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異世界恋愛+α(短編)

結婚してそろそろ10年、毎朝妻を見るたび「今日も昨日より嫁が可愛い」みたいな新婚気分で仕事に行く…ラブ

作者: いのりん

ハイテンションプリーズ!(注意)

・R15推奨作品

・ちょっとだけ「お・と・な・む・け」なネタあり

・Xやpixivで見た素敵な主婦・夫婦ネタも多数使用

・のみならず昔読者さまから感想欄に頂いた話まで…

「んも〜!」



 最近、一日一回はこの言葉をきく気がする。


「何で今日雑巾使うって朝いうのよー!?」


 おおー、今日はそうきたかぁ。


 息子のやらかしは本当にバリエーションが豊かだ。

 完全に俺の血だな、かたじけない。


 前日は

「このプリント三日前のやつじゃない!」


 その前は

「今日体操服いるのぉ?!」


 そのたんびに、んも〜。


 言いながら全部フォローする妻、本当に凄い。

 そして、表情豊かで、凄い可愛い。

 見ていて全然飽きない。


 信じられるかい、この女性、中学の頃は「リアル惣流アスカ」とか言われていたんだぜ?

 本当に丸くなったものだと思う、色々なところが。


 そろそろ結婚して10年なのに、毎朝妻を見るたび「今日も昨日より嫁が可愛い」みたいな新婚気分で仕事に行く…ラブ。


 よーし、今日も愛する家族のために、パパ頑張っちゃうぞー。






 パンを咥えながら慌てて移動する。


 いっけなーい、地獄地獄!


 私、限界社畜の36歳。どこにでもいる普通のパパなんだけど、最近急に仕事がデスマーチになっちゃったの⭐︎

 昼食もゆっくり食べられず、帰りも大分遅くなっちゃうくらいには忙しくって、今度の検診結果はどーなっちゃうの〜!?


 なぜこんな状況になっているかと言うと、ミューズが展開を決めるダイスで雑にやらかした結果、地震でできた時空の亀裂からゾンビが大量発生してエルフの里の⭐︎を呪いで★に変えようとしてくるから、かつて死神の力を持ちつつスタンドを出してSAOの世界に殴り込みに行った経験を持つ俺に白羽の矢がたったらしい(比喩表現)。うーむ、カオス。


 ふざけんな真面目に仕事しろ?

 マリカする時くらい真剣にやっとるわい!

 これ、会社の命運を左右するプロジェクトやぞ!






 専業主婦の妻の分まで、じゃんじゃんバリバリ稼いでくるぞい。


 そう思い頑張って実績残して、出世しまくった結果がこれだよ。(自慢臭くてごめん!でも超忙しい!)

 そんなこんなで、現在はクソデカ案件を任されて2ヶ月の短期出張の真っ最中である。


 

 

 一方で家事育児は完全に妻に任せて申しわけねぇ…


 八歳と六歳のちびっ子モンスター達の面倒を見ながら2ヶ月も一人で家庭を回すのは、きっと本当に孤独で大変なミッションだからな……そうだ、今晩にでも可愛い妻に労いと愛のメッセージでも送っておこう。



 でもまあ、

『お宅のご家庭最近どうですか?』とか聞かれたら、『我が家はいい感じです』って答えてあげるが世の情けなくらいには円満な方だと思う。


「亭主元気で留守がいい」なんて言葉もあるしね!



 俺の人生いい感じー。『白い結婚』とは縁遠いぜ!

 なーんてニャ、ガハハ。




 そんなことを思いながら社用車で移動していると、丁度ラジオから夫婦仲に関する話題が流れてきた。



『最近、夫の帰りが遅くなりました。子供達と川の字で寝ていることもありなかなかそんなムードにもならならず、しかも旦那の出張がきまって』



 寂しい思いをしている女性からのお手紙のようだ。なんか、妻の境遇と同じで身に覚えのある内容……



『それで、もう夫に女として見てはもらえないのかなーって。』



 なんなことはない!

 そんなことはないぞっ!

 君は素敵な女性だ!


『で、子供が学校に行った時に、その日は気晴しにオシャレして外出したんです。普段は家事もあるし紛失予防に結婚指輪は外していました。そしたら、奥さん今独身?って声をかけられて……』


 まさか…



『亭主元気で留守がいいとは言いますが、知らぬは亭主ばかりなりって事態になっちゃんたんですよ。こんな私をどう思いますか、恋愛マスターのサトシママさん』


 ギエピー?!

 なんか急に不安になってきたー!?




 土曜日の午後。私は子供達とリビングにいた。


 優しい娘に活発な息子、二人の子供はとっても可愛い。

 けれど、出張で夫がいない日々は寂しい。子供がいない間は家事に追われ、子供がいるときはお世話、意識しないと『大人と話さない日』が何日も続き、孤独感が募る。


 本当は夫に電話でもすればいいのかもしれない。でも激務で疲労しているであろう夫の休息時間を奪うようで、それも気がひける。


「おかあさん、悲しいお顔をしてるね。もしかしてお膝いたいの?ちょっと黒いのケガ?」


 ソファの上で、浮かない顔で三角座りをしている私が気になったのか、下の娘が話しかけてくる。きっと夫の血ね、ありがとう。


 ううん

 ケガじゃないの


 この膝は

 ただの

 くーろーずーみっ



 そう言って笑うと、娘は首を傾げながら人形遊びに戻っていった。上手く誤魔化せたかしら?



