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収穫祭deパニック・5

「ヴィク、聞いた? セレグレスってばしばらくしろがねに出禁くらったそうよ」


 仮装ダンスパーティーから一夜明けた昼下がり。通常業務に戻った竜騎士の訓練場で、ゴルドレインが顔を合わせるなり笑いながらそう言った。


「当然だ。あいつは魔道具で遊びすぎだ」

「フィオナちゃんの尻尾に結んだリボンが、まさか彼女の心と連動して本物のように動くなんてね。バッチリ感触もフィオナちゃんに伝わってたようだから、道具としてはかなりイイ出来なんでしょうけど」


 結局あの夜は、偶然通りかかったゴルドレイン(魔女コス)にフィオナを託すことで、ヴィクトールは九死に一生を得た。なまめかしく動く尻尾の感触と、頬を上気させて震えるフィオナに、本気で死ぬかと思った。いろんな意味で。


 ゴルドレインの腕に抱かれたフィオナを見ていると何だか腹の奥がモヤモヤしたが、それはセレグレスのいたずらに対する怒りだと言い聞かせた。


「フィオナちゃんは?」

「今朝は大丈夫そうだ。ただ……何というか、顔を合わせるとお互い気まずい空気が流れるというか」

「そりゃそうよ! いくら婚約者だからって、あんな人目のあるところでなんて性感帯を触られるなんて」

「ごっふぉぅっ!!??」


 飲んでいたお茶を噴き出す勢いで、ヴィクトールが盛大に噎せた。ちょっと飛沫が飛んだのか、ゴルドレインが眉を顰めて手をヒラヒラと振っている。


「ヤダ、汚い」

「なっ、なんっ……せ、せせせ……かっ、んん!?」

「あら、猫の尻尾ってそうらしいわよ」


 更にとどめを刺されて、ヴィクトールはもう息もまともに吸い込めず、さっきからずっとせたり咳き込んだりと騒がしい。そのせいなのか、はたまた何かいかがわしい想像でもしているのか。顔は熟れすぎたベリーのように赤く熟しきっている。熟れすぎて頭までもげそうだ。


「なに赤くなってるのよ。もしかして昨夜のフィオナちゃんの顔を思い出しちゃった?」

「おおお思い出してなどいないっ! 私の頭の中は普通のフィオナでいっぱいだ! あと、お前は記憶から抹消しろ!!」

「……しれっと惚気るのやめて」


 呆れるゴルドレインをよそに、ヴィクトールは雑念(煩悩あるいはいかがわしい妄想)を振り払うように、剣の素振りをはじめるのだった。





おわり。

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