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其の十二

十二

中はてっきり羅生門にでてくるのような薄暗い木造の世界かと思いきや、綺麗な青空のビルの屋上になっていた。

「三次元じゃないから。気を付けて。」リナが言う。

「ねえ、どうしてリナ氏はそんなに色々知ってるの。」

涙太は尋ねた。

「体術サークルは、黒泥の水底に呼ばれる運命の人々の集まりなんだよ。」

「え、じゃあ、俺も宝玉を取りに行かなければならない?」

「そう。だけどこれって、無意識に行われるもので、こんな明晰夢になるのはちょっと珍しいというか、おかしいというか。」

「ちなみに、無意識下での活動を助けるための精神の修練を行うのが、サークルの真のテーマなの。」

「あ、トルコ石。」

涙太が空に手を伸ばしたら何故か届いてしまって、もちもちした空の蒼から、トルコ石が取れてしまった。

「ハウライトトルコじゃん。やる気の塊。」リナが言う。

「これ食べられないかな。」

「え?お腹空いてるの?」

「霞の食べ方を無意識に実践するとか、驚き。でもちょっと違う。石になっちゃったら食べられないの。」

「はあ。」

「こうやって雲を指に絡めて採れるこれ、これが霞。」

「はい。あーん。」

差し出されたのはいいが、指まで口に入ってしまいそうだったので手で受け取る。顔を見ると、リナはからかうように笑った。

「ぷははっ。」


単純にこういうおかしな事態には発生条件があって、それは知らなくてもよいというか知る余地がなく、この状況が終わる条件もまたあるというのが、今までの夢の脱出の真理である。その条件は大体が頑張らないでできてしまうことで、ついやってしまうことだったり、状況的に不可抗力で湧く感情がキーだったりする。つまり、何もしていなくても出られる。涙太はそれを理解していた。


そもそも、宝玉を取りに行くのは無意識に行われることなのだから、今わざわざやらなくてもいいとは思う。きっと、今探しても見つからないだろう。

「もしかしたら、ここは黒泥の水底とは似て非なる場所かもしれない。」

「どういうこと?」

涙太は自分の考えを伝えてみた。

「なるほど。じゃあ、ここに来たのは何か違う理由があるか、何らかの条件が偶然一致して発生した空間ってことかな。」

「そうかもね。多分、理由は今すぐには分からない。どんなに考えても、その考えの裏側に答えが存在して、見ることができない。」

「なんか面白いね。それなら少し気が楽かも。」

 リナがそう言うのと続けざまにくしゃみをした。

「ヘックしょーい!」


その瞬間だった。ゲームのバグが起きたかのように、一瞬世界が真っ暗になり、場所が変わり、時計の文字盤が目に映った。

周りを見ると、緑の黒板があり、二人は大学の講義室に居て、見慣れた窓の景色に、ペンを持ちノートを広げていた。横の席にカバンがあり、黒板の内容は一昨日受けた授業の続きだった。

一席あけて彼女が隣にいたので、涙太はリナを見た。リナは眉をひそめて、頭に疑問符が浮かぶような顔をした。

「一日後の講義に一気に移動してしまった。」メモをリナに渡す。

「どうしよう。汗」リナがメモにそう書いて返した。

「とにかく、誰かに相談できるタイミングを探ろう。」

時刻は昼休みになり、講義が終わり皆が机に広げたものを片付けていた。

やはり涙太はお腹が空いていて、講義室には誰かの香水の匂いが漂っていた。



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