4-12 第4章最終話 この国の太陽に
視界が戻り、目を開ける。
そこには、新宿の風景が映る。
そして、八雲含め特進クラスのメンバーも待機していた。
「ただいま。もどりました」
「あぁ、おかえり、剣也君。信じていたよ。いや、虫が良すぎるな。ありがとう無事帰ってきてくれて」
八雲は、剣也に近づき頭をなでる。
そして、佐藤に近づく。
バシッ!
平手打ちされた。き、きびしい。さすがに我が子には厳しいな。
しかし、これは仕方ない。命の危険に関しては厳しくしなくては。
「申し訳ありません」
「お前は何をしたかわかっているのか? 友人たちの命まで巻き込んで」
「……はい」
直後八雲は、一世を抱きしめる。
「!?」
「しかし、私のケアも足りなかったのは事実だ。すまなかった。お前がそれほど悩んでいたとは思わなかった」
八雲は、一世をより一層強く抱きしめる。
「いや、父さんは、何も悪くありません。悪いのは私で」
「もういいんだ、剣也君、静香君並びに迷惑をかけたみんなに謝罪し、許しをもらえ。それで今回のことは許そう」
「はい…」
一世も自然と八雲の背中に手を回す。少し控えめなのは、罪悪感からなのか、
しばらく親子は抱きしめあった。
うちの家庭とはまた違うのだろうけど、これもまた親子の形なのだろう。
「剣也君、ダンジョンのこと聞いてもいいかな」
「ええ、わかったことがいくつかあります。学園に戻ってから話しましょう」
そうして、一同は、学園に戻った。
そして、教室に着くや否や、剣也は今回起きたこと。
ダンジョンのこと、そして開花のことをすべて話した。
「開花ゆうんか! まあタネが発芽するいうんやから、そりゃ次は花咲くわな。全然考えつかんかったけど」
「あぁそして、その開花は、Aランクギフトを3つ以上持つものしかできないらしい」
「ほな、剣也だけやん。もうしたんか?」
「いや、1億ポイント必要らしい」
「はぁ? 一億? Bランククエストやったら、ほなえーっと」
「1万回よ」
静香が割って入る。
「一万回って、そりゃ無理な話やで」
彪雅は手を万歳して、お手上げポーズをとる。
「今の話を聞くに、ダンジョン攻略しかないだろうな。剣也君のギフト3つとも開花させるためには合計3億ポイント Bランクダンジョンにすれば合計30個か」
八雲が考え込む。またなにかぶつぶついっているが、癖なので気にしない。
「ほな、Aランクダンジョンは?」
「いや、この分だと、Aランクダンジョンは、Aランク魔獣たちがオークのように複数存在するだろう、そして最後にはまだ見ぬSランク魔獣がいると思う。さすがに無謀すぎる」
「よし!」
八雲が何かを決断したように立ち上がる。
「剣也君!」
「はい?」
いきなり名前を呼ばれ、少しびっくりする剣也
「修行編 いってみようか」
「へ?」
「三か月。三か月までに日本のダンジョンを巡りすべて開花させてきたまえ」
「三か月ですか? その期間に意味はあるんですか?」
「それは、あとでのお楽しみだ。三か月後ちょっとしたイベントがあるんでね」
八雲がお楽しみというところでウィンクしてきた。
おっさんのウィンクは気持ち悪いからやめてほしい。
「な、なら私も!」
「いや、静香君は、ここでここにいるメンバーとダンジョン攻略だ。今の話を聞く限り貢献度が一位以外はダンジョン攻略はあまりおいしくない。だからここにいるメンバーで持ち回りで攻略する」
静香は、剣也についていきたかったが、彼とダンジョンを30個攻略しても集められるポイントは3000万 ダンジョン3回分なので、効率が悪い。
「わ、わかりました」
静香はがっかりした声で答えるが、八雲の言う通りなので諦める。
「そして、姫野さん。剣也をお願いできますか」
「任せな。みっちり鍛えてやるよ」
「へ? ダンジョンと並行ですか」
剣也は、てっきりダンジョンの後剣術修行すると思ってた。
「君なら可能だろ? 頑張りたまえ。そうだな平日ダンジョン、祝日修行といったところか」
八雲が嬉しそうに答える。この人ブラック企業の社長みたいなこというな。
俺の休みはないのか。72時間働けますかどころじゃないぞ。三か月間働けますか?
