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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第2章 白銀の妖精
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ウチのカノジョが可愛すぎる件について。

 あれから五日が経過し、今日は大晦日となっていた。そして俺たちも今、新年を迎えるための準備をしている。


「涼くん、買い出し行ってきました」

「フユくん、この飾り、は、どこに置く、の?」

「お兄ちゃん、夜ご飯まだー?」

「陽和、買い出しありがとう。アキ、それは玄関に掛けてくれ。あと緋色。お前もちゃんと働け」


 キッと睨みつけながらそう言うと、緋色は「いやん」とわざとらしく体をしならせた。


「お兄ちゃん、今時ブラック企業は流行らないよ?」

「そういうのは働いてから言えバカ」


 辛辣な言葉をぶつけると、緋色はむうっと頬を膨らませるが、そんなものは知ったことではないのでスルーさせていただこう。

 俺はそのようにするかのようにプイっと緋色に背を向け、「アキー、大丈夫かー?」と飾りを玄関に掛けているアキの方へと向かった。

 後ろから「スルースキルが上達してない?」という緋色の呆れ声が聞こえたが気のせいだと思おう。

 そんなことはさておき、アキの方へと足を運んで「ダイジョブか?」と再度尋ねると、アキは嬉しそうな表情でこちらへ振り返った。


「あ、フユ、くん。丁度終わった、よ」


 そう言って微笑を浮かべる彼女の背にはしっかりと取り付けられた正月飾りがある。


「おお、ホントに一人でやってのけるとは」

「フユくん、私のこと、子ど、も扱いしない、で」


 アキはそう言うと、ぷくーっと頬を不機嫌そうに膨らませる。とても可愛らしい仕草に胸がどきりとしてしまうが、何とかそれを振り払い、代わりにアキの膨れた頬を突く。するとアキの頬が「ぷすー」という音を立ててどんどん萎んでいった。


「フユくんの、いじわる」

「はいはい。そんなことをぼやいてる暇があったら手を動かして下さーい」

「やること、したもん」

「陽和の手伝いとか……いや、喧嘩に発展しかねないな。俺はこれから年越しそば作るけど一緒に作るか?」


 冗談めかしに笑いながらそう聞くと、「いい、の?」とアキが上目遣いで問うてくる。

 うっ。上目遣いをされちゃ、駄目という訳にはいかないだろ。本当に女の子ってズルい。

 心の中でそんな悪態をつきながらも元から駄目だというつもりはないので「勿論」と首肯を打つ。

 するとアキは「やた」と小さくガッツポーズして細やかに喜びを表現する。


「そんなに嬉しいもんなのか?」

「それはもう、フユくんしか、入れない、禁断領域だか、ら」

「禁断領域って……」


 もはや何なのだそれは?たかがキッチンだぞ。何か禁忌の兵器を置いているわけでもないし、曰く付きでも……いや、陽和が過去にやらかしているという前例を覗けばの話か。


「……そんなことよりも、手伝うなら早く来い。やることはたくさんあるんだからな」

「う、ん。わか、った」


 少し足早にキッチンへと入ると、アキもついてくるかのようにキッチンへと入ってくる。

 すると、そんな光景があまり好ましく見えなかったのか、射殺されそうなくらいの勢いでこちらを見てくる陽和という者若干一名がいる。

 何かその視線と同時に、陽和あたりから熱気が飛んでくる気配がするのだが、これは俺の勘違いだろうか。

 そんな怖い視線を向けてくる陽和は不機嫌さを言葉にしてぶつけてきた。


「涼くん、なんで私は駄目で秋穂さんはいいんですか?」

「そりゃ、アキは料理はできる方だし、やらかす心配もないからな」

「やらかすって……。私だってちゃんと涼くんのお手伝いをしたいんですけど」

「陽和、マイナス掛けるプラスはいくらやってもマイナスなんだぜ」

「もしかしたら奇跡的にプラスになるかもしれませんよ」

「えっ?」

「えっ?」


……………………………………………。

 ……えっ?陽和がプラス的な料理を作る?

 ……想像できねえ………。うん。一度陽和の料理を食ったことがあるからこそ言える。

 断じて! 絶対! 無理! だああああああああ!


