18/37
林檎:紅いほっぺのプロポーズ
秋の嵐が過ぎ去って
玄関を開けると足元に林檎ふたつ
誰かの庭から落ちて流れて
坂道の下の家に辿り着いた
ひとつは歪、もうひとつは虫食い
あの頃のあたしたちみたい
あたしたちは世間には評価されなくて
孤独にくすぶっていて
そんな規格外のふたりが
奇跡的に出逢い恋に落ちた
「オレたちだから、分かり合えるんじゃないか?」
それがあなたのプロポーズ
上手く生きられるかわからない
不安の中であたしは頷いた
「うん、トライしてみたい……」
それが私の答えだった
あれから幾数年
ふたりの間には何にも代え難い
宝物を授かり
あたしたちは世間並みの幸せを
享受している
林檎のほっぺをした吾子は
あたしたちに笑いかける
「ママを僕のお嫁さんにする!」
ほら、あなた、プロポーズでも敵いやしない……




