その猫、銃を握りて先陣を切る
刹那───。空間が切り裂かれた。
間一髪、それを躱す猫。アサルトライフル抱えながら反復横跳びしつつ斬撃を見極める。
卓越された技術に見えるが実は違う。避けているのではなく、選んでいる。
躱しているのではなく当たらないようにしているのが正解。
奴は、分岐した世界を任意で選べる。
──そう、その『本質』の名は。
『分岐』2つ選択肢が出てきて任意で都合がいい選択肢を選べる能力。
間違えない能力。嘗て、託された能力。
だがしかし、それも通じるのは相手が軍人か研鑽を重ねた軍隊までである。
相手が相手だけに分が悪い。
相手は化け物だった────。先ず、動きが一般人じゃなく、剣は流れるように弧を描き、隙がなく無駄がない。
浅野さんは、能力は持たないものの、『本質』持ちである。懐中時計を親指で押すと、発動するそれは、時間を、時を止めた。躊躇いがなく、目の前の物体を次々切れるだけ切る。
が、何も切れてはなかった───。
空を切っただけで、捕らえれては無かった。
背後を取られアサルトライフルで撃たれるも、これを全部手馴れたように切って魅せる。シアンが援護射撃するも、横目で躱される。
埒が明かないからとギルバートを狙うも、遮蔽物に隠れられる。追いかけると、ルドルフが狙撃してくる。左脚と右胸を撃たれて、地に這い蹲る形になり、頭を抜かれた。
防戦一方、三対一になる───。
「・・・勝負あったな...。」
「・・・その様ですね。」
「中々楽しめたよ。だがそれももう終わる。」
ルドルフが照準を合わせ、ギルバートが刀身を8尺に伸ばし、ガブリエルと呼ばれた猫型ホムンクルスは、アサルトライフルに弾丸をつめて、銃口を彼に向ける。
そして、三体の技が展開される。
『追撃する狙撃』──。
『熱を帯びる一太刀!!』
『血の雨を降らせる突撃』
三者の猛追の中、時が止まった感覚に襲われ、全てが弾かれた。
「 ────何奴!?」
『機械が織り成す障壁。』
「───ルドルフ警戒せよ。狙われてるぞ!!」
気付けば遅く───。ルドルフは撃たれていた。
2発、後ろから、ゲームなので、死にはしないがホログラムの如く消える。
「誰だ?何処から───?」
フラッシュバンが投げ込まれ、目を逸らし、次に備える。
『炸裂する地面!!』
安西の声が響き渡る。
まともに喰らえば、あの世行きとばかりに地面は白に包まれて、そして炸裂する。
『地獄の条件─────。』