ヤンデレされるのって羨ましいなと思ってて時期が俺にもありました。
「んぅ……?」
目が覚めると、そこはよく知っているようで普段からよく見ているような部屋に俺はいた。
俺は一体……。
「……っ!」
起きあがろうとした瞬間、首筋がとんでもない痛みに襲われる。
感覚としてはそうだな……、まるで骨が折れてしまっているような感覚だ。
いやまあ、ちょっと動かしてみた感じ、折れては無いっぽいから大丈夫だと思う。
それよりもここどこだ?何だか見覚えはあるんだが……。クソッ!うまく頭が回らん。
俺が何だかんだ考えていると、ふと聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……くんは…………で……ね」
「う……ず………てな……よ」
「し……い」
「っ……!」
この声……!陽和、アキに緋色!
声が遠くて内容は途切れ途切れだが、声だけはすぐに分かる。
すぐにここだと伝えれば、それでチェックメイトだ。
そう思って声を出そうとしたのだが……。
「ーーーー!ーーーー!?」
声が出なかった。
口元の感覚をよく確認すると、口元が布でキツく縛られており、声を出させないという意思を感じる。
いや、それだけじゃない。足や手すらも縛られて、身動きができない。
これじゃあ、助けを呼ぶどころか、自分で何かアクションを起こすこともままならない。
「……あ、………たち…………すね」
「……ん。……………ら………ら」
「はい。………す」
と、そうこうしてるうちに、陽和たちの声が遠ざかってく。
どうやら帰ってしまうようだ。
クソッ!何がどうなってるんだよ!
そもそも、俺を気絶させた挙句、縛り上げたのは、一体どこのどいつだ。
バカにも程がある!
と、心の中で悪態をついているところに、ふと、扉が開く音がして、俺は思わずその音がした方へと目を向ける。
その瞬間、俺は驚いた。
暗い空間でも分かるぐらい綺麗な青い瞳がこちらを見据えていたから。
「ーーーー」
俺は塞がった口で「何で……」と疑問を口にする。
俺の目線の先にいる者は……。
「あ、やっと目が覚めたんだ。お兄ちゃん♡」
妹の冬島緋色だった。
「ーーーー!」
「……?ああ、ごめんごめん。今外すね」
緋色はそう言って俺の口から布を外した。
よし、解放された事で聞きたいことは山ほどあるが、最初に聞くべきことは……。
「解放してくださいっ……!」
「イヤ♡」
は、ハイハイ。そうか、そうですか。
予想はしていたが、解放してくれるつもりはないらしいし、今の会話で、俺をこの状態にした張本人が緋色であるということもわかった。
なら次だ。
「……何でこんなことを」
根本的な理由を聞き出し、それを解決することで、解放させちゃおう作戦だ。
これなら何とか……!
そう思っていたのだが、緋色からは、思いがけない言葉が飛んできた。
「………よ」
「え……?」
「……お兄ちゃんが悪いんだよ!?」
「え、俺!?」
思わず聞き返し、緋色はコクリと縦に頷く。
「だってお兄ちゃんが他の女に目移りしてその上彼女まで作って……。私は妹だからしょうがない。しょうがないから我慢しながらもお兄ちゃんに適度に甘えようって思ってたの。けど、さっきのあの遺言状で確信したの。私とお兄ちゃんは運命で結ばれたヒトなんだって。だってそうでしょ?実妹と実兄じゃないんだったら結婚できるし子供作りだって合法。お兄ちゃんのためならこの身の全てをお兄ちゃんに捧げちゃっても良いんだよ?こんなに献身的な子なんてそうそういないよ?だからさ、お兄ちゃん。陽和さんなんかとは別れて私と付き合お?私と付き合えばお兄ちゃんが今まで体験したことのないようなコトをたくさんしてあげる。それとも何。まだ陽和さんの方が良いっていうの?そんなわけないよね。そうだよね。もしそうだとしたら私、訳もわからずにお兄ちゃんを殺しちゃうかもしれないよ。だからさ、私はお兄ちゃんのために生まれてきて、お兄ちゃんは私のために生まれてきたの。ねえ、分かるでしょ?分かるでしょ!?ねえ。ねえ!お兄ちゃん!」
「ああ、分かった!分かったから一旦落ち着こうか!」
具体的にはお前の俺に対する愛の重さが分かった。
もう、凄かった。
息もせずに早口であんなことを言われたら誰もが恐怖心を抱くだろう。
俺なんてもう、ヒュンってした。どこのとは言わんが危機を感じた。
俺の返答に対して緋色は「そっか」と微笑む。
「じゃあ、早速子作りを……」
「ちょっと待て!」
色々とすっ飛ばしすぎだと思い、無意識に突っ込んでしまったが、それは愚かな行為であるとすぐに悟った。
なぜなら、緋色がその瞬間、目からハイライトが消えていたからだ。
「え?何で?だって今、分かったって言ってたじゃん。私の言っていることをしっかり理解して、私のことを彼女にするって意味の分かったじゃなかったの?嘘を吐いたってこと?ああ、やっぱり、お兄ちゃんと一緒に今すぐ死んで永遠に二人になるしか無いのかなあ。だってそうでしょ?お兄ちゃんは私みたいな献身的な子ですら居ようと他の子に目移りしちゃう。だったらもういっそお兄ちゃんを殺しちゃって私も死んじゃえば、後は二人だけの世界だもん。お兄ちゃんが目移りしちゃうのはこの世界に何匹もメス猫がいるからだもんね。大丈夫。死んじゃえばそんなの無くなって私しか見えなくなるから。私だけしか愛せない世界になるんだよ?だからさ、一緒に逝こう?きっと幸せな世界が待ってるよ?」
再び息も無しに長いセリフを言い、それと同時にナイフを取り出し始めた。
「ちょっ!緋色!」
「なあに♡」
「俺はお前のことが好きだ」
「………………」
勿論、妹としてだが、今この状況でそんなことを言ったら殺されるだろう。割とマジで。
だが、緋色には効果覿面で、頬を赤らめながらナイフをしまった。
「もう、お兄ちゃんったら、分かってることをわざわざ言わなくても♡」
「お、おう」
た、助かったあ……。
これがしばらく続くのか?
頼む陽和。アキ。早めに俺を見つけてくれ。
俺は本気で神に祈って、いや、世界一可愛い美少女と白銀の妖精に祈ったのだった。
頼む。早くしないと、既成事実を作られてしまう……!




