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4-5 カラオケで親睦会

今日2話更新します

 カラオケに入る6人を静寂が包む。

気心知れた仲間以外でいったときのまず誰が歌うという独特の空気が部屋に充満する。


 耐えられなくなった彪雅がマイクを持つ。

「ほな、わしの十八番 六甲おろしを」


 直後流れる予約音と、何度も聞いた流行りの歌。

眼帯をした少女がこの世の不条理を嘆く歌。

「じゃあたしからいくね!」

そして美鈴は歌いだした。

「はぁ? しずかーしずかーしずかーだー。あなたが思うより不健康です!!」


「私を罵倒しているのかしら?」

静香が歌詞に切れる。いや、そういう歌だから! 本当は逆の歌詞だから!


「はは! こりゃ会長のための歌やんか。会長も覚えな! こりゃおもろい」

一曲目にして、場の雰囲気が悪くなる。彪雅だけは爆笑してるが。


「ふぅー歌った、歌った! 久しぶりだからきもちーー。はい! じゃあ次しずしず、あっ違った。静香ね」

言い直したのは、静香ににらまれたからだろう。

敗者は勝者に従うのみ。


「け、剣也! これどうすればいいのかしら」

デンモクを渡されあたふたとする静香。やはり初めてだったか。


「あぁ、ここをこうして、曲名をいれるんだ。そもそも静香は歌なんか歌えるのか?」


「な、失礼な! こう見えても幼少期からボイストレーニングは行っているわ。見くびらないで」


 お嬢様はボイストレーニングまでするのか。武芸に、歌まで。多彩だな。

「じゃあ、得意な曲いれてみろよ」


「ええ、いいでしょう」

 直後流れる予約音と、歌名


「ア、アメージンググレイス」

剣也は、選曲に啞然としながらも、どこからしいなと思う。

カラオケで歌うやつはじめてみたが。


 そしてマイクを両手で握り立ち上がる静香。

流れるはカラオケに似合わない上品な伴奏、そして静香が歌いだす。


 直後5名に稲妻走る。

う、うまい。圧倒的うまさ。

まるでCD音源を聞いているかのような再現度。

こいつなんやかんやなんでもできるな。


「すごい! すごいで会長 わしカラオケでこない感動したんはじめてや」

横で彪雅が涙を流しながら拍手している。

感受性豊かだなと思いながらも剣也も拍手する。本当にうまかった。


「しずしず、あ、違った。静香まじ上手!」


「ありがとう。それにもういいわ。あだ名で。毎回言い直されたらたまらないわ。」


「まじ? しずしず感謝!」

ほめられて気をよくした静香はあだ名で呼ぶことを了解した。


「さ、佐藤も一曲どうだい?」

剣也は遅る遅るマイクを佐藤に渡す。


 佐藤は、マイクを受け取り選曲をした。

お! 歌ってくれるんだな。よかった。何を歌うんだろう。


「君~が~代は~ 千代に八千代に~」

国家かよ! ネタ? ネタなの? そんな仏頂面でツッコミ待ちなの?


 そして佐藤は歌いきってしまった。

その目には、この国の代表として世界に立った男たちの雰囲気を醸し出す。

ここカラオケなんですが。


「佐藤、お前国歌って!!」

彪雅は、ずっと笑っている。感受性豊かだな。泣いたり笑ったり。


「これほど、国民に慣れ親しんだ曲はない。僕はこの国の人間であることを誇りに思うよ。政治家の息子としてね。」


政治家? 佐藤の親は政治家なのか?

あれ? 待てよ。政治家、佐藤、なんか知ってる気が。


「あ! 佐藤! お前もしかして!」


「やっと気づいたか愚か者。そうだ。私は佐藤一世、親の名前は佐藤八雲。この国の防衛大臣だよ。」


まじかー八雲さん全然言わないんだもん。佐藤なんてありきたりすぎて全然意識してなかった。ごめん全国の佐藤さん。ディスってるわけじゃない。


「ごめん。全然気づかなかったよ」


「あぁ、そうだろうな。父は俺のことなど忘れてお前にご執心だからな」


「そ、そんなことないと思うよ?」

実際この半年八雲さんはつきっきりで面倒を見てくれた。

もしかして俺を敵視する理由ってそこ?