そうして、話し合いは終わり。
翌日から俺は、3か月の武者修行の旅にでることとなる。
「え!? 三か月も外にいくの?」
「ご、ごめん夏美」
「いや、剣也が悪いわけじゃないけど。ちょっと寂しい」
さみしいよな。俺もさみしい。
「でも、頑張るんだよね! 私応援してるから! 頑張ってきて! 待ってるから!」
両手でガッツポーズをして、剣也を励ます。
剣也は、夏美を抱きしめキスをする。別れを惜しむように長く。
帰ってきたら、夏美を抱こう。そうしよう。
翌日
「じゃあいってらっしゃい! 頑張ってね!」
「あぁ、行ってくる」
大きな荷物をもって剣也は、寮をでる。パジャマ姿の夏美が見送る。
そしてロビーにつくと、特進クラスのみんなも待っていてくれた。
「ほな、剣也がんばってな」
「あぁ、剣也待っているぞ」
「がんばれ! 剣也」
「私も強くなるぞ、御剣」
彪雅、武、美鈴、佐藤。みなが応援して送り出してくれる。
「静香?」
静香だけが、俺の服の袖を持ちもじもじしている。
どうしたんだろう。
「剣也、がんばってね」
「あぁ、強くなって帰ってくるよ」
静香が俺の顔を見つめる。
その顔は、真っ赤に染まりながらも何かを迷っているように見えた。
「どうしたんだ? 静香」
「…ちょっと、だけ目つぶって」
消え入りそうな声で静香がつぶやく。剣也には聞こえない。
「なんて?」
「目をつぶりなさいといってるのよ!!」
いきなり怒られた剣也は反射的に目をつぶる。
直後感じるのは、唇へのやわらかい刺激
え? いまのって。
驚き目を開けると、走り去る静香の背中だけが見えた。
「ちょっと、しずしず、積極的すぎ…」
周りが全員唖然としている中、姫野の声が聞こえる。
「ほら! なにやってんだい! 行くよ、剣也」
しばらく放心していた剣也は、外で待っていた姫野の声で我を取り戻す。
今のってそういうこと?
混乱する頭を整理するが、よくわからない。静香は俺のことが好きなのか?
じゃないとあんなことしないよな。
「なんだい、剣也。顔真っ赤にして。いいことでもあったのかい」
姫野が笑って剣也に聞く。
「わかりません。この感情がなんなのか。今の俺にはよくわかりません」
帰ったら答えを出そう。俺は夏美が好きだ。じゃあ静香はどうなのか。
そうして、みんなに送り出された剣也は車に乗り込む。
強くなるために。地獄のような日々が待っていようとも。
…
そして月日は流れ
20XX年 夏 東京
むせかえる湿気と、照り付ける日差しが地面を焼く。
コンクリートジャングルとはよく言ったもので、日本の夏は、本物のジャングルを凌駕する暑さと湿気を持つ。そんなジャングルを一人の少年が歩く。
足取りは軽い。背筋は伸び、しっかりと地面を踏みしめる。
ここは、神の子学園、日本中の特別に力を持つ少年少女が集まる学園
その門へ一人の少年がたち口を開く。
「帰ってきたな。もう何十年ぶりのような気分だ」
「実際、それぐらいの時間は過ごしたからね。よくやったよあんたは。さぁ胸はってはいんな! あんたは正真正銘世界最強さぁ! 英雄様!」
背中を叩かれ、少年は一歩を踏み出した。
照り付ける日差しをものともせずに、この国を照らす光にならんとするために。
第4章 これにて完結です。
頑張ってはやくはやく、読んでくださっている方に届けたいと思っております。
では最後に章の最後ですので、楽しんでいただけた方はブックマークと評価をお願いします。
第5章明日から開幕です!