 息子の方をみると、妖精や精霊等の図鑑を片手に男児の夢と情熱を画用紙にぶつけて、伝説の武具を大量生産し、リビングの壁を「伝説の武器屋」にしていた。


 彼は、魔神(夫)と忍者(私)のアウトブリード血統に恥じぬ、とってもわんぱく公太郎だ。



 結婚雑誌デュクシの『子供がデキたらもう出来ない!? 一度は一緒に行っておきたいコミケと、絶対思い出に残るコスプレおすけべ特集』を参考に盛り上がった過日を思い出す。

 自然ともう少し、笑みが深まった。



 しかし夫の『ママになっちゃえー。』

 で本当にママになるとは思わなかったわ。

 ふしだらな先生ですまない……

 





 そのまま伝説の武器達を眺めていると、ふと子供の手の届かない棚の上にある結婚指輪が目に入った。



 笑顔が凍る。


 普段は家事もあるし、紛失予防に外して目につくところに飾っているそれ。 


 つけるのは、結婚記念品のみ。

 七夕みたいに毎年一度、子供を預けて二人でデートする特別な日にだけ嵌める、二人の愛の証。


 丁度、二週間後の今頃は夫が帰ってきて、その翌日が結婚記念日だ。例年であれば、今頃からすでにウキウキワクワクしているそのイベント。


 しかし、夫に伝えられていない秘め事がある今の私は、果たして笑ってこの指輪を嵌めるに相応しい女なのだろうか……


 いや、卑怯な物言いはやめましょう。正解は『相応しくない』だ。


 いけないと分かっていながら、あの日誘惑に負けてしまって……しかも暫くの間ズルズル続けてしまっていた。


 浅はかな愚行のツケ、自分が本当に情けないわ。出来た夫を裏切ることをしてしまった自分が恥ずかしい。


 真実を話せば夫はきっと私に失望するだろう。もしかしたら、隠しておいた方がお互いにとって幸せになのかもしれない。


 そんな自分に都合の良い囁きが聞こえる。でもそんなズル、おちゃらけているようで鋭い夫には、いつか必ずバレることも分かっている。


 何よりこれ以上、過ちを重ねるわけにはいかない。結婚記念日に白状し、今後のことを話しあうしかない……







 出張が終わり、今日は結婚記念日だ。


 子供達を預けて妻と二人で出かける、お互いにとって、とても楽しみで特別な日。


 だと言うのに、昨日からずっと妻の表情が暗い。


 そして、気づいてしまった。

 彼女が結婚指輪をつけていないことに。


 あれ、指輪つけ忘れているよ。


 そう、軽く口に出来ればどんなに良かっただろう。何故かその時俺は、気づかぬふりをしていた。


 そして、妻も俺が気づいたことに、気づかぬふりをしていた。


 二人で映画を見たが、内容は全然頭に入ってこなかった。その後、予約していたディナーを食べても、味が全然わからなかった。


 デザートが終わった頃、妻がポツリと言った。


「ごめんなさい、貴方に打ち明けないといけないことがあるの。」


 うん、どうしたんだい。

 そう答えた声は、少し掠れていたと思う。喉が渇く、背中に冷たい汗が流れる。


「今日、私が結婚指輪をしていなかったこと気づいていたわよね。実は私……」



 浮気をしたの



 そんな言葉が、脳裏をよぎった。

 もしも妻からそう告白された場合、自分が一体、どう言う精神状態になってしまうのか予測が出来ない。



「指輪が入らなくなっちゃったの」




「は?」


「貴方がいない間、忙しくて寂しくて、気晴らしに夜食をキメていたら……その、いつの間にか体重が増えてて。」


 ……


「ぶふっ」


「わ、笑った!?酷い、真剣に悩んでいたのに!」


 涙目で訴える彼女に悪いので、「悪い悪い、全然気にならないよ」と答えてから、お腹を抱えて身体を丸める。顔を見せないようにする。


 笑い声だけは、全く抑えられない。


「ふ、ふふ……」


「その後、努力はしたのよ。」


 でも……と、彼女が落ち込んだ様子で言う。


 食べる量を抑えると

 運動する元気が

 なくなって


 運動すると

 「運動したし⭐︎」で

 限界まで食べてしまう


 「バランス良く」が

 出来ないー…!




 笑いは一層ひどくなる。

 ウチの妻ハンパないって

 こんなんズルいって!

 めっちゃ被せてくるやん。



「ま、待って!言っておくけどね」


 彼女が焦った様子で言う。




 それでも最近は頑張ってたのよ?

