第7話 魔王軍幹部ザラグ戦
幹部ザラグの槍が広間を薙ぎ払う。
石畳が砕け、破片が弾丸のように飛び散り、兵士たちが盾を構えて下がった。
「おいおい……冗談だろ!?」
リオは剣を構えながら叫ぶ。
顔色は蒼白だ。
私は慌てて背中を押す。
「大丈夫!気合いでいける!」
「そんな魔法はねえ!」
ザラグは口の奥で笑った。
「偽りの勇者、女神。主はすべて知っている。ここでその命を終えろ」
槍が床に突き立ち、衝撃で兵が吹き飛ぶ。
リオが歯を食いしばって飛び出した。
「代理でも勇者って呼ばれてんだ!やるしかねえだろ!」
「そうそう!勇者は見た目とノリが大事!」
「ふざけてる場合か!」
剣と槍がぶつかる。
金属音が広間に響き、火花が散る。
リオは全力で受け止めるが、重さに押されて膝がきしむ。
「ぐっ……重い!」
「リオ、数秒だけ耐えて!その後は私がサポートする!」
「数秒で死ぬんだが!」
私は掌に光を集め、彼の足元に送り込んだ。
リオの体が一瞬だけ軽くなり、踏み込みが鋭くなる。
剣先がザラグの槍をわずかに弾き、肩を掠めた。
「やった!当たった!」
「浅い!浅すぎる!」
ザラグは動じず、逆に赤い魔力を槍にまとわせた。
「なるほど……少しはやる。しかしその程度で主の望みを遮れると思うな」
「うるさい!あんたの槍より私たちの根性の方が強い!」
「根性で勝てたら苦労しねえ!」
リオが必死に突っ込みを入れる。
兵士の一人が勇気を振り絞って突撃するが、
ザラグの薙ぎ払いで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
うめき声が響き、兵たちは完全に怯んだ。
「俺たちじゃ止められん……!」
「勇者様……!」
兵士の視線が一斉にリオへ集まる。
彼は顔を引きつらせながらも、剣を握り直して立ち上がった。
「……やめろよ、そういう目をするな。俺はただの村人なんだぞ」
「今は勇者!」
私は叫ぶ。
「だってそう名乗られてるんだから!」
「代理勇者だろ!」
「細かいことは気にしない!」
ザラグが再び槍を構える。
「無駄なことを……いま、お前たち全員楽にしてやる!」
リオが身を固めるより早く、突きが鋭く迫る。
剣で受けるが衝撃で後退し、腕が震えた。
「くそっ、腕がもげる!」
「大丈夫、ギリギリで繋がってる!」
「いちいち、言わなくていい!」
リオが半泣きで怒鳴る。
ザラグは笑いながら連撃を繰り出し、槍の突きが雨のように降る。
リオは必死に剣で受け流すが、肩や腕に浅い傷が増えていく。
「まだ立つか。愚かだな」
「愚かでもいい!逃げるよりマシだ!」
リオが叫ぶと兵士の士気がわずかに戻る。
「勇者様……!」
「やっぱり勇者だ!」
声が上がるたび、リオの顔がますます引きつる。
「やめろおお!期待すんな!」
それでも彼は剣を振るう。
私は再び奇跡を発動し、彼の動きを強化した。
「いける!今度こそ深く刺さる!」
「よし、頼むぞ奇跡!」
渾身の突きがザラグの腹部に届くが、甲冑が火花を散らすだけだった。
「かっってぇ……!」
「あんなの反則だよね!」
「反則の塊だ!」
ザラグは槍を振り抜き、リオを大きく吹き飛ばす。
彼は床を転がりながらも立ち上がる。
「まだだ……俺は勇者なんだろ!」
「そう!気分は勇者!雰囲気も勇者!」
「全部薄っぺらい!」
血を吐きながらもリオは再び槍に挑む。
彼の足取りは重いが、それでも剣は前へ進む。
ザラグが踏み込み、私は反射的に叫んだ。
「リオ、避けて!」
「無理だ!足がついてこねえ!」
槍が迫る。
私は焦って光を重ねる。
リオの体が一瞬だけ軽くなり、かろうじて横へ飛ぶ。
刃が髪を掠め、床に深い亀裂を刻んだ。
「ひいいい!死ぬかと思った!」
「死んでないから大丈夫!」
「ポジティブすぎる!」
兵士たちは目を見開き、震えながらも声を上げる。
「さすがは勇者だ!」
「この方なら!」
リオは絶望的な顔をしながらも剣を振り上げる。
「お前ら俺を殺す気だろ!?」
ザラグはなおも迫る。
リオの剣が辛うじて槍を弾き、肩に食い込む。
「うおおおお!」
ザラグの巨体が僅かに揺れた。
兵士たちが歓声を上げる。
リオは肩で息をしながらも笑った。
「今だ、女神!行け!」
私はうなずき、封印の箱へ走る。
だが槍が閃き、私を狙った。
「女神!」
リオが飛び込み、槍を受け止めて吹き飛ぶ。
床に叩きつけられ、血を吐きながらも立ち上がる。
「行け!箱を取れ!」
「でも――!」
「俺が勇者なんだろ!?なら勇者は女神を守る!」
彼は足を震わせながらも一歩前へ出る。
「来いよ化け物!俺は……村人だが!今は勇者だ!」
剣と槍が激突し、轟音が広間を震わせる。
その瞬間、箱が強く光を放ち、封印の棘が沈黙した。
私は全力で走り出し、両手で箱へ触れた――。
読んでくださって感謝です!
「おもしろかった!」「続き読みたい!」「先が気になる~!」
と思ったら、下の★★★★★をぽちっとしていただけると嬉しいです。
面白ければ星5つ、イマイチなら星1つでも押してもらえれば嬉しいです。
ブクマしてくれると作者が小躍りします!