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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第2章 白銀の妖精
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いけめん?ナニソレオイシイノ?

「――よし」


 あの後、俺は胡桃さんから着物をもらい、今はその着物を俺の部屋で着替え終えたところだ。

 ふと部屋にある鏡を見てみる。

 貰った着物は黒がベースの、とても綺麗な、言わば和服だった。


「自分で言うのも何だが、めちゃくちゃ似合ってるな」


 ふとポツリと零した言葉は、的を射ていると思う。

 胡桃さんとは今日始めて会ったが、元から俺用に用意されていたのではないかと思うほどに、とてつもなく似合っている。まあ、個人の感想だからアテにはしないけどね。


「お兄ちゃん、着替え終わった?」


 鏡としばらくにらめっこしていると、部屋の扉の向こうから緋色の声が聞こえてきた。

 出発の時間かと思いふと時計を見るが、先程胡桃さんから伝えられた出発時間にはまだまだ余裕がある。

 一体どうしたのだろうか。

 疑問に思ったものの、着替え終わってはいるので「ああ」と短く返すと、ゆっくりと扉が開き始める。

 そして――。


「――どうかな。似合ってる?」

「っ……!」


 俺は思わず息を呑んでしまった。

 なぜなら、開ききった扉の向こうに、着物に身をまとった緋色がいたから。

 緋色の着物は青がベースの小紋。俺と同様で、元から自分のものであったのではないかと思ってしまうほどに美麗な姿だった。


「お兄ちゃん?もしもーし、お兄ちゃあん?」


 しばらく傍観していると、疑問に思ったのか、緋色が俺の目の前に手を振って呼びかける。

 刹那、俺の意識が戻ってくる。やべっ、見惚れてたわ。


「悪い悪い。とっても似合ってるよ。その着物」

「えっ、うん。そうでしょ。やっぱり私には青だからね」

「お前なら他の色でも全然似合うと思うが……」


 見ての通り、緋色はかなり愛らしい美少女だ。

 学校では告白がしょっちゅうされるらしい。ちなみにそれらの告白は全て「私はお兄ちゃんが好きだから」という理由で断っているらしい。

 そんな緋色が、まず似合わない服などまずないのだ。

 しかし緋色は「チッチッチ」と舌を鳴らし、ウザったらしく指を振った。


「分かってないねえ、お兄ちゃん。主に女心が」

「男にとって女心は永遠のミステリーモノだが?」

「うわ、サラッといいやがったよこのイケメン」

「イケメン!?どこどこ!?」

「いや、あんたのことだよ!」


 緋色のその一言に思わず「は?」と腑抜けたような声を出してしまう。

 俺がイケメン?なにを言ってますのん?この妹は。

 そういった意味を込めて緋色を呆れた視線で見つめるのだが――。


「え?まさか自覚してない……?マジかー。この人、イケメンの価値基準が違うのかー」


 ――と、呆れられたような瞳で返された。

 いやなんなんだよ。

 俺のそんな疑問が顔に出ていたのか、緋色はため息をわざとらしく大きくつくと、解説するかのように言い放った。


「お兄ちゃん、自覚してないようだから言うけど、お兄ちゃんって結構顔はいいんだよ」

「へー」

「……随分と興味なさそうだね」


 と、はたまた呆れた表情をする緋色。

 いや、興味あるかないかでいえば無いけど、もうちょっと優しい表情で見てくれませんかね。例えば陽和みたいな。

 そのことを無遠慮に言ってやろうと口を開くと、その瞬間、部屋の扉がコンコンと音を立てて叩かれる。

 扉は開いたままなので、ふとそちらを見ると、和服に身を包んだ颯太が気まずそうに佇んでいた。


「二人共、そろそろ出発するそうだよ」

