17
初めはわからなかったが…母親が女である事は、痛みだった。
怜生にとって、痛みだった。
怜生は、闇に痛みを伴う思春期の始まりだった。
“このオッサンがOか?”
綾香に見せられた写真の男が、やけに引っかかる。
親父の意味不明…意味深な言葉…
この男のコトなのだろうか…
ZIPPOの文字…
ぐるぐると、心に渦が巻く。
目の前に、綾香がいることも忘れる…
「イタっ。」
また、叩かれた怜生。
綾香は、自分の存在を忘れさせてくれるような女ではなさそうだ。
「レオ君、あたしのこと見えてる?」覗き込むように怜生の瞳を見る綾香。
「見えてませんでした。」憮然とした態度になる怜生。
「先輩に取る態度ですか?」腰に両手をあて、先頭の前習えの様にし、諭す綾香。
「サーセン…イタっ」
「反省の色が見えませんね」お姉さんぶって答える綾香。綾香は手が早いようだ。
「そんなに、叩かないでください」乞うように言う。
「痛くしたつもりはないけど?」あっけらかんと言葉を放つ。
「力は、そうですね。 でも骨、痛いです。」
「骨? ごめん。気付かなかった。」本当に気付いてなかったようだ。
綾香は、そのことを怜生に平謝りした。
怜生は、綾香がなぜか可愛く見えた。