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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第1章 世界一可愛い美少女
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争奪戦、開始!

「秋穂さんってどのようにして涼くんと出会ったんですか」


 私がフユくんの手作り料理に舌鼓を打った後、勉強のために早めに切り上げて自分の家に戻る途中、陽和ちゃんからそんなことを言われた。


「私が、フユくんと……?」


 あまりに突然のことだったので、思わず反芻してしまう。


「そう、だねえ……」


 あまりに昔のことだった。なので思い出すのにも時間がかかる。

「あれは、私が、4歳の、ときだった、っけ……」


 ちょっと時間がかかりそうだったので、私は語りながら思い出すことにした。


ー約十二年前ー


 私はこの頃、もう既に喉の病気を患っていた。

 声が出せず、出したい言葉がうまく言葉にならずにいた。

 そんな中、私の担当医だった人が冬島このはっていう人、つまりフユくんのお母さんだった。


「えーっと、秋穂ちゃん。私はね、息子と娘がそれぞれ二人いるんだけど、明日連れてくるから遊んであげてくれない?」


 あの子インドアな子で友達いないのよと付け足したこのはさんに向かって私は思わず「ぇ……」と今現在とは比べ物にならないほどの小さな声で呟く。

 なぜ私なんかと遊ばせようとするのだろうかと疑問を持ったと同時に、私の中でどうせその子たちも私を見限ると淡い絶望感を渦巻かせる。

 ただ、私は断れずにそのままこのはとのこの日の会談は終わった。


 そして翌日


「君があきほちゃん?」


 このはさんが連れてきたのは、私よりも背が小さい男の子と、まだ赤ん坊の面影を残した少女だった。

 私はその男の子に名を問われると、小さく首肯を打つ。


「オレはふゆじますず。こっちはひいろだよ」


 私が首肯を打つと、冬島涼と名乗った少年が妹の分も含めて自己紹介してきた。

 ただ、私はその自己紹介に意味がないと思っている。

 だって、今日だけで私はこの子に見限られる。そう思っていたから。


「ねえねえ、母さんっていつもどんな治療してんの?」


 この少年……ああ、冬島涼か。その冬島涼は私に向かっていきなり妙な話の方向へもっていく。

 ただ、その質問には物理的に答えられない。だって声が出ないから。

 試しに声を出そうとしてもこの通り……。


「き、みの、おかあ、さん、は……」


 出た。出た出た!何で?今まで出なかったのに。

 疑問に思い、思わずこのはさんの方を見る。

 ただ、このはさんはニコニコしているだけで私に話しかけようとする気配はない。


「あぅ?」


 ふと、赤ん坊の声がした。

 下の方を見てみると、先ほどまで冬島涼の膝の上にいた緋色が私の膝の上に鎮座していた。


「あぁぁ」

 緋色は私の顔を見るなり、まるで嬉しいと言わんばかりにニコッと笑った。


「おっ、何だ緋色。アキのことがそんなに気に入ったのか?」

「…………ア、キ?」


 誰だ、その名前の人は。

 私が疑問を抱いていると、冬島涼はそれに気付いて「うん」とコクリと首肯を打つ。


「あきほなんだろ。だからアキ」


…………何それ。下らない。だけど…………。

 だけど同時に愉快さを覚える。

 その愉快さが頂点に達して、私はとうとう吹き出してしまった。


「プっ!あはははははははは!」


 私が大きく笑うと、冬島涼は呆気にとられたかのようにキョトンと、緋色は相変わらず「あぅぅ」と笑っている。


「あー……おも、し、ろい」


 こんなに大きく笑ったのはいつぶりだろう。

 とても懐かしい気持ちと共に私はドクンと胸を高まらせる。


「分か、った。アキで、いいよ」

「あ、うん」


 でもと付け足すと、冬島涼はピンと背筋を伸ばした。いや、そこまで緊張しなくてもいいんだけど……。


「私は君の、ことを、フユくん、って、呼ぶ。い、い?」

「へっ?あ、うん。どんとこいだ!」


 そう言うと、冬島涼……いや、フユくんは見たことないくらい眩しい笑顔を私に向けてくれた。

 私はその笑顔にドキリとしつつ、このはさんを見る。

 このはさん、あなたの息子さんの温もりは、とても暖かくて、優しくて、離れられそうにないです。


ー現在ー


「……っていう、のが、私とフユくん、の、馴れ初め、って感じ、かな」

「馴れ初めって」

「違う?」


 私が小首をかしげると、陽和ちゃんは「意味的には合ってますけど……」と拗ねたような口ぶりで私を睨む。


「で、その瞬間に涼くんに恋をしてしまったと」

「初恋、だった、ね」

「……涼くんと同じじゃん……」

「え?」


 私が疑問を口にすると陽和ちゃんは「いえっ!何でも!」と慌てたように返した。怪しい……。

 ただまあ、今日はもう問い詰めるほどの気力は残ってないし、勉強時間も多めに取りたい。

 なので問い詰めるのはお預けだ。


「おぼえ、ててね」

「……何を?」

「ふふ、何で、も」


 悪戯っぽく笑うと、陽和ちゃんは一瞬顔を赤くしたが、すぐに正常に戻る。

 これ、フユくんにやったら、私に堕ちてくれるかな……。

 明日やってみよう、そう思いながら自家の鍵を開ける。

 陽和ちゃんも同時に扉を開けたらしく、あちらからもガチャリと音がした。


「そう、いえば」


 最後に一つ、お節介をと言わんばかりに足を止めてそう言うと、陽和ちゃんはこちらを向いて身構える。いや、戦闘を始めるわけじゃないから。


「陽和ちゃんは、フユくんの、ことをどう、思って、る、の?」

「ふぇ⁉」


 陽和ちゃんが妙な声を上げると同時に顔を赤く染める。


「その、どう思うとは、どのような観点で……」

「恋愛、的に」


 私がそう言うと、陽和ちゃんは「ひゃうっ⁉」とこれまた意味の分かんない声を上げる。

 まさか初心なんか⁉そんな完璧そうなスペックを持ち合わせていながら初心なんか、お前⁉


「まあ、一言でいうのであれば、涼くんの亊が好きだということです」

「ま、あんなに、視線、で、熱烈に、好き、だ、って言ってい、たら、ね」

「え⁉私、いつもそんな風にしてましたか⁉」

「え、まあ、視、線が、ね」


 そんなに驚くことなのか……いや、こんなに初心なら驚くか。

 なら、もう視線が『好きで好きでたまらない』と物語っているとは言わない方がいいだろう。

 多分、この人のことだから、その場に気絶しちゃう。

 もしそうしちゃえば、私の中の良心が「やめてあげて!この子のライフはもうゼロよ!」と言いかねない。


「ま、好き、な人がいる、こと、はいいこと、だと思う、よ」


 私が遠回しに「この話はおしまい」と伝えると、陽和ちゃんは顔を赤くしたままこちらを睨んだ。


「絶対に負けませんから……!」


 なんともいじらしいことを口にする陽和ちゃんに思わず笑ってしまう。

 なんだかそのいじらしさが猫のように……おっと、これ以上は言わないでおこう。


「私こそ、フユくんは、渡さない、から」


 お返しとばかりに陽和ちゃんに睨み返す。

 

 そう、これは乙女たちの争奪戦。その始まりなのだ。

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