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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第1章 世界一可愛い美少女
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冬島家

 俺が渡に連れてこられたのは、渡の家だった。

 渡の家の前に立った時、マジでデカっ!て思った。

 もう家じゃなくて屋敷と呼んだ方がいいんじゃないかと思うほどには大きかった。


「ささ、その椅子に座って」


 渡は相変わらずの眩しい笑顔で座ることを促してきた。

 その促しに素直に従って座ると、今までで座った椅子の感触とはまた違う座り心地に思わずお「おお」と感嘆の声が漏れる。


「そういえば、冬島は文化祭の医療係担当だっけ。すごいよね」


 突如、掛かってきた声は優しくてふんわりしていた。

 恐らく、心の底から褒めているのだろう。


「まあ、別に大したことじゃないし……」

「ふーん。さすがは冬島家ってところだね」

「っ!」


 思わず悪寒が走った。

 俺の脳裏にあるのは、ただただ思い出したくない過去だった。


「人違いじゃないですか?」


 思い出したくない。二度と頭の中に思い浮かべてはいけない。

 その一心で、震える声を必死に紡いだ。

 ただ、それもお見通しと言わんばかりに、渡は笑みを深くした。


「そうかい?じゃあ、これからちょっと独り言するから、勝手に聞いててくれ」


 そう言うと渡は、瞳をスッとつむり、淡々と話し始めた。


「もう100年以上前の話になる。かつて、不治の病とされていた病気を治した天才医師がいたそうだ。そのものの名は冬島慎平。その時代、史上最高の医者と謳われた男だ」


 渡は再び目を開けて、真っすぐに俺を見据える。

 その視線に、俺は体に悪寒が走った。

 なんだか、逃がさないと言われているような、そんな気がした。


「その後、冬島慎平の家系は代々、優秀な医者を輩出してきた。冬島龍一、冬島勘蔵等々……。ただ、その中でも特に天才と謳われた者たちがいた」


 ああ、もうやめてくれ。

 そう言おうとして、声を発しようとした瞬間、何故か声が出なかった。

 そんなことは露知らず、渡は淡々と。


「その者たちの名は冬島海斗と冬島このは。君のご両親だよ」


 俺が言って欲しくない亊を口にした。


「……どこからの情報だ」


 もう何を否定しても無駄だと悟った俺は、控えめに「正解だ」と告げる。

 そして、渡はそれを受けて、ニコニコと嘘くさい笑みを垂らした。


「ノーコメントで」

「なるほど、流星か」

「なんでわかったの!?」

「その情報を知ってんのは極わずかで、指折りの人数だからな。一瞬で示しが付く」


 俺がそういうと、渡は「へえ」と感嘆の声を漏らして、笑みを顔から消した。


「ちなみにご両親は?」

「……お前には関係ないだろ」


 ちょっと辛辣に告げると、渡は何かを察したのか、それ以上は聞かなかった。

 ただ、渡の言いたいことはそれだけじゃなかったらしく、「じゃあ」と話題を切り替えて持ち掛けてきた。

 何だろうと警戒すると、渡は瞳を冷たいと思うほど鋭くした。


「櫻井さんはどうなんだい」

「え?」


 思わぬ質問に素っ頓狂な声を上げる。

 しかし、渡はどこ吹く風で、俺の瞳を淡々と見据えていた。


「陽和はただの友人で……」

「本当にそうかい?」


 先ほどの優しい人格とは思えないほどの鋭い声に、思わず言葉が出なくなった。

 そんな俺を見て、渡は「はあ」と溜息をついた。


「やっぱり君は櫻井さんとは不釣り合いだ」

「……」


 一番自覚していることを突かれて、さらに言葉が出なくなる。

 自覚はしていた。

 陽和は俺なんかよりも、渡みたいな社交性のある人の隣の方がいいって思っていた。

 自覚していたのに、知らないふりをしていて、目を逸らしていた。

 部屋がしばらく沈黙に包まれた後、渡は「ここまでにしようか」と言って、俺を帰らせた。


                 21

「お帰りなさい。涼くん」


 俺が家へ帰ると、陽和が笑顔で出迎えてきた。

 いつもなら「ただいま」と言っているが、今はそんな気力がわかなかった。


『君は櫻井さんとは不釣り合いだ』


 ふと、渡の言葉が頭の中に響く。

 俺が陽和にしてやれることは……。


「……陽和」

「はい?」


 陽和の顔を見て、胸が苦しくなる。

 これを言うと、陽和をきずつけてしまかもしれないけど、必死にその言葉を紡いだ。


「……うちにはもう、来ないでくれ」

「え?」


 俺は陽和の言葉を聞かずに部屋へと逃げ込んだ。

 見ずとも陽和がつらそうな顔をするのが分かっていたから、その顔を見たくなかったから。

 部屋の扉をバタンと強めに閉めて俺は、扉に寄りかかりながらへたれこむ。


「これでいいんだ……」


 誰にも言うつもりのない呟きは儚く部屋の空気へと消えていく。

 俺はそのまま、陽和が出ていったであろう扉の音をただ聞くことしかできなかった。

 

 その日から、陽和は二度と俺の家へと姿を現すことはなかった。

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