答える。
「真梨さん好きだよ。すっごく優しい看護師さんだよ。アカツキ病院で、私は一番好きなスタッフさんだなぁ。」
もっと、話したそうな目で怜生を見る、綾香。
怜生は、促すか…遮るか迷う…
綾香に対するイジワルな感情…
「綾香先輩、嬉しいっす。」屈託ない笑みで、怜生は答えた。
自ずと、綾香も微笑む。
「うん、真梨さん大好き。 息子さんのレオ君も気になる…」
突然の告白…「綾香先輩?」怜生は、困る。
「大好きな真梨さんと、瓜二つの同世代の男の子がいるんだよ。意識せずには…いれないよ…」
咄嗟に、怜生は答える。
「俺と、母親は別人格ですよ?」たしなめる様に諭す、怜生。
「でも、親子でしょ?」
怜生の目を見据え、怜生の言葉を否定するかのように言う。
怜生は、言葉を失い…伏し目がちに…
綾香は、それを察して…
怜生の手を握った…
手から伝わる、綾香のぬくもり…
綾香の手は、冷たいが別の温かさを感じた。
綾香の手を握り返すことを、返事とした。怜生。