「え、もうそんな時間?」

「緋色、あえて言わなかったが、出発時間より五分絶賛遅刻中だぞ」


 俺の一言に反射的に時計を見る緋色。その顔は時計を見た瞬間に、一気に青ざめていき――。


「お兄ちゃん!なんで言わなかったのさ!」


 と、半逆ギレされた。


「何でって、緋色と話すのは飽きないからさ」

「……そういう口説き文句は妹にやらないほうがいいと思う」


 おっと、ゴミを見るような目ですね。

 確かに、口説き文句だったのは認めるが、妹はノーカンだと思ったんだよ。

 なのでここはどうか許してくださいよ。


「……っと、そんな話をしている余裕はないんだったな」

「ちょっ!お兄ちゃん、無視しないでよ!ねえってば!」


            44


 駐車場に着くと、そこには着物に身を包んだ陽和やアキ、更には胡桃さんと陽和の父親である櫻井慶さんもいた。


「すみません、慶さん、胡桃さん、お待たせしてしまって」

「いえ、いいのよ。ついさっきまで『何でこないのかな?置いていこうかな?というか縁切っちゃおうかな?』とは思ったけど、慣れない和服を着るんですもの。しょうがないわ」

「ほんっとにすみませんでした!」


 胡桃さんの末恐ろしい思考に思わず土下座をかます。

 怖いよこの人。危うく縁切られて二度と陽和と会えなくなってたよ。

 そんな俺の土下座姿を見て苦笑いを浮かべる胡桃さんの隣りにいる男性、櫻井慶さんは「まあまあ」と俺に立つように促してくれている。うぅっ、天使だ……!

 そんな慶さんの容姿は成人男性というのは間違いないのだろうが、思わず「えっ、ほんとに成人男性!?」と、驚くほどに綺麗な風貌だ。

 今でも、1つぐらい年上のお兄さんという印象しか持てず、もはや青年のような見た目と言っていい。

 まあ、本人はこの容姿に悩んでいるようだが。

 先程聞いた話では、この見た目なため、夜に出歩くと警察官に補導されることも度々あるのだとか。

 ……っと、そんなことは置いといて、俺はひとまずその場に立つと、胡桃さんに話しかける。


「胡桃さん、ちょっとお願いが……」

「?なにかしら?私ができることなら何でもお願いしてね。あっ、でもエッチな事は駄目よ?」

「……ちょっと耳を貸してください」

「あ、スルーなのね。まあ、いいけどちょっと寂しいわ」


 そう言いながら耳をこちらへと向けてくる胡桃さんにある言葉を投げる。

 その言葉の内容に胡桃さんはどんどん真面目な顔になっていき――。


「分かったわ。準備ができたら連絡するから、それまでは待って頂戴」

「分かりました。ありがとうございます。こんな面倒なことまでさせてしまって」

「いいのよ。私だって、涼くんが心配なんだから」


 そう言いながらそっと微笑んで栗色の髪をたなびかせる胡桃さん。そんな彼女の仕草に思わずドキッとしてしまい、首から上が格段に熱くなる。


「涼くん?顔が赤いですよ?」


 そんな状況が気に食わなかったのか、陽和が黒いオーラを纏いながら俺の腕を掴む。

 その状況に胡桃さんは「あらまあ、大胆!」と微笑ましくこちらを見ているが、違うんです。違うんですよ胡桃さん。

 これは陽和の攻撃態勢なんです。よく見てください。掴まれてる腕がギチギチ鳴ってますよ。


 と、そんな妙な展開を繰り広げている俺たち三人組をよそにもうとっくに車に乗っている他全員はというと――。


「――なんか、あっちは長くなりそうだから先に行っちゃってもいいんじゃない?」

「緋色君、さすがにそれは……」

「私も、さんせ、い」

「秋穂くん!?」

「胡桃、あのそろそろ……」

「もう慶!邪魔しないでよ!今、涼くんと陽和がいい感じなんだから!」

「ええ……」


 くそぅ、いつになったら出発できるんだああぁあああ!

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