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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第1章 世界一可愛い美少女
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この先、墜ち注意

 次の日、俺は流星と共に学校の食堂で昼食を共にしていた。


「でさ、陽和とアキが誕生日祝いでキッチンに忍び込もうとしてて困ってんだよ」

「なに贅沢な悩み抱えてんだよ」


 昨日あったことを話すと、流星は「全く……」と呆れ気味にため息をついた。


「まあ、いいんじゃね?美少女からの手料理なんて天の恵みにほぼ等しいぞ」

「確かにそうだが……」

「だが?」

「……お前は陽和の料理の恐ろしさを分かってない」

「ええ?」


 流星は困惑顔を同時に苦笑い顔を作るが、俺は笑い事じゃない。

 あいつの料理でマジで死にかけたのだから。

 俺の反応にヤバさを感じたのか、苦笑を止めた流星は「まあ、頑張れ」とテーブル越しにポンと肩を叩く。

 クソっ。こいつ、他人事だと思って……。いつか食わせてやる……。


「すまない。冬島涼と椿流星だろうか」


 俺がいつか流星にも陽和の料理を食わせてやると心の中で決心していると、突然自分の名前が背後から聞こえて、困惑しながら流星と同時に後ろを向くと、そこには一人の少女が堂々と立っていた。

 その少女は、黒髪に黒目という日本人らしい容姿をしていて、ザ・和って雰囲気が漂っていた。身長は乏しいが。


「今、失礼なことを考えなかったか?」

「……気のせいじゃないか?」


 やれやれと溜息をつく。思考を読むのはやめて頂きたい。

 えっと……、確かこの人は……。


「突然話しかけてすまないな。私は大星沙穂おおほしさほだ。生徒会の一年副会長を勤めている」

「ああ。どうりで見たことがあると思った」


 確か、生徒会選挙で「私はこの学校の校則のすべてを変えて見せよう」と意味の解らんことをほざいていた子だ。

 ただ、生徒会の一年立候補者がこの大星沙穂しかいなかったので言わばしょうがなく生徒会副会長の座を手にしている。


「えーと、俺は冬島涼。こっちが椿流星だ」

「よろ」

「軽いなおい」


 生徒会の副会長にそんな軽いノリでいいのだろうか。なんたって沙穂にはそういったノリがあまり好きではなさそうだし……。

 そう思い、沙穂の方を見てみると、予想通りしかめっ面だった。


「えっと……、大星さん?」

「……っと、すまない。ちょっと椿に嫌悪感が……」

「ひどくね?」


 流星がツッコむが、沙穂は気にした様子はなく、ただニコニコとしているだけ。

 正直、この笑顔がちょっとホラーに見えてしまうのは俺の気のせいだと思いたい。


「それで、俺たちに何の用?」


 俺のその言葉で沙穂は思い出したようにハッとする。

 話が逸れたが、副会長ほどの人が話しかけてきたということは、俺と流星に用があるということだろう。

 沙穂は「そうだったな」と恥ずかしそうに咳払いし、身だしなみを整えてこちらに向きなおした。


「まあ、ここじゃなんだ。場所を変えよう」

「分かった。……ほれ、流星。行くぞ」

「待って。このカツサンドだけでも」

「そんなもん、戻ってきてからも食えっから」


 そう言って流星の首根っこを掴むと、諦めたように「へいへい」と頷いて大人しく同行した。


                  31