「今、とても失礼なことを言われたような気がしたんですけど」

「気のせいだ」


 心の中を読むのはやめて頂きたい。沙穂にもめちゃくちゃ心の中を読まれていたのだから、陽和にすら心の中を見透かされるというのはあまり気持ちいいものではない。

 ああ、なんかそんなことを考えてるとイラついてきた……。

 だが、陽和は俺のそんな思考は露知らず、「けど」と呟く。


「涼くんの料理はこれからもずっと食べられるってことですよね」


 ……………………………………………………。

 ………ウチのカノジョが可愛すぎるんだが?

 えっ、つまりはあれだよね。結婚も陽和は視野に入れてるってことだよね。

 そう考えると顔が熱くなるんですけどー!やだもー!あ、あっつい。アッツいわー。


「いや、アッツ……っていたたたた!ちょ、アキ⁉」


 先ほどの陽和の発言にキャラ崩壊をしていると、アキが俺の脇腹をつねってくる。

 ちょっ、いたっ!ちぎれ、千切れるってえええ!

 つねってくるアキの手をポンポンとタップしてギブアップをアピールすると、アキは溜息を吐いてそっと手を離した。

 痛かったぁ……。痕とか残ってないかな。残ってたら腫れの予防のために冷やさなきゃいけなくなるけど。

 そんな女々しい心配をしていると、アキはますますあきれ顔ではあっと溜息を吐いた。

 こいつさっきから何なんだ?


「おいアキ。言いたいことがあるなら言えよ」

「……」


 さっきからの不遜な態度が気になって聞いてみる。するとアキは顔を赤くしながら俯いて口をつぐんでしまった。


「おいアキ……」

「お兄ちゃーん。夜ご飯まだー?」


 黙っていても何もわからないぞと言おうとしたが、それよりも前に緋色が話の腰を折ってしまった。

 ……ったく、しゃあない。聞くのはまた今度にしよう。


「よし。アキ、そっちの麺を茹でてくれ。俺は天ぷらと汁を作るから」

「……ん」


 軽薄に返事をしたアキは、どこか寂しそうな表情を一瞬だけした後に鍋へと向けるのだった。

 ちなみに、しばらくした後にキッチン前の張り紙が『涼と秋穂以外立ち入り禁止』と更新されていたのは言うまでもない。


                    40


 あの後、陽和が「私もやっぱり作りたいです!」と参戦しては来たものの、事無くそばが出来上がって食べ、後は数分、年越しを待つだけだった。

 そういえば今年はいろんな事があったなあ。まず陽和に出会って、緋色が退院して、アキに再開して、そして陽和というカノジョができて。本当に思い出せば出すほど溢れるくらいに出てくる。

 なんとも感慨深く、そんなことを考えていながら陽和たちを見る。

 こんなにも大切で守ってやりたいと思った子たちはこれが初めてだ。何より、陽和には「ずっと傍にいる」と言ってしまっているので、特に陽和は離さずに守ってやりたい。

 アキは知らないうちに悪い人に騙されてしまいそうだし、緋色に関しては……うん。なんか一人でも十分生きてけそう……。何故かは分らんけど。


「涼くん、もうすぐ年が明けますよ」

「え、あ。本当だ」


 緋色に対する意味不明な評価に首を傾げていると、陽和が肩を叩いて年が明けることを知らせてくれ、思わず時計を見る。

 いつの間にか残り五分で年越しという時間になっていて、何だかみんなそわそわしだした。


「どうする?ジャンプする?ね、お兄ちゃん!」

「いや、下の人に迷惑になるからやめとけ」

「あ、じゃあクラッカーを鳴らそー!イエーイ!」

「おい待て。まだ年明けてないし、何より今そのクラッカーどっから出した」


 緋色が突然クラッカーを手に持ち、思わず目をギョッとさせてしまう。

 え、今こいつ、何もないところからクラッカーを出したよね?怖っ!緋色怖っ!