「私は父を目標にし、父のように立派な政治家になることを目指して今まで頑張ってきた。

勉強も、スポーツもすべて一番をとってきた。認めてもらうために。なのに、最近はお前の話ばかり、あまつさえ総理になれる器だ。面倒を見てあげたいなどど妄言すら吐き出した。

その言葉をもらうのは私だったはずなのにな。」


佐藤が、俺を敵視するのは、八雲さんつながりなのか。


「だから私が、お前を倒して父の目を覚まさせる。そう思っていたんだがな」

そういって佐藤は、力なく肩を落とし視線も落とす。

結果は惨敗、相手にもならなかった。その事実は佐藤の心に大きな爪痕を残した。


「なぁ、御剣。お前はなぜあれほどの力を手に入れた。クエストを攻略するだけでは到達できない。現には私はBランクが関の山だった」


「あ、ワイも聞きたい」

彪雅も乗る。全員が気になっていたことなのか剣也を見る。


「あぁ、俺も確信があるわけじゃないが…」

そういって剣也は、ケルベロスのことを話す。


「試練か」

佐藤は考え込むようにつぶやいた。


「あぁ、心の鉢によるギフトの発芽、これには何か試練を乗り越えた先に発生するかと思う。といっても正直俺以外発芽したやつを見たことはないのであくまで憶測だが」


「…そうだな。確かに私は、死に物狂いでクエストを攻略した。しかし実際死ぬ思いをするような相手はいなかった、どれも取るに足らない魔獣たちだ。やはり挑戦するしか…」

佐藤は、何かを決心した顔をしている。


 6人は、それからもお互いの環境や、どういった経緯でギフトを得たのか。

家族はどうのなどのとりとめのない話をして親睦を深めた。


「ほな! 宴もたけなわということで、そろそろ帰ろか。今日はええ親睦会になったわ。これからもよろしくな!」


「「よろしく!」」

そういって6名は、カラオケ店を後にした。


そして帰り道

「っていっても、全員寮か? ほな帰る道は一緒やな、女性陣も一緒の寮なんか?」


「ええ、一緒よ。といってもほぼマンションだから寮というイメージでもないのだけれど」

静香が答える。彼女も寮に入ることになっているそうだ。お嬢様が一人で生活できるのかは疑問だが。


「ええー、しずしず一人で生活できんの? 洗濯機の回し方とか知ってる?」


「な! 失礼な。そんなもの説明書を読めば理解できるはずです!」


「一回もやったことないんじゃん。わからなかったら教えてあげるからLINEして」


「ええ、することはないでしょうけど。感謝だけはしておくわ」

そんな他愛もない会話をしながら俺たちは、帰路へ着く。


「にしても、学生寮っていうか、普通のマンションだよな。しかも結構いいほうの」


「わいの実家よりも広いわ。家族全員で引っ越してもよかったぐらいやな」

学生寮は、寮というにはあまりにも普通のマンション。

特段豪勢というわけではないが、東京でこの立地でこの広さは家賃20万以上はしそうだ。


「金剛、星。少し話があるんだが、いいか」

佐藤がマンションのロビーに入るや否や二人に呼びかける。


「ん? ええけどなんや?」

「あぁ、構わないぞ」


「あ! じゃあしずしず私たちも少しだけ女同士で話そう!!」


「別に構わないのだけれど、何を話すというの?」


「それは、ここでは、ひ、み、つ♥」

疑問符を浮かべながら静香は美鈴に引っ張られながらその場を後にする。


「ほな、剣也お疲れ! また明日な」


「あぁ、お疲れ」

佐藤たちも行ってしまった。

俺は一人だけ取り残された。寂しくなんかないぞ。

なぜなら俺の部屋には。


「ただいまー」


「お帰り! 剣也」


愛する女性が待ってるからな!


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