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第2話 勇者の代わりに女神降臨

――ドシャァァァァン!!


盛大な音とともに、私は顔面から地面にめり込んでいた。

鼻に土。口の中ジャリジャリ。

……え、神界から地上に派遣されるときって、もうちょっとこう、優雅に降臨できるはずじゃない?

虹色の光とか、花びらが舞うとか、そういう演出があってもよくない?


「ぶはっ! ごふっ! ちょ、ちょっと! 鼻に土入ったんですけど! 女神にあるまじき降臨じゃない!」


慌てて立ち上がり、土を払う。

視界いっぱいに広がったのは、青い空と緑の草原。

柔らかな風が頬をなでていく。雲は白く、鳥が遠くで鳴いている。


(うわ、ほんとに色がある……神々が言ってた通りだ。神界は全部まっ白だったもんね。いや、あっちも荘厳でいいんだけど、こう……味気ないのよ)


私は深呼吸をした。胸いっぱいに広がる空気が美味しい。

地上って、思ってたより居心地がいいかもしれない。


「てかここどこよ!いつも勇者を降臨させる時は、街の中とかじゃない、なんで私だけこんな何もない道端に送るのよ!」


――その瞬間、耳の奥でピコンと電子音が鳴った。


「え、なに?」


視界の端に謎のウィンドウがふわりと浮かぶ。

薄い光の文字が、勝手に流れ出す。


【派遣神識別:小規模奇跡担当女神―雑用女神】

【女神ポイント:100/100】

【奇跡使用ごとにポイント消費】

【残量ゼロで資格剥奪(人間化)】


「ああ、はいはい。神界の鬼畜システムね。」


このままこの場にいても仕方がないと思い情報を得る為に街か村を探す事にした。

ため息をつき、草原を一歩踏み出したそのとき――


「グオォォォォォ!!」


考え込む間もなく、茂みが大きく揺れた。

次の瞬間、牙をむいた巨大なイノシシが飛び出してくる。

体高は二メートルをゆうに超え、背中から黒い瘴気を立ち上らせていた。


「うわああ!? もう魔物!? チュートリアルもなし!? 地上治安悪すぎ!!」


迫る怪物に、私は反射的に右手を突き出した。


「奇跡、発動ォ!!」


パァァァァァァ――!


一瞬で視界が真っ白に染まる。

光柱が落ち、爆風が走り、轟音が草原を揺らした。


次に見た光景は、ぽっかりと空いたクレーターと、その中心で蒸発していたイノシシ。

草は焼け焦げ、土はガラスのように固まっていた。


私は両手を震わせながら、呆然とつぶやいた。


「…………え、何この威力、ちょっと待って。私、今、世界救済どころか地形破壊してない?」


耳の奥で再びピコンと音が鳴る。

半透明の板が浮かび、赤い数字が強調された。


《女神ポイント:95/100》


「うわぁ!? たった一発で五も消費!? あと十九発で私ただの人間じゃん!? 燃費悪すぎ! ポイント貯めるシステムとか無いの!?」


私は頭を抱えた。

神界で「雑用係」とか馬鹿にされてたけど、実際の火力はチート級。

だけど、それを撃つたびに人間に近づく。

つまり、最弱雑用女神にして最強火力、でもポイント制限ありというわけだ。


(うわー、笑えない……。こんなのでどうやって魔王を倒すのよ、倒す前に人間になっちゃうやつじゃない)


「お、おい! 今の光、なんだ!?」

「え、ええ!? 魔物が……消えた……?」


気がつけば、背後から声がした。

畑仕事をしていたらしい村人たちが、農具を手に震えている。

そして一人が、恐る恐る私を指さした。


「あ、あんた……救世主さま、なのか?」


「え?」


「だって、空から落ちてきたかと思ったら、魔物を指さしたら……蒸発させたじゃないか!」

「魔王が現れた時、救世主さまがご降臨なされるって噂は本当だったのか……本当に救世主さまが……!」


ざわざわと人垣ができ、次第に大きな声が上がっていく。


「救世主さまだ!」

「女神さまが地上に降りたぞ!」

「これで助かる!」


(……え、うそでしょ? さっき私、ただクレーター作っただけだよ? 魔物は消えたけど、地形も半壊したよ?)


私は乾いた笑みを浮かべながら、必死で言い訳を探した。

だが村人たちの目はもう完全に「救世主」を見つめていた。


「ちょ、ちょっと待って! 誤解です! 私は救世主とかじゃなくて――」


ピコン。


【注意:派遣神は救世主として振る舞うこと】

【拒否行為はポイント減少対象】


(……うわ、逃げ道すらない。神界、鬼畜)


私は渋々、両手を広げて微笑んだ。

――女神スマイル(自称)。


「ええ、そうよ。勇者はいないけど……雑用女神の私レミルが、世界を救ってあげます!」


草原に歓声が響いた。

けれど私の胸の中では、冷たい汗が止まらなかった。


(ヤバい。これ、完全に詰んでるやつじゃん……!)

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