 俺らが案内されたのは生徒会室だった。

 ここは普段、生徒会が話し合っている部屋なのだが、クラスメイトから聞いた話では、話している内容がレベル高すぎてついていけないらしい。

 俺個人としては、その話の内容が気になって一時期、生徒会に入ってみようかなと思ったが、やっぱりめんどくさいやと思ってやめたのだ。

 なのでこの生徒会室に入るのは一生縁のない話なんだろうなと思っていたのだが、まさかこんな形で入るとは……。

 そう思いながら扉の前で『生徒会室』と書かれている扉を眺めていると、その扉が動いてびっくりしてしまう。

 どうやら沙穂が生徒会室に入るために扉を開けたようだ。


「どうした?入っていいぞ」


 ぼーっとしていた俺に沙穂が話しかけてくる。それに俺は「お、おう」と戸惑い気味に入り、その拍子に俺についてくるように流星も入る。

 生徒会室に入ってまず目に入ったのは、話し合うために用意しましたと言わんばかりに置かれていたテーブル。その次に爽やかに微笑んでいるイケメン……イケメン⁉

 俺が思わず二度見したその視線の先には、数か月前にお世話になった高校生俳優の佐神渡がいた。


「おー、渡じゃん。どったの?」

「流星に冬島。久しぶり。何、僕もそこの副会長さんに呼び出されたんだよ」

「私の名前は副会長さんじゃなくて大星沙穂だ。佐神にも話があったから呼び出したのだよ」


 そう言って沙穂は近くにあった席に座り、俺たち三人もそれにつられて座る。

 全員が座ったのを確認した沙穂は、一つため息をついた後に口を開いた。


「さて、君たち三人が集められたわけだが、十二月二十四日のクリスマスパーティーに関連することだ」

「えっ」


 思わず声が零れてしまう。

 クリスマスパーティーなんて初耳だったからだ。

 その思考が顔に出ていたのか、沙穂は目頭あたりを押さえてため息をつき、渡と流星に関してはやれやれといった感じであきれ顔だった。


「もしかして知らないの俺だけ?」

「冬島は校内掲示板を見てないのか?」

「見てないな」


 一瞬、沙穂の顔が引きつった気がしたのは俺の気のせいだろうか。


「まあとにかく、クリスマスパーティーが十二月二十四日にあるということを頭に入れておいてくれ」

「ん。で、それがどうしたんだ」


 そう促すと、沙穂は改めましてと言わんばかりに背筋を伸ばし、口を再び開いた。


「それで、前の文化祭の評価がかなり高くてな。特に君たちの評価が高かったんだ」


 それがどうしたんだろうか。そう思い、口を開こうとしたら、沙穂が先に言い放った。


「そこで、君たちにクリスマスパーティーの運営をしてもらいたい」


「「「は?」」」


 素っ頓狂な声を三人同時に上げる。

 しばらく時が止まったような時間が流れるが、一番最初に口を開いたのは流星だった。


「……つまり、俺たち三人にクリパの運営を押し付けると」


 うわこいつエゲつねえ……。わざと言い方を悪くしてやがる。

 ただ、「ああ」と淡々と悪げもなく返事をする沙穂さんもメンタル強すぎでは?

……あ、流星の顔が引きつってる。勝てないことを悟ったな。


「どうだろうか。冬島、佐神」


 流星は了承したとみた沙穂はこちらにふるいをかけにくる。

 それに対して佐神は「大丈夫だよ」と返事し、後は俺だけになった。

 流石にこの空気で断れるわけもないので「分かったよ」と小さく呟いた。


「うむ。それでは、頼んだぞ」


 こうして、三人でのクリスマスパーティーの運営が決まった。

            