 それで

 「痩せたかも」

 って体重計に乗ったの

 そしたら


 増えてて


 低めの「は?」が

 出ちゃった……



「――あはははは!」


 とうとう、俯いたままではいられなくなった。笑いすぎて涙まで出てきた。こうなるともう、笑い終わるまで止まれない。


 笑い疲れてようやく、目じりを拭って言うことが出来た。


「そもそも、前が痩せすぎだったんじゃない?指輪も大分細いサイズだっただろう。大体、今何キロなのさ」


 俯いてゴニョゴニョ言う数字を聞くと、適性体重内に収まっていた。そういえば彼女、昔はいわゆる「シンデレラ体型」で、よく風邪ひいていたもんなぁ……


「全然普通だよ。今、君は生物として適切な体重なんだから」


 続けて彼女に向かい、本心を伝える。


 それに思うんだ。多くの主婦の日常は戦場で、きっと自分の事はいつも後回しにしてしまう。

 少しお金や時間ができても、自分だけのために健康的な食事を用意したりジムに行ったりするのではなく、ついつい家族のために使ってしまう。

 そう言った生活を続けた結果、お腹周りに薄らとついたそれは、怠惰の証なんかではなく家族のために戦ってきた勲章、チャンピオンベルトなんじゃないかな?


「でも、これ以上どんどん太っちゃったら、いくらアナタでも流石に愛想を尽かされそうで。」


「そんなわけないんだけど……でもじゃあ、不安なら、今から一緒に運動しようか」


「運動?ジムにでも寄るの?でも、子供達もいるし流石にもう帰らないと……」


「実は部屋をとってあるんだ。今日は泊まりになるって両親には事前に伝えてある。子供達にも手紙と、寂しくならないようなプレゼントを用意したよ。」



 そこまで言うと、「運動」の意味を理解した彼女は、ぼっと赤くなる。


 手を握り、囁いた。


「愛してるよ」





 このあと、めちゃくちゃ運動した。





 その後、俺の生活は少し変わった。


 まず、仕事を周囲に任せて早く帰れるようになった。部下を育てて、業務のタスク管理も行なった結果だ。


 未熟な新人、使えない部下、そんなの上司の勝手。本当に家族が大切なら、そのメンバーで成果をだしつつ、早く帰宅できるように頑張るべき。


 って四天王も言ってたしな。



 それで今は、月一程度は平日に有給をとって、協力して家事を終わらせ、子供達が学校に行っている間に2人で出かけたりしている。


 ちょっとだけ遠出して『運動』をして帰る時もある。


 まあ、それは家でも出来るしやっているんだけど、時々雰囲気を変えるのも大切だしな。


 そのおかげか、妻の体重は変わらずキープされているようだ。ストレス発散とか言って、時々ランチパックにファミチキを挟んで食べたりしている癖に、ようやっとる。





 それで最近、妻はと言うと





「んも〜!」


 一日二回はこの言葉を使っている。


「工作で牛乳パック使う!?ないわよそんなに!」


 おおー、今日はそうきたかぁ。


 言いながらなんとか牛乳パックを用意しようとコップに並々と牛乳を注ぐ妻、本当に凄い。


 そして、表情豊かで、凄い可愛い。

 見ていて全然飽きない。


 しかし息子のやらかしは本当にバリエーションが豊かだな。それに影響されたのか、娘も段々と元気がよろしくなってきた。


 前日は

「お母さんの尻は太鼓ではない……!!」


 その前は

「今日はすぐ帰ってきてねってお願いした日ほど普段ないレベルの寄り道してくる……」


 ときたもんだ。

 そのたんびに、んも〜。


 まあ娘は多分、魔神(俺)と呪術師(妻)のハイブリッドだしな……でも大丈夫、君、最強だから。

 そのままの君で、幸せになっちゃえー。



 信じられるかい、この女性、高校の頃は「リアル雪ノ下雪乃」とか言われていたんだぜ?

 本当に丸くなったものだと思う、色々なところが。


 

 そろそろ結婚して12年なのに、毎朝妻を見るたび「今日も昨日より嫁が可愛い」みたいな新婚気分で仕事に行く…ラブ。


 よーし、愛する家族のために、今日もパパ頑張っちゃうぞー!



 (了)

おーす!みらいの チャンピオン!


よろしければ、アナタのご家庭の「んも〜」事例なども感想欄にご紹介頂けますと幸いです。伴侶の素敵なところや好きな所でも可。


えっ?そんなのないって?


またまたー。

本当はいいネタ、あるんでしょう?


ほら、ちょっとジャンプしてみなよ……



6/11追記

最新作できました!自信作だから読んで欲しい↓


転生したら山姥でしたが、幸せになってみせますわ!

N6668KI


同一シリーズからも読めます

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ご好評だったのでさらに我が家の息子のネタを追加で一つ。 厨二病罹患前の6才位の頃は100均など出かけるたび「これこそが伝説の、、!」と呟いてはおもちゃ売り場で剣をねだるミニ勇者だったため、我が家では…
素敵なラブラブ夫婦のお話しにホッコリです(^^) フリーダム男児を育ててる母だと朝牛乳ミッション程度なら今夜はシチュー、明日はそれをホワイトソースにリメイクしてグラタン!更に残ったソースは冷凍して週…
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