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2-5 防衛大臣とお嬢様

次の日の朝

珍しく不快な機械音ではなく、太陽光で目を覚ました剣也は、すこぶる体調が良かった。

俺の息子の方も元気みたいだ。


2日も運動をさせてあげていなかったからな。

今朝は元気にテントの中に二つ目のテントを立てていた。高校生の性欲はすごいな。

今日あたり慰めてやろう。ごめんよ、2日もかまってあげられなくて。


やったーという感情を表すようにテントが揺れる。


なんてバカな独り言を心の中でつぶやくと

ふと手の平に柔らかい感触があることに気づく。


そういえば夏美が横に寝ていたな。

あーこれは、あれか、お約束か。

そう言いながら俺は手のひらの感触に抗えなかった。

いや、抗わなかった。何故かってそれがお約束ってもんだろ?


「ん?剣也?おはよ。」


「あぁ、おはよう夏美」


重い瞼を擦りながら夏美は自分の胸がなにかに掴まれていることに気づく。


「剣也?なにこれ?」


「いや、お約束を。」

そう言って俺はもう一握りにぎにぎした。

柔らかい。夏美の胸は結構大きい。

もう一回にぎにぎ

うん、柔らかい。成長したなー

もう一回にぎn


「いつまで触ってんじゃーー」


そうして剣也はお約束通り二度寝を決めた。

次に目が覚めた時は、顎がとても痛かった。いい右ストレートをもらったらしい。

記憶が少し飛んだ。


思考加速で避ければよかった。いや、アレは甘んじて受けるべき制裁だった。

一応全力で謝ったら意外とすんなり許してくれた。人徳のなせる技だな。


「もう、まだ早いよ。そう言うのは。」

夏美は腕を前で組んで自分の胸を守るように

怒っているのかよくわからない感じで怒る。


まだってことはいつかあるんですか?

と思ったが聞いたらまた殴られそうなので何も聞かないことにした。


「今日は八雲防衛大臣に会いに行こうと思う。」

配給の朝食をたべながら夏美に話した。


ギフトのこと、ワールドクエスト、そしてあの塔のこと。正直聞きたいことしかない。


「わかった。

私もついていっていい?」


「いや、ここから防衛省はさっき調べたけどそれほど距離はないし、

まだ交通機関も動いてないから走って行く。

昼までには帰れると思うから待っていてくれるか?」


「そう、うん、わかった。」

少し煮え切らないが、すぐ戻ってくると言うなら待ってよう。


そうして俺は防衛省へ小走りで向かった。

途中沢山の壊れた家を見た。

救助活動も続いている。しかし都市部に向かうにつれて建築技術の向上か

建物としての機能を取り戻す。


2.3時間後、防衛省の前まできた。

結構汗だくになってしまった。


そして防衛省の門を叩く。実際には、自動ドアなので、叩くところはないが。

そして受付に八雲防衛大臣に会いたい。

テレビの会見で、始まりのタネについて知っていると言った。


そうすると、意外とすんなり通してもらった。

仮にも一国の大臣にそんな簡単に会えるのかと思ったが、そんなものなのか。


そして、通された部屋ではテレビでみたあの八雲防衛大臣が座っていた。

その横には一人の少女も。


「よく来てくれた。

君が私の会見を見て来てくれた少年だね。名前を教えてくれるかな?」


「御剣剣也です。」


「では、剣也くん。

いくつか質問させてもらってもいいかな?

まず君の番号は何番だい?」


番号?あのシステム音がいってたNoのことかな?


「Noのことですか?それでしたらNo00001が割り振られましたと言われましたが。」


「ふむ、ナンバーのことも知ってる。

本物のようだね。しかもファーストか!

特に番号に意味はないとは思うがまさか君が最初のナンバーズとはね。」


そこで、横の少女が口をはさむ。

「まだそれだけではわかりません。

番号を聞かれれば数字を適当にいうぐらい誰にでもいえます。」


そう言ってツンとした態度で答えたのは、

真っ黒の髪に真っ黒の制服、そして真っ白な肌の女の子 

年は俺とほとんど変わらないだろう。

すごいクールビューティーって感じだ。

目力がすごいってか目つき怖 

すっごい睨んでくる。俺なんかした?


