其の四 其の五
四
「今日のご飯はどうしようかなあ。」
カレーを作ったときに作りすぎて、お弁当にもカレーを持っていったことがある。
その時友達に「文明開化したてか。カレーに目覚めた?」とからかわれて、家で三人ほど友達の友達も合わせてカレーパーティをしてくれたことがある。一人暮らしは楽しいが、一人分を作るのは難しい。
「作り置きか、お肉とかを一人分にわけて少しづつ調理するか、一汁一菜するかだな。リナは文明開化しちゃったもんね。第三の案はなしでもいいけど。」
五
「あれから私、粗食に目覚めちゃってさー。米と味噌と漬物最強だよ。月一でステーキやるけど。それがたまらんへんの!」
「そっかー。一汁一菜は冗談だったんだけどね。大丈夫?身体壊してない?」
「うん。むしろ軽いっていうか。」
「ストイックだねー。」
リナが友達と話し込んでいたら、鏡張りのレッスンルームの中に白い短髪のおじさんが入ってきた。
「せいれーーつ!」
皆が一斉に話していた口を止め、白髪のおそらく先生の前に横一列に並んだ。涙太は入り口に近い一番端に並んで立っていた。
「先生に礼!」
一同、十人程がお辞儀をする。
「はい。体術サークルの講師をやっております、後藤と申します。」穏やかで渋い声でそう言った。
「今日は初めての人が居るみたいですから、新入部員さんちょっとこっち来て。」
自分しかしないので、小走りで先生と少し離れた隣に立つ。
「総合学部一年、宝賀涙太です。よろしくお願いします。」
拍手をする十人の中に、名前を知っているのは花前とリナさんだけで、二人を見ながら元の位置に戻る。
花前はさっぱりとした髪型に暗い茶髪、眉毛が凛々しい。
リナさんは、綺麗な金髪を今日は二つに髪をまとめて下ろしていて、白いロングTシャツを着てダメージの入った水色のジーンズ履いていた。出会った時の華やかな印象とは違い、今日はカッコかわいいと涙太は思った。
膝抜きの練習はあっという間に終わった。手ごたえは感じていた。