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見慣れた自分の顔。
怜生は、綾香の意図がわからない。
「なんすか? 綾香先輩。 俺の顔なんもついてないっすよ? 」
コンパクトを、持ったまま綾香を見る。
「えー、わかんないの?」微笑しながら言う。
「なんのことっすか?」顔が少し赤らむ。
「その顔よぉ。 怜生ママの顔じゃない?」ぶりっこな声で、ほくそ笑む。
お母さんの…顔? そんなに似てるか?
疑問を抱きつつ、まじまじとコンパクトを覗き込む怜生。
「似てるでしょ?」得意げな綾香。
…そんなに似てるか?
俺、全然気づかなかった…
怜生は、胸の中に痛みにも似た、感覚が湧き上がっているのを感じた。