「では一つ質問です。

あなたは発芽しましたか?」


正直に答えるべきだろうか。

こういう時能ある鷹は爪を隠すとして、隠すべきなのかもしれない。


「隠す必要はありません。

どうせ大したものでもないのですから。」


見透かされたように返された。


これからいろいろ教えてもらおうとしてきたんだ。

俺の情報は、伝えてもいいだろう。

「あります。始まりのタネが発芽しました。」


「ほぅ! ほんとかね!」

防衛大臣は立ち上がり興奮した声で無邪気にはしゃぐ。


「ふん、どうせ大したものでもないのでしょう。

あなたみたいな一般人が発芽するギフトなど、所詮Dランクが関の山です。」


一般人とは、失礼な

俺の親父は年収500万ちょっと

俺は中流階級の申し子だぞ。


「なんだよ、お前は。

偉そうにってかお前は誰だよ。」


「これは失礼、自己紹介が、まだでしたね。

私は、二菱静香(ニビシシズカ)です。」


二菱、そんな名前聞いたことない。

テレビ以外では。

二菱商社、二菱重工、二菱電気あらゆる業界に存在する日本を牛耳るその財閥


「あまり家の名前を言うのは好きではないのですが、こういう時だけは便利です。

私が一般人ではないことは理解できましたか?」


道理で偉そうなわけだ、実際に偉いのだ。

これほどの金持ちにあったことはないからわからないが、

多分札束で人を殺す事もできるんだろう。

札束の風呂に入って両脇に異性をはべらせることだって、勝ちまくりやりまくりだろう。

逆らうのはやめておこう


「これは失礼しました、

まさかそんな方とは思いませんでした。

失礼な態度をとって申し訳ございません。」

とりあえず平謝りしておこう。


「わかればいいのです。で?あなたのギフトのランクは?能力は?」


「ランクはAです。」


「え?Aですって!?

あり得ないわ、そんなのこの短時間でAランクギフトを発芽するなんて。」


同時に八雲もとても嬉しそうに席を立ち俺のそばまできて、手を握る。

「この国にも、希望がいたのか。

ありがとう、本当に。私の呼びかけに答えてくれて。

君の能力について聞いてもいいかい?」


剣也は素直に答える。なんかこの人の前だと嘘を付けない気持ちになる。

「はい、僕の能力は思考加速

体感時間を伸ばして行動できます。」


「ふむ、身体能力が向上するタイプか。

戦闘向きだな!」


「信じません! 私は! Aランクなんて!

その力、証明してみせなさい!」


剣也は考える。どうすれば証明できるか。そして

「では、その腰に刺している剣で僕に切り掛かってください。止めてみせます。」


挑発したと思われたのか、お嬢様は、顔が真っ赤だ。

真っ黒だったり真っ白だったり真っ赤だったり面白いなこの人。


「八雲さん。救急車の手配を

もしかしたら腕の一本ぐらいは切り落としてしまうかもしれません。」

静香はゆっくり剣を抜いた。その目には侮られた怒りを燃え滾らせている。


「おいおい、ここを血の海にしないでくれよ。

剣也くん、信頼しても大丈夫かな?」


八雲は楽しそうにこちらを見る。


「問題ありません。あとそうですね。

そこのボールペンお借りしても?

ある程度硬そうだ。」


そう言って八雲の机の上の金属製のボールペンを指さす。


「あぁいいともいいとも、好きに使ってくれたまえ。」

八雲は快諾する。


そして俺はペンを拾い構える。


「準備はいいかしら。

せめて下手に避けないように。

流石に人死には揉み消すのが大変です。」


怖、このお嬢様

やっぱ一般人じゃないわ。

「どうぞ。」

剣也は答えた。正直全く怖くない。

怖いといったのは、性格と目だけだ。

切れやすい女性は怖い。しかし恐怖は微塵も感じない。


その返答を聞いた静香は、切りかかる。

居合切り。素人目から見ても綺麗な型だった。

とても早いのだろう、努力を重ねた先に到達したような達人技

きっとこの人は、俺なんかよりもずっと刀を振ってきたんだな。


でも

加速する思考で、剣也は静香を見る。

流石に止まって見える。

居合切りの速度は0.2秒ほど

つまりは俺の目には20秒かけてゆっくりと斬りかかってくるようにしか見えない。


そして俺は刀をボールペンで受け止める。

絶妙な力加減でゆっくりと速度を合わせてタッチした。

受け止めて、勢いを殺す。優しく赤子を抱くように。


そして静香の一閃は、ただのボールペンに止められた。

しかもボールペンにも傷はない。


そして引き伸ばされた世界に色が戻る。

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