              32


 俺はその日の帰宅後、陽和、アキ、緋色の三人に、今日あったことを話していた。というより愚痴っていた。


「でさ、その大星沙穂って人が俺と流星と佐神の三人で運営しろっていうの。無茶ぶりにもほどがあるわ」

「流石に三人だけっていうのはねえ」

「無理が、ある」

「ええ。私もそう思います」


 三人は俺の愚痴に対して肯定的に受け取ったようだ。

 まあ、しょうがないだろう。愚痴なのだから。

 俺の語り方が沙穂が悪いと言わんばかりの言い方なのだから。

 いやまあ、この三人はそれを抜きにしても俺の言うことに肯定的になってしまいそうな気もしなくないが……。


「あ、でも大丈夫ですか?」

「ん?ああ。三人でも大丈夫だと思うぞ。佐神もいるし」

「いや、そういうことではなくてですね……」

「え?」


 どういうことなのだろうか。

 俺が疑問に思っていると、アキは「ああ」と共感するように口を開いた。


「中間、考査、来週にある」

「あっ。そういえばそうだった」


 今日の出来事のインパクトが強すぎてすっかり忘れてた。

 俺の反応に対して陽和とアキはやれやれと言わんばかりに手のひらを上に向け、緋色はそもそも知らないのでキョトンとしている。

 俺はその反応にムッと不服な顔を作るが、三人はスルーしてくるのですぐに元の顔に戻す。


「まあ中間考査っつても、いつも通りにすればいいんだけどな」


 俺がそう言って微笑むと、陽和は「そうですか」とちょっと安心したように呟き、アキと緋色に限っては「さすがフユくん(お兄ちゃん)!」と尊敬のまなざしを向けてくる。

 尊敬のまなざしを向けられるってなんか気分いいな……。ふふん。もっと褒めたまえ。

 気分を良くしていると、察したらしいアキと緋色はプイっと視線を逸らした。なんでだよ。


「ま、ともかく今の問題はクリパの運営だな」


 ちょっと残念そうに呟きながらも力なく微笑むと、陽和が「あのぅ」とおずおずといった感じに手を挙げる。


「私たちもそのクリパの運営を手伝えますけど……」

「あー……」


 そういえば沙穂が人手が足りないなら手伝いを誘ってしまっても構わないって言ってたっけ。

 視線の先を陽和からアキの方に移すとコクコクと首肯を打っていた。


「……じゃ、手伝ってもらおっかな」


 別に断る理由も無いのでそう告げると、二人は嬉しいと言わんばかりにぱあっと花を咲かせるように笑顔を作った。


「いいなあ、クリスマスパーティー」

「そういえば緋色の中学はそう言った催しはあまりないよな」

「そうそう。そんなことする暇があるなら勉強しろーってのがうちの学校の教育方針なんだよね」

「相変わらずすごい理論だな」


 俺は、緋色が今通っている中学に通っていたのでわかるのだが、俺が通っていた頃、つまり去年もそれに近い理論で教育されていた。

 なんともストレスのたまるような中学校生活になるだろうが、例として俺やアキといった成績優等生が通っていた中学校なのだから無論、その学校の偏差値はかなり高い。いつ訴えられてもおかしくないような学校ではあるが。

 なんとも懐かしくも地獄のような日々だったなと遠い目をしていると、緋色がおねだりするような目で超絶至近距離で見つめてきた。吐息が交じり合うような、それぐらいの距離感。

 うちの高校のクリスマスパーティーに参加したいと言いたいのだろうが、これほど近い距離まで近づく意味がよくわからない。

 ただ、俺は実妹のその程度の行動では一切動揺しない。


「緋色、近い」


 そう言って突っぱねると、緋色は「きゃっ」とわざとらしく倒れこんで俺の腕を引っ張る。

 そのせいで俺は絵面的に緋色を押し倒したような風になってしまっていた。

 緋色の顔を見ると、恥じらったように赤面した緋色がそこにおり、俺をじっと見つめていた。

 あれ、こいつこんなに可愛かったっけ……。

 あ、よくよく見てみるとマジでこいつ童顔だな……。特に俺と同じ青みがかった瞳なんかが可愛く……。


「涼くん!しっかりしてください!」


 陽和のその言葉でハッといつもの理性に戻る。

 あっぶね!危うく緋色に墜ちるところだったわ!

 ふと横に顔を向けると、必死さが伝わってくるほどの鬼の形相になっている陽和と、顏を赤くして目を手で覆っているアキが視界に映った。

…………。


「……えっと……、二人とも、これは……」

「フユくん」


 アキがワントーン落ちた声を送ってきて、俺は思わず「はい」とその場に正座する。


「ちょっと、あと、で話が、あるから」

「……はい」


 この後、三時間もアキに説教され、寝るのがいつもよりも二時間ほどおそくなってしまった。


ー次の日ー


「涼。お前、なんかやつれてない?」

「……気のせいだ」


 この日、珍しく勘のいい流星に一日中、迫られて苦労する羽目になってしまったのだった。

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