表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

貸し借りとかは結構大事だと思うんですよ。例えば〜

 あの後、無事に体調も回復して、颯太から「帰ってもいいよ」とお許しが出たので帰っています。

 あ、ちなみにアキと陽和は病院で颯太と話があるとか何とか言っていたので残っている。

 冬の夜、一人で人気のない道を歩くと言うのは男といえど気が引ける。

 何よりもクソ寒い!帰ったら速攻で風呂入ろう……。

 そんなことを思いながら薄暗い道を歩いていると……。


「冬島」

「ひゃいっ!」


 耳元で息を吹き掛けられたかのような感覚が走り、思わず腑抜けた声を出してしまう。

 思わず振り返るとそこには誰もいなくて。


「下だ。下」

「下?」


 垂直90度に首を曲げる。

 誰もおらんが。


「お前、わざとやってるのか?」

「悪い悪い。冗談だよ。大星さん」


 ちゃんとそちらに目を向けると、乏しい身長に幼さを残しながらも凛とした美麗さを持つ少女、大星沙穂が不機嫌そうにそこに立っていた。

 不機嫌そうな理由はまあ、分かってはいる。


「お前は何でそうも私の身長ばかりからかうんだ」

「すまんすまん。悪気はある」

「あるってはっきり言っちゃってるし、それはそれで腹が立つんだが」

「いやー、腹立たせてるってことは、俺のからかいが上手いってことだな。ごめんな?才能にありふれてて」

「一発ぶん殴っていいか?」


 ちょ、やめて。怒気を放ちながら拳をこっちにちらつかせんのはマジでやめて。

 俺が「まあまあ」と冷や汗を流しながら沙穂を落ち着かせると、沙穂は「…………まあ、いいだろう」と言って拳を下ろした。殴られたら、どれくらい痛いんだろうなあ……。想像もしたくないので、俺は考えるのを止めることにした。


「そういえば、沙穂はこんな時間にどうしたんだ?」


 俺がそう聞くと、沙穂は「ああ」と思い出したように言った。


「晩ご飯の分の食材が足らなかったから近くのスーパーで買ってきたんだ」

「へー、そうなんだ……ん?沙穂って一人暮らしだっけ?」

「いや、両親と私の3人で暮らしている」

「……?じゃあ、親御さんに頼めばいいんじゃないか?」


 高校生といえど、まだ大人には甘えてもいい年齢だ。買い出し程度、親が車で行った方が圧倒的に効率がいいはず。

 俺の疑問に気づいたのか、沙穂は少し微笑んで疑問に答えた。


「私の両親は毎日忙しくて帰りが遅いんだ。だから実質、一人暮らしのようなものだな」

「あー、そういう事情のある奴もいるか」

「何を当たり前のことを言っている」


 沙穂が不思議そうな顔を向けてきたので、「いや、何でも」と軽く誤魔化してく。


「……私に誤魔化しは通用しないぞ」

「………………何のことやら」

「おい、今の間は何だ。何か隠し事をしているんじゃないのか!」


 ちょ、どうどう。どうどう。

 うまをなだめるように沙穂を落ち着かせようと試みる。

 すると沙穂は「私は馬じゃないんだが……」と言いながらも、刀を鞘に収めてくれた。

 素直だなあ。もし緋色だったら「お兄ちゃんがちゃんと全て吐かないと絶対に帰さないから!」と見舞いの時によく言われてたっけ。

 吐かなきゃいけない内容が病院外のことで、喜んで語っていたのだが、熱が入ると帰してくれなくなる。


「そういえば、冬島は妹と二人暮らしだったな。何か理由でもあるのか?」


 俺が緋色の入院時のことを遠い目で思い出していると、沙穂がそんなことを聞いてきた。


「えっと、俺の両親さ、4年前に死んじゃったんだ。だから、妹の緋色と二人暮らし」

「……悪い。野暮なことを聞いた」

「いやいいよ」

「それでも少し考えれば分かることだった。本当にすまない」


 そう言って頭を下げる沙穂。

 真面目が過ぎるからか、こういうところが本当に厄介。勿論いい意味で。


「顔を上げてくれ。大星さん。……いや、沙穂」

「……!」


 俺が沙穂を名前で呼ぶと、沙穂は驚いたように顔を上げた。

 それに対して俺は……。


「これで貸し借り無しな」


 と照れ臭く思いながらも、目を背けて言った。

 そして、横目でみた沙穂の顔は……。


「ああ。涼……!」


 と、今まで見てきた沙穂のあらゆる感情の中で一番可愛い笑顔だった。


                        56


 あの後、俺は沙穂と別れて、家の前まで到達していた。

 俺の脳裏にはまだ、沙穂のあの笑顔が焼き付いている。

 可愛かったなあ……。

 陽和には及ばなくとも、5分の1……いや、4、いや、3分の1は可愛かった。

 陽和の方が圧倒的に可愛いけど。

 そんな、口に出したら「ベタ惚れめ」といじられそうなことを思いながら家の玄関の鍵を取り出し、鍵を開ける。

 ……っと、鍵は空いてんな。緋色が先に帰ってきてたのか。塾にでも行ったのかと。

 俺は玄関の扉を開けて中へと入った。


「ただまー……って、真っ暗じゃん」


 部屋の中は真っ暗で何も見えないため、手探りで電気のスイッチを探す。

 そうして数秒後、スイッチらしき手触りがあったので押してみる。

 カチッ。

 ……ん?

 カチッ、カチッ、カチッ。

 あれ何でだ?電気がつかない。

 間違えたスイッチを押したか?いやでも周りを触ってみても何も無い。このスイッチで確実に合ってる。

 じゃあなぜ電気がつかないんだ。

 そう思った瞬間、頭に強烈な痛みが走った。

 まるで何か固いもので殴られたような……。

 気づいたら、俺は倒れ、動けなくなっていた。

 そしてそのまま俺は、なす術も無く、気を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