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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第1章 世界一可愛い美少女
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今夜は聖夜だから

「さて、次の奴らは『RYUSEI』の皆さんだ。刮目して見ろ!」


 流星がマイク越しにそう言うと、先ほどまで暗転していたステージ上が光に包まれる。

 あの後、嫉妬男たちのことは皆忘れ、さほど影響なくクリスマスパーティーが進行進行されていた。

 そして今、ステージ上に立っているのは……カオスな組み合わせだな。流星のカノジョたちだ。

 彼女たちが意図的に組んだのか、それとも偶然組んだのか。いや、チーム名が『RYUSEI』となっている時点でもう意図的なのが確定だ。なんともわかりやすく苦笑いが零れてしまう。

 そんな彼女たちが今行っているのは、意外にもダンスだった。ぶっちゃけた話、あの者たちが先ほどの嫉妬男たちのような暴挙を行うと頭によぎったが杞憂だったとそっと胸をなでおろす。

 だが、驚いたのは俺だけではないらしく、流星も彼女らが出てきた瞬間、ぎょっとした目でそれらを傍観していた。その視線で渡も察したらしく苦笑いをこぼしている。

 俺はそんななんとも言えない光景に苦笑するしかないのだが、俺の隣に座っている緋色や陽和、さらには持ち場にいるアキも俺らが何に対して驚いているのか分かっていないようでキョトンとしている。

 俺が今の状況に呆れ気味にため息を吐いていると、『RYUSEI』の出し物が終わったらしく先ほどまで流れていた軽快な音楽が無くなっていた。

 そして、ステージの照明が暗転してそのまま出し物終了かと思いきや……。


「「「「流星さん、だーいすきっ!」」」」


 とんでもない爆弾を落として、彼女らはその場を後にした。

 あー、これは流星、終わったな。俺はそう思いながらその場をしばらく見つめていると……。


「おい、椿!これはどういうことだ!」

「そうだなおい。ちょっと路地裏で話そうぜ流星ちゃん」


 十中八九、嫉妬に狂った男たちが流星に詰め寄っていた。そんなカオスな状況に流星は「落ち着いて!落ち着いてくれ!」と詰め寄ってくる男たちを宥め、そばに座っている渡はやれやれと言った様子でその場を諦観している。そして陽和たちはというと……。


「涼くん、なんで椿さんがあんなに攻寄られているんでしょうか?」

「だーいすきって言われてたのは素敵なことだと思うけど、みんなはなんでそれが受け取れられないのかな?」


 原因を分かっていない二人は不思議そうにコテンと首を傾げる。二人は流星が多数の女性と付き合っていることを知らないので不思議な顔ができるのだが、アキの方を見やると少々呆れたような、それでいてざまあみろと言っているような顔をしていた。そう、こいつはもともと流星と仲が最悪で、その原因が流星の浮気性のせいだ。アキは流星の浮気性が許せず、中学の時に抗議したのだが、「俺は好きだという子に失望させたくない」と押し切られてしまったのだ。なのでその時は全然太刀打ちができなかったが、今回は自分が下さずとも罰は受けているとアキはちょっとだけニヤリと笑った。

 その時のアキの口が「ざまあみろ、クズ」と動いていたことは見なかったことにしておこう。


「涼!渡!助けてくれ!」


 流星が助けを求めてくるが自業自得だ。

 俺は渡と目を合わせると、そのまま二人同時にプイっとそっぽを向いた。


「プイじゃねえ!助けてくれぇえぇぇ!」


 流星はその叫びを最後に、取り囲んでいた男子たちに拘束されてどこかへ行ってしまった。


              35


「流星が連行されて帰ってこないので、代わりに僕が司会を担当するねー」

 

 渡がそう言うと、陽和、緋色、アキ以外の女子たちが「キャアア!」と黄色い歓声を渡に浴びせる。そう、流星が連行されてしまって数分が立っているのだが、全く戻ってくる気配を見せないあたり、本当に尋問をされてしまっているらしい。なので、代わりに渡がこのクリスマスパーティーの司会を務めることになったのだ。まあ、あいつの出番は最後だから暇だろうし、彼は流星よりも人の前に立つことを得意としているので彼以上の適任はいないだろう。


「それじゃあ、次の人に……って、次の人が出し物最後だね。ええっと……」


 渡は手元にある資料に目を凝らして必死に読もうとしている。

 あの資料は流星が作ったもので、俺も先日見たが非常に小さい文字で作られていて、俺が「眼鏡必要だなこりゃ」と嘆いたほどだ。流星は視力が化け物並みに高いので問題ないのだろうが、渡ともなれば話は別だ。あいつは実のところを言うと視力が悪い。普段はコンタクトレンズだが、家では眼鏡をしていると流星から聞いたことがある。なので彼があの資料を読み解くことは非常に困難だ。

