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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第1章 世界一可愛い美少女
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冬島さんは意地悪です

「……ついてくんな」


 帰っている途中、俺は暗い夜道の中でそんなことを口にした。

 陽和はこの言葉に対して「こいつ、何いってんの?」と言わんばかりに渋い顔をした。


「……なんだその顔」

「ついてきているのはそちらなのではないかと思ってる顔です」

「しょうがねえだろ。俺の家はこっちにあるんだから」

「私も家がこっちにあるんですからしょうがないでしょう」


 どうやら陽和も俺が向かっている方向に家があるようだが、俺はもうすぐで家に到着するので間もなく陽和ともお別れだ。

 家に帰ったらまず夜ご飯を食べて、それからどうしようと、帰ることに久々にランラン気分になっていると、陽和から「バカ極まりない」と言わんばかりの眼差しを向けられたので、「……はい」とすぐに大人しく歩いていく。

 そんなことを繰り返していくと、いつの間にか目の前に大きなマンションが佇んでいた。

このマンションの5階の一室に俺の家がある。

 やっと着いたと安堵が混じったため息を一つ漏らす。

……いや、マジで女子と帰るのは神経が磨り減る……。

 そう思いながらマンションの中に入ろうとすると、隣にいる陽和までマンションのエントランスに入ってきた。


「……お前、何やってんの?」

「帰宅ですけど」

「いやいや、そうじゃなくて!なんでここに居るのかって聞いてんだ!」


 俺が大声でそういうと、陽和が口許に指を当てて「シーっ!」と言ってくる。

 そういえばここでも大声を出しても近所迷惑だったなと反省しつつ、俺は通常の声の大きさでもう一度聞きなおした。


「……櫻井。お前、まさかとは思うけど、ここのマンションに住んでんの?」

「そのまさかですね」


 なんとも可愛いい笑顔で返答されたので、つい目を逸らしてしまう。

……っと、いつまでもここに居ると管理人さんに怪しまれるから、早めに帰宅しよう。

そう思いながらエレベーターに乗ると、陽和も一緒にエレベーターに乗ってきた。


「一緒にエレベーターに乗ることに何かご不満でも?」

「……いや、ないです」


 こんなことにドキドキしている俺は馬鹿なのだろうかとエレベーターの壁に頭突きしたい衝動を抑えつつ、俺はエレベーターの5階のボタンに手を伸ばす。

 刹那、俺の手とは別の、か細くて小さな手が、俺と同じく5階のボタンに手を伸ばしていた。


「……なんか嫌な予感がしてきた」

「奇遇ですね。私もです」


 とりあえずエレベーターのボタンを俺が押しておくと、エレベーターが動き出し、数秒後にはピンポンという軽快な電子音が流れて扉が開く。

 扉が開いたと同時に、俺たちはすぐに自分の家へ向けて歩き出す。

 そして、俺の手が自分の家の扉に手を付けたのと同時に、陽和は俺がつかんだ扉の隣に手を伸ばしていた。

 どうやら悪い予感はど真ん中へ的中したらしい。


「やっぱり隣だったか……」


 俺は「面倒くさいことになった」と溜息を吐く。

「あら。私の隣はご不満で?」

「お前の言動はもっとめんどくせえ!」


 何なの、この子!さっきからものすごくめんどくさいんだけど!

 あまりの面倒くささに渋い顔を作るが、陽和はただ笑うだけである。

「……一応言っておくが、お前。迷惑だけはかけんじゃねえぞ」


 もうなにを言っても無駄な気がしたので、話題を変えるためにそんなこと言ってみた。

 すると陽和は不服そうに頬を膨らませた。


「私がお隣に迷惑をかけるような人に見えるのですか」

「根は真面目そうだが、お前のめんどくささならやりかねないなと思ってるよ」


 この短時間で、陽和という人間がどれだけ面倒くさい人かを会話の中で見極めることができた。

 俺の言葉が結構外れていると思う人はたくさんいるだろうが、見た目に騙されてはいけないと俺は思う。

 俺の言葉に不満があったのだろう。「むーっ」という可愛らしい声をもらしながら頬を膨らませた陽和は俺を真っすぐにらんでいた。


「冬島さんは意地悪です」

「はいはい。俺はどうせ意地悪なコですよ」


 陽和はさらに頬を膨らませて睨み具合がさらに鋭くなる。

 この可愛らしい様子をずっと見ていたいが、さすがにずっとここに居るわけにもいかないので、俺は扉の鍵穴に鍵をさしてガチャリという音がなってからかぎを抜く。


「それじゃあ、俺はもう入るから」


 俺がそういうと、陽和は頬を膨らませるのを中止して「そうですか」と笑顔を向けてきた。


「それじゃ、また明日」

「はい。また明日です」


 お互いに別れの挨拶をして、俺は家の中に足早に入る。

 そして、入ってすぐにソファに腰を下ろした。

 今日は本当に濃い一日だったなと苦笑しながら荷物をソファにおいてキッチンへと向かった。

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