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第5話 勇者の試練

耳の奥で響いた警告は、一瞬で消えた。


(……なにこれ。神界の監視? にしては未登録って……)


疑問を抱えつつも王城へ進み、私たちは兵士に導かれて広間に通された。


玉座の脇に立つ王女は冷ややかな瞳でこちらを見据え、

「……あなたが勇者?」と声を放った。


その視線に気圧され、リオは肩をすくめて曖昧に答える。


「えっと……まぁ、その……」

「歯切れが悪いのね」


王女は眉をひそめる。

私は慌てて前へ出て叫んだ。


「はい! こちらが勇者さまでーす! 私はサポート役の女神です!」

「……賑やかな女神なのね」

「神界一のムードメーカーです!」

「誇るな」


リオが小声で突っ込む。

王女は兵士に顎をしゃくり、「力を確かめさせてもらいましょう」と告げた。


重い鎖を引かれて現れたのは狼型の魔物。

赤い瞳をぎらつかせ、床を爪で削りながら牙を剥く。


「おいおい……ここで戦えってのか?」

リオが動揺する。


「当然でしょう。勇者ならばこの程度は容易いはずです」


王女の声音は冷徹で、兵士たちの目も期待と試しの色でいっぱいだ。


リオは剣を構えながら小声で毒づく。


「俺はただの村人だぞ!?」

「大丈夫、大丈夫! 勇者代理なんだから!」

「代理って決めたの、お前だろ!」


鎖が解かれると同時に魔物が飛びかかる。

リオは必死にかわすが体勢は危うい。


私は即座にウィンドウを呼び出す。


【女神ポイント:93/100】


(……少しなら支援できる、でもまた“あれ”が出たら……)


迷いながらも指先に光を込めてリオの足元へ落とした。


【支援型奇跡:加速】


「……体が軽い?」


リオが驚き、剣を振り抜いて魔物の肩をかすめた。

赤い血が飛び散ると同時に耳の奥で再び響く。


【未登録の干渉を検知】


背筋に冷たいものが走る。

(また出た……誰が監視してるの? 調整局じゃないのに……)


王女の瞳が細くなり、「今、何をしたの?」と追及してきた。


「えっ!? 応援! “がんばれー”って気持ちです!」

「応援で速くなるの?」

「なります! 気合い大事です!」

「適当言うな!」


リオの怒鳴り声が飛ぶ。

魔物は怒り狂って跳ねかかり、リオは剣で受け止めるが肩を裂かれて血が滲んだ。


兵士たちは息をのむが王女は冷ややかな目で見守るだけだ。


警告がまた点滅する。


【未登録の干渉を検知】


(……しつこい、本当に何者なの……!)


リオは必死に踏ん張るが剣筋は乱れている。

狼の牙が喉元を狙い、リオは必死に剣を横に振って受け止める。


火花が散り、押し込まれて膝をつきそうになる。


私は拳を握りしめ、支援か沈黙かを迷う。

奇跡を使えば確実に“誰か”に知られる、けれど使わなければリオは死ぬ。


王女の声が広間に響く。


「勇者。ここで証明してみせなさい」


リオは「こんなところで死んでたまるか!」と叫びながらも踏みとどまり、渾身の力で剣を振るう。


しかし攻撃は浅く、魔物の頬を切っただけ。

逆に反撃の爪がリオの胸元を狙い、兵士が思わず声を上げる。


私は思わず一歩前に出たが踏みとどまる。

再び耳をつんざくような警告音。


【未登録の干渉を検知】


(もう限界……放っておけない!)


私は魔力を指先に集め、再び光を編み出す。

だが同時に視界に赤い文字が乱舞する。


誰かが確実にこちらを監視している。

もし本当に神界の規制を外れているのなら――介入の代償は計り知れない。


それでもリオの悲鳴が耳を打ち、血の臭いが鼻を刺す。

私の足は勝手に前へ出た。


魔物の牙がリオに迫る。

兵士たちは武器に手をかけるが王女の冷たい声が制止する。


「手を出すな。勇者の力を見極めるのです」


リオは「ふざけんな!」と叫び、必死に剣を突き上げる。


その刹那、私は抑えきれず奇跡を発動した。


眩い閃光が広間を駆け抜け、リオの剣に力が宿る。

狼の動きが一瞬鈍り、リオは叫びながら斬り上げた。


血飛沫が舞い、魔物が苦悶の声を上げる。


しかし同時に警告音はこれまで以上に激しく鳴り響いた。

【未登録の干渉を検知】

【強制記録を開始】


赤い文字が視界を覆い尽くす。


(……強制記録!? 誰に!?)


私は必死に制御しようとするが、まるで意思を持つように記録が刻まれていく。


リオは肩で息をしながら私に叫ぶ。


「おい女神! 今のは絶対お前のせいだろ!」

「ちょっとだけ! ほんのちょっと支援しただけ!」

「嘘つけ! 剣が光ってただろ!」


王女は鋭い瞳でこちらを見据え、冷ややかに言葉を投げる。


「勇者の力……少しは見せられたようね。けれど、今の光……あなた、一体何をしたの?」


兵士たちもざわめく。

私は笑顔を取り繕いながら必死に誤魔化す。


「応援です! 本当に応援! 愛と希望を込めたエールです!」

「誰が信じるか!」


リオが怒鳴る。

だが王女は目を細めたまま沈黙し、ただ私を観察していた。

王女は小さく息を吐き、決断を告げた。

「ならば勇者。次は正式な試練を受けてもらう。王都郊外の古代ダンジョン――“封印の祠”へ向かいなさい」


「ダンジョン!?」私とリオが同時に叫んだ。

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