「あ、お兄ちゃんたちのもあるよー。はい」

「あ、どうも……って、俺のだけでかくない?」


 緋色からクラッカーを渡されたのだが、何故か俺だけ顏ぐらいの大きさのクラッカーを渡された。

 緋色の性格からして面白そうだから買ったのだろうが、限度というものがある。

 ふと陽和とアキの方を見てみると、二人とも何だか引きつった顔だ。


「涼くん、その、こっちに向けないでくださいね?」

「そんなことすると思うのか?」

「悪戯でしそうだなと……」

「……否定はしない」

「今聞き捨てならない事が聞こえましたけど気のせいですよね⁉気のせいだと言ってください!」


 陽和が泣きつきながらそうねだってくるが、俺はそっとそっぽを向いて出来るだけ陽和と目を合わせないようにする。正直に言うと、陽和のビックリした表情も見てみたいのでしたいという気持ちはあった。ホントのホントに、ほんのちょっとだけあった。


――そういえばさっきからアキが静かだな。一体どうしたのだろう。

 そう思って隣に座っているアキの方を見てみると――。


「……」


 アキはコクコクと船を漕ぎ出し、いかにも眠そうだった。

 そういえばアキは普段規則正しい生活をしているんだった。

 俺の家には長くても九時には帰るし、十一時には一切連絡がつかなくなる。つまり十一時にもう寝てしまっているということだ。そんなアキがこの時間まで起きているということ自体がおかしいのだ。いや、こいつがいつも寝ている時間の一時間もたってないけどね。


「アキ、眠いなら帰ってもいいんだぞ?」

「やぁだ……」

「やだっつっても、無理されるとこっちも心配で気が気でないんだ。寝ちゃっても問題ないだろ」

「……今日は、フユくんと、いっしょ、にいるぅ」


 そう言うとアキは眠気でとろけ切った瞳を俺に向けてくる。

 またそんな危ないようなことを言ってと呆れ気味にため息をつく。中学の時はこのような際どい発言のおかげでどれだけ俺が頭を抱えたと思っているんだ。

 そんなことを思っているとパアン!と大きな音がリビングに響き渡った。


「あけましておめでとーう!」

「え?マジで?」


 クラッカーを盛大に鳴らした緋色がコクリと頷く。年越しまで起きていようと頑張ったのに、特に面白味もないまま年を越してしまった。ちょっとショック……。

 じめっとした気持ちになっていると、ふと俺の肩にポンっと軽い衝撃が走る。

 何だろうかと俺の肩を見てみると、アキがとうとう限界に達したのか、穏やかな寝顔で静かな寝息を立てていた。


「寝ちゃいましたね」

「ああ。多分疲れたんだろ。今日はもう寝かせてあげよう」


 俺がそう言ってそっとアキの頭を撫でると、アキは穏やかな寝顔を心地よさそうな微笑みへと変える。それを見て大変嬉しく感じると同時に奥底からこみあげてくる欲求が湧いてくるのだが、それは冷たい陽和の視線でなんとか押しとどめた。


「お兄ちゃん、アキちゃんはどこで寝かせるの?」

「ん?俺のベットで寝かせるよ」


 俺のヒョロヒョロな力じゃアキを家まで持ち連れていくことはできない。

 なのでそう返答すると、陽和と緋色は動かなくなった。あれ、えっと……あ!


「い、いや、違うから!俺はソファで寝るし、別々だから!」


 必死に弁明すると、二人はホッとした様子で胸に手を当てた。


「ビックリしました。まさか涼くんが浮気を堂々とするのではないかと」

「私も私も~」

「もうちょっと信頼してくれ……」


 やれやれと呆れ気味にため息を一つ。

 いやしかし、俺の先ほどの発言に対する説明不足のせいで勘違いさせてしまったので、悪いと言えば俺だが……。


「ええい!いちいち気にしてちゃキリがねえ!とにかく、アキを部屋に運んでくる!」

「……浮気しちゃだめだよ」

「しねえわ!」


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「意外と軽かったな……」


 アキを運び終わった後、俺たちは解散しようということになり、陽和は自分の家へ、緋色は自分の部屋へと戻っていった。ちなみに、アキを部屋へと運ぼうと、アキを持ち上げると、ものすごく軽くてアキの家まで運ぼうかなとも思ったが、陽和たちに怒られそうなのでやめておいた。

 そして俺は今、寝ようと思ってソファへとブランケットを携えながら横になっていた。

 暗い天井が視界をいっぱいにし、今日一日を振り替えさせられる。日付的には昨日だけど。

 ともかく、十時には陽和とアキの両親がそれぞれ来るので、万全な状態でいないと。

 そう思い、俺はそっと深く目を閉じて眠りにつくのだった。

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