 しかし、そんな奮闘が女子には微笑ましく感じたのか、誰もかれもが渡のことを見守っている。

 ちなみに男子殆どが流星の尋問に行ってしまっているので、この体育館にいる男子は俺と渡、そして生徒会長だ。

…………あれ、そういえば生徒会長さんの隣に座っていた沙穂の姿が見えないな。いったいどこに行ってしまったのだろうか。


「…………なるほど。大変長らくお待たせしました。最後の出し物を飾っていただくのはこの方たちです」


 そんなことを考えていると、どうやら読み解けたらしい渡がニコニコとそのユニット名をマイク越しに言った。

 そのユニット名こそ…………。


「生徒会副会長、大星沙穂さんでーす!」


 なんと生徒会副会長さんだった。その生徒会長さんはスタンドマイクをステージに置き、アコーディングギターを携えている。コレの格好でもう何をするかは想像がついた。


「大星沙穂だ。僭越ながら、歌を歌わせてもらう」


 沙穂はそう言うとギターを持ち寄せて、自身の唇をマイクに近づけた。

 そして鳴り響くAメロのギターの音が辺りに響き始める。


「君と出会えたクリスマスは~、素敵な夜で~♪」


 ジャンジャンとギターの弾みのある音に周囲が息を呑む中、沙穂がマイク越しに響かせた歌声はとても美麗で聞き惚れてしまう程だった。とても高校生徒は思えないほどのその歌声は皆を惚けさせてしまい、会場全体を圧倒する。

 聞いたことのない曲であるあたり、恐らく自分で作詞作曲したんだろう。本当にすごい奴だと心の中で感心していると、ギターの音がどんどん強くなりサビに入るということを知らせてくる。


「今夜は聖夜だから~、そばにいてほしい~♪」


 そのサビに入った瞬間、会場が温かい空気で包まれ、冬だとは思わせないほどの歌声が俺たちを包み込んだ。ふと陽和の方を見てみると、音楽に関心の薄い陽和でも夢中になっていた。もしかしたら沙穂は音楽の才能があるのかもしれないな。

 そんな心地の良い彼女の歌声だが、なんとも名残惜しくも終わりが来てしまう。

 いつしか歌声は消えており、ギターの音だけとなっていた。そしてジャンジャーンと静かにギターを響かせると、会場はパチパチと拍手の音に包まれて、まるで沙穂への感心を現しているようだった。


「以上、大星沙穂だ。皆、最後までクリスマスパーティーを楽しんでいってくれ」


 沙穂はそう言って一礼すると、ステージ脇へと消えていった。渡はそれを見て「それじゃ、次のプログラムまで休憩時間でーす」と感慨に浸っている皆へ告げる。

 皆がそれを聞き、仲の良い友達と談笑を始める。主に先ほどの沙穂のことを話している人がほとんどのようだ。

 そして、緋色もその雰囲気につられるように俺に話しかけてきた。


「お兄ちゃん、さっきの人凄かったね」

「ああ。大星さんがあんなにできるとは思わなかった」

「生徒会ってある意味凄いよね。沙穂さんが最後なのは狙いだったりして」


 それはあり得る。生徒会が学校の為を思って行動する組織ならこれぐらいのことはするだろうし、何より流星が一枚噛んでそうだ。今回のこのクリスマスパーティーの運営を率先していたのが流星なので、もし意図的ならそれは見事だと言っていい。


「フユ、くん」

「ん?ああ、アキか。どした。仕事があるはずだろ」

「今は、休憩時間、だか、ら」

「あ、そっか」


 照明器具の操作を担当しているアキはほぼ休む暇もないので、仕事がないうちに俺と話しておきたいんだろう。なんとも健気だなと苦笑すると、隣に座っていた陽和が「もう」とツンツン俺の頬を突いてくる。


「涼くん、そんなゆるゆるな顔を見せないでください」

「陽和も安易に俺の頬をツンツンするのはやめてください」

「それは嫌です。私の唯一の癒しですので」


 陽和はそう言ってぷくーっと不機嫌そうに頬を膨らます。なんとも可愛いなと思いつつ、先ほどのお返しとばかりに陽和の膨れた頬を突いてプシューと萎ませる。

 その行いに陽和は「いじわる」と可愛らしく罵倒してくる。


「覚えててくださいよ」

「へいへい。覚えてたらな」

「……もうすぐその余裕も消してみせますよ」

「えっ?」


 良く聞こえなかったので聞き返そうとしたら、「いえ、何でもないですっ!」と上品に笑った。

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