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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第2章 白銀の妖精
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挨拶は大切に

 次の日、いつも通りの時間に起床し、俺はリビングでテレビを眺めていた。

 いつものこの時間なら緋色が起きていていて、俺に「お兄ちゃんおはよう!」と言いながら抱きついてくるのだが、昨日の参拝で疲れたのか、いつもよりも熟睡していた。

 まあ、添い寝であるのはいつもと変わらずなのだが……。


「……っつっても静かで寂しいな」


 沈黙に包まれているこのリビングにポロッと出てしまった言葉に思わず嘆息を零してしまう。

 この半年で驚くほどに賑やかになったと感じるのが、今この瞬間の俺の家が一人静寂に包まれた時だ。

 事実、賑やかとなって俺自身、この体に知らないようなことをたくさん知ることができた。

 このような環境になったことは俺にとってとてもいいことなのかもしれない。

 そんなことを考えていると、静寂を破るかのように「ピンポーン」と軽快なインターホンが鳴った。


「ヘイヘーイ。今出ますよーっと」


 どうせ陽和だろうと思い、玄関へと足を運んで扉を開けると、そこには案の定、陽和がニコニコとわらいながら立っていた。


「おはようございます。涼くん」

「ああ、お……」


 いつも通りに笑顔で挨拶してきた陽和におはようと返そうとした瞬間、言葉が詰まって出なくなった。

 なぜなのか。それは、昨晩、いや、細かく言えば今朝か。

 今朝のアキとのあの約束を思い出したからだ。

 どうしよう。すっごく気恥ずかしい。


「涼くん?」


 俺が言葉に詰まっていると、陽和が心配そうにこちらの顔を覗いてくる。

 そのあまりの近さに、鼻に美香がくすぐり、純粋そうな透き通った瞳に吸い込まれそうになり、理性がグワンとグラつきそうになるのを必死に押し留める。

 そんな奮闘を知らない陽和はキョトンとした表情でこちらを見据える。

 くそっ、可愛いな!


「…………何でも無い」


 俺はそう言いながら、わざとらしく欠伸をしながらリビングへと戻る。

 陽和もそれにつられるようにリビングのソファへと腰掛け始めて、再び俺のかおをジッと見た。


「……どうした?俺の顔に何か付いてる?」

「いえ、ただ、涼くんの態度が冷たいなと」

「あー……、多分疲れちゃってるのかもな」

「また夜更かしですか?駄目ですよ。ちゃんと寝ないと脳への負担が昨日の今日で持続して、疲れが溜まっていくんですからね」

「へいへい。ちゃんと寝ますよ」

「本当ですかねえ……」


 陽和はジーッと怪しげに俺を見据える。まるで信じていないかのような瞳で。

 もう少し信じてくれてもいいんじゃ無いんですかねえ。


「あ、そう言えば朝飯作ってないんだわ。何にしようかな」

「今、話を逸らそうとしましたよね」

「……パンの賞味期限がヤバいから使っておかないと」

「聞いてます?」


 うるせえ!いつもは鈍感なくせに、こういう時だけ敏感になるんじゃねえ!

 心の中でそんな悪態をつきながら、冷蔵庫を漁っていると、再び「ピンポーン」とインターホンが家中に響く。


「私出ますね」

「おう。頼むわ。多分アキだから、鍵開けるだけでいいと思う」

「はい」


 陽和がパタパタと足音を立てながら玄関へと向かってしばらくしてから、玄関からガチャっという音が聞こえてきた。

 そして、陽和が戻ってくると、その後ろから銀髪をたなびかせた少女、アキこと萩原秋穂が歩いてきた。


「あ、フユくん、おはよう」

「ああ、おはよう」


 今度は躊躇いがなく挨拶を返すことができ、少し嬉しく思っていると、リビングのソファにすでに腰を下ろしていた陽和が不機嫌そうにこちらを見る。

 そのご飯をねだっている小動物のような目に、何を求めているかはすぐに分かった。


「陽和も、おはよ」

「……!はい!おはようございます!」


 俺が陽和に挨拶すると、陽和は心底嬉しそうに眩しい笑顔を作った。

 ああ、その笑顔だけで俺はお腹いっぱいです。


「お兄ちゃん、おはよー……って、何この状況……」



                        51



 あの後、陽和にデレデレしてしまった俺に理不尽という名の暴力が下ったのだが、それはそれとして、俺は今、門脇総合病院にいる。

 なぜなのかというと、颯太から助けが求められたからだ。

 どうやら、かなりの人が有休を取ってしまい、人手が足りないのだとか。

 それで現役高校生に医療を頼むとかどんな精神してるんだと颯太を責めたが、颯太は猫の手でも借りたい程に忙しく、臨床の場に出ることもままならないらしい。


「だからって手術を俺に丸投げするとか、大人としてどうなん?」


 手術服に着替えながらポロッと悪態をつく。

 今この部屋には俺一人しかいないから楽だけど、さっきなんて隣で歩いてた人が「何でこのガキが……」と隠す気もないように言って睨んでいた。

 正直言うと、マジで殴りたくなった。顔の原型を留めてないぐらいメチャクチャに殴りたいって思いました。


「それはそれとして、緊張するな……」


 聞いたところ、今回はそれなりに難しいらしい。

 いつもだったらサポートをしていたのだが、今回は俺がメインで手術するとのこと。

 本当なら颯太が手術するつもりだったらしいのだが、当人は忙しすぎるため、俺が代わりに手術。

 そのため、颯太の代わりというプレッシャーが凄い。

 逆に手術自体には特に問題は無いと感じている。

 先ほど、症状の詳細が記された資料に目を通したが、はっきり言って1時間前後で終わると思う。

 なのでさっさと帰って夜飯でも作ろう。

 そう思いながら着替えを終わらせると、俺は手術室へと向かう。

 その道の途中で患者の親族らしき人が手術室の前でソワソワとした様子でウロウロしていた。

 気持ちは分からんでも無いが、あまりに挙動不審だと警備員に取り押さえられるから気をつけたほうがいいよ。


「さて……」


 俺は手術室の前でそっと体を伸ばすと、そのまま手術室へと静かに入